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2023.4.20 読書記録『アメリカ黒人史―奴隷制からBLMまで』

本の情報

(タイトル・著者・出版社)
アメリカ黒人史―奴隷制からBLMまで・ジェームズ・M・バーダマン著、森本豊富訳・ちくま新書

読書期間

2023/4/14~4/20

概要

奴隷制が始まって以来、黒人は白人による差別や迫害に常に遭ってきた。奴隷船やプランテーションでの非人道的な扱いを生き延び、解放され自由民になっても、「約束の地」である北部に逃れても、彼らが人種差別から解放されることはなかった。400年にわたり黒人の生活と命を脅かしつづけてきた差別と、地下鉄道、公民権運動、そしてブラック・ライブズ・マター(BLM)に至る「たたかい」の歴史を、アメリカ南部出身の著者が解説する。

本書より

感想

植民地時代の奴隷制度から現代までにかけ、黒人がどのような扱いを受けてきたかを、時代を遡りながら解説している。
過酷な労働環境や非人道的な扱いなど、現代では考えられないような境遇に常に脅かされてきたことが淡々とつづられており、人間の負の歴史をまざまざと見せつけられた。

また、このアメリカ黒人差別の歴史は過去のことではなく、現在もまだ続いている未解決の問題であることも留意しなくてはならない。
日本で生まれて日本でしか生きていない自身には分からない、アメリカならではの気質や綿々と受け継がれるマインドが存在するであろうことは想像するが、
これほど負の歴史として分析されているにも関わらず、まだ根強い差別が残り続けていることに人間の影を感じざるを得ない。

しかし、キング牧師やマルコムXなどの黒人指導者を主として、黒人側の打たれても打たれても立ち上がり続ける戦いの歴史が描かれる内容でもあった。

憎悪が新たな憎悪を生み、その連鎖が留まることなく未来までつながっていってしまうのは、負の歴史をさらに助長することになる。
そのような連鎖とならないように、人類全体で、人種や肌に限らず、様々な差別に対して真剣に向き合わなければならない。

あと、差別撤廃の流れで、黒人優遇という逆差別となる展開もしばしば見受けられたのが少し引っかかっている。
過去よりかは改善しているとは思うが、日本における女性の逆差別も然り、本当の平等に向けてまだまだ根本的な解決にはなっていないと感じる。

本書ではアメリカ黒人にフォーカスして歴史を紐解いていたが、黒人に限らず人間の差別の歴史は残念ながら山ほどある。
それら全て、決してなかったことにはせず、現代に生きる私たちはきちんと目を向けて刻みつけなければならないと思う。
本書を読んでいる時だけではなく、今後の様々な場面においても、人間の負の側面を目をそらさず向き合っていきたいと感じた。

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