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【極超短編小説】非地球人(自称)

 ビルの屋上。見上げると青空。どこまでも高い。
 足元を見下ろすとこの星の人間どもがうごめいている。
 高さは十分だ。
 空の彼方の母星に帰還するには、地上に向かって飛び降りなければならない。なんとも皮肉なシステムだ。
 さて、行くとするか。潮時だ。
 ん?煙、煙草の煙か?
 
 
 
 振り向くと、柵からこちら側に身を乗り出したひとりの女が煙草を燻らせている。手を伸ばせば届きそうなくらい近いのに気づかなかった。
 「あなた、そういう人?」
 彼女は横目で見ながら話しかけてきた。
 「‥‥ああ。この星の者ではない」
 「何してるの?」
 「故郷の星に帰るところだ」
 「どうやって帰るの?」
 「ここから飛び降りるのだ」
 「‥‥」
 彼女は首をひねる。
 「そういうシステムなのだよ」
 「ふぅ~ん。なぜ帰るの?」
 「この星の人間には愛想が尽きた。うんざりだ」
 「なぜ?」
 「理由は数え上げたらキリがない」
 「たとえば?」
 「‥‥そ、その煙草だ。体に悪いと分かっているのに、なぜ止めない?愚かだと思わないか?人間は一事が万事そうではないか。愚かなのだよ」
 「あなた、煙草は?」
 「もちろん、吸ったことはない」
 「美味しいものはね、大概、体に悪いのよ」
 ラッキーストライクなる煙草を1箱、柵の向こう側へ置いて彼女は去って行った。

 

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