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【極超短編小説】好きなカノジョのポイをポイするオレは変かな?

 オレはベンチに座ったまま屈みこみ、地面に落ちているタバコの吸殻を拾って、ゴミ袋にポイ。ゴミ袋はさっきコンビニで買い物をしたとき、菓子パンやジュースなんかを入れてもらったレジ袋。



 体を起こしてふと見渡すと、『東』のこの公園では男の人がギターを弾きながら歌っていたり、小さな子どもが公園中を駆け回っていたり、広場の向こう側のベンチで男女が話し込んでいたり、みんな清々しいこの季節を楽しんでいる。まぁ、オレも今、楽しいんだが。


 「ちょっとー、聞いてるの!」
 彼女の語気は相変わらず強い。
 「うん。ちゃんと聞いてるよー」
 オレはそう言いながらサンドイッチの空き袋を地面から拾い上げて、ゴミ袋にポイ。次に菓子パンの空き袋をポイ。
 「何してるのよー!。聞いてるの?わたしの話しー」
 「ちゃんと聞いてるって」
 カノジョの言葉に応えながらベンチの後ろに回り込んで、野菜ジュースの紙パックをポイとゴミ袋に入れながら、
 「ストローはどこ?」
 とオレはカノジョに振り向いて尋ねた。
 「知らなーい」
 とカノジョは言いながら、シュークリームをモグモグ頬張る。
 あった、あった。ベンチの下にストロー見っけ。プラスチックだから分別しなきゃな。


 「ねぇー、アタシのことどう思ってるのー?」
 と言って、カノジョはシュークリームを平らげると包装紙をポイと捨てる。
 オレは地面に落ちた包装紙を拾い上げてゴミ袋の中にポイと投げ込み、
 「今さら何だよ。分かってるだろ?」
 「えー、分かんなーい」
 彼女はそう言うと、コーラをグビグビと一気に飲み干して、ペットボトルをポイ。
 オレは地面を転がるペットボトルをあたふたしながら拾い上げて、ゴミ袋にポイ。
 「アタシのどこが好きなの?」
 コンビニで買ったものを食べ尽くし、カノジョはパーラメントに火をつける。
 「んー、まぁ、ひとつは健啖家だから」
 「ケン、タン、タン?」
 「ケ、ン、タ、ン、カ」
 「何それー」
 カノジョはフーとタバコの煙を吐き出し、それから続けてもう一服吸い込むと、タバコを地面にポイと落とす。
 「まぁ、なんだ、とにかく好きなんだ。全部ひっくるめて」
 そう言いながら、オレは吸殻を拾い上げてゴミ袋にポイ。
 「アナタ変わってるー」
 「そうかい?」
 


 

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