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"彼はどうするのか、私はどうなるのか"【マチアプ⑥】

フジオカさんが〇〇県へ引っ越す時期が近づいてくる。
彼と会うたびに、核心をつく話があるのではないかと緊張し、帰り道は「何の話もなかったな・・・なんでだろう・・・」と、最悪の事態を想定して自衛した方がいいのではないかと思い始めていた。
前回の話はこちら。

彼が引っ越す先と、私の住んでいる県は中距離だ。
会おうと思えば会える距離。
そして、彼は以前他の方と9年付き合ったことのある猛者である。(中距離期間含む)
彼はどうするつもりなのだろう。

引越しを手伝いながら様子を伺う私。

彼の家に置かせてもらっていた服や日用品を回収し、彼の様子を伺う。
何の違和感もない。至っていつも通りだ。
「これは・・・もしやこのまま中距離スタートになるのか・・・」
この年齢で、二人でなんの話し合いもなく遠(中)距離が始まる事が意味するのは、 "別れ" である(独断と偏見)。
静かなるフェードアウトを狙っている、もしくは結婚しようと思える決定打に欠けている。
将来を考えているのであれば、何かしらの話があると思うんだけどなと悶々としながら部屋の片付けをしていた。

何もなくなった部屋を見て涙を堪えた

引越し業者に荷物を預け、ガランとした部屋の中には 私とフジオカさんの思い出だけが残っていた。外が薄暗くなり始めたのも相まって、楽しかったあの日々が、なんだかもう戻ってこないような気がして涙がこぼれ落ちそうになる。彼に「どうしたの?」と言われないように、隠すのに必死だった。
フジオカさんは早めに部屋を明け渡し、数日ホテル生活をしてから〇〇県へ引っ越していった。

大切な話を切り出すことが出来なかった自分に絶望した。なんて受動的なんだろう。何も変わっていない。寧ろ傷つくのが余計怖くなっている。彼を大事に想っていたからこそ、失うかもしれない決定打を自ら打つことが出来なかった。
うっすらと、私はまたあのアプリ地獄に戻る可能性があるかもしれないと覚悟する。この覚悟だけはしたくなかった。

新幹線に乗って会いに行こう

フジオカさんは、引っ越した後もいつも通りマメに連絡をくれて電話もくれた。「仕事終わったよ」といつも通りの優しい声が耳に響く。
今度の休みに会おうよと提案してくれる。
フェードアウトを狙っているなんて思ってごめん。彼は距離など感じさせない様に私の事を想ってくれていた。
会いたい。フジオカさんに会いに行こう。そう思って「私がそっちにいくよ」と電話を掛けた。

「ご両親にはいつ会える?」という渾身のジャブ

フジオカさんは婚約破棄経験者で、自身の両親に結婚を反対された経験を持つ。私を両親へ紹介する事は、彼にとってハードルが高かった。
だからなかなか進まないのかなと新幹線で考えた私は、今回のデート中に何か圧を掛けようと決心していた。
私の両親は、彼に会えば絶対に結婚を前提とした交際を反対する事はないと思っていたので、問題は彼の両親である。というか私で大丈夫なのだろうかという不安を早く払拭したい。
軌道修正が必要なのであれば早めに知って直しておきたいと思っていた。

「ご両親にはいつ会える?」
何かの話の勢いに任せて、私は彼に問いかけた。
「うちの両親が1回目のワクチン接種が終わったらかなぁ・・・」
その時期、医療従事者と基礎疾患を持つ人・65歳以上の高齢者に優先的に1回目のワクチン接種券が送られてきている時で、彼のご両親は65歳未満。
という事は、いつになるか分からないという事を意味していた。
分かる、その気持ち分かるよ。
もういよいよコロナが憎い。

つづく。

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