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ツバメ夫の北信田舎暮らし:俳句とエッセイ 004

ありんこよ踏むなか弱きトマトの芽

春、畑に植える苗を作るため、ポットに発芽専用の土を入れ、野菜の種をまく。私はその種が発芽する様子を見るのが大好きだ。

野菜を育てる人にとって、無事に土から顔を出した新芽、つまり、野菜の赤ちゃんを見るのは、とても喜ばしい瞬間だ。

『めでたい』を、『芽出たい』と当て字する気持ちがよく分かる。ただし、語源解説によると、『めでたい』は発芽とは無関係で、『愛(め)でる』の仲間だそうだ。

「男は子供を産めないから、野菜を育てたがるのはその代償行動じゃないの?」と女房が分析する。まぁ、一理あるかもね。発芽を初認するのは、産院で自分の子供と初対面するのと重なるものがあるかもしれない。でも、そこまでの入れ込みはないかなぁ。

野菜の種類ごとに発芽の状況や形状は多様だ。豆類は種子が大きいだけに、上にある土を押し除けながら、力強く発芽する。特に大粒の花豆やそら豆などは『猛々しい』と表現したいくらい躍動的に爆誕して、みるみるうちに大きくなる。まるで、『ジャックと豆の木』のイメージだ!

トウモロコシの発芽も面白い。地面から緑色の針が突き出してくるように発芽する。そして成長も早い。

成長すれば2メートル近い背丈になる、生命力の象徴のようなトマトだが、そのイメージとは裏腹に、発芽の際は、うっかりすると見落としてしまうくらい小さく、弱々しい二本の細い子葉を、おずおずと生やしてくる。

私の学生時代、初めてうっすらと髭らしきものが生えてきた男子に、女子たちが「○○君、鼻の下にカビが生えてるわよ」と言ってからかうのが流行っていたが、トマトの発芽の勢いはその程度のものだ。

私はこの、なんとも頼りなげな弱々しいトマトの発芽イメージを俳句にしたいと思った。いろいろと表現を工夫し、ついに上記の俳句表現に行き着いた。個人的には結構うまくできたんじゃないかと思っている。

トマトの発芽について補足説明をするならば、トマトの発芽率は高い。しかも、初期の成長が遅いにも関わらず、途中でダウンする比率が低い。つまり発芽時の見かけの弱々しさとは違って、トマトもまた強い生命力を持つ野菜なのだ。

私は、いや、ひょっとしたら私の畑は、トマトと相性が良いようで、毎年とてもよく育ってくれる。

タネから育てたトマトだけでは収穫時期が遅くなってしまうので、トマトの畝の半分は、苗で売られているものを植えて、残りの半分に種から育てたトマトを植える。

採れる時には食べきれないくらい、どっさりと採れるので、サラダとして生食するだけでは追いつかない。

ネットの『トマト大量消費レシピ』を調べたり、トマト炊き込みご飯にしたり、味噌汁に入れたり、キュウリやナスの漬物に加えたり、挙句の果てには、ほとんど全ての料理に調味料代わりに加えたり、とにかく、無駄にしないように努めている。

トマトを調味料代わりに使うのは大量消費の助けになる。市販のトマトケチャップと違って、味に、しつこさがなく、控えめでありながら、料理の風味や旨みを増してくれる。この使い方は是非ともお勧めしたい。

味噌汁にトマト投げ込みまず一品
残りたるトマトの炊き込みオムライス
残りたるトマトの炊き込み稲荷寿司



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