見出し画像

難病だと発覚した義母の話4

2016年4月〜5月
デイケアに通わせる事を諦めてから2ヶ月ほど経った。

あれから、私も特にアプローチする事なく、週末には家族で実家で過ごし、義母の様子を見てきたが、明らかに義母の異常が見られるようになった。

4月半ばにあった心療内科に付き添った時、義母は先生に
『先日、姉と歯医者に行ったのだけど、うっかり診察券を忘れてきてしまって焦った』と語った。

しかし、私は違和感を覚えた。

診察券が無い…と探し回る事が良くあるため、今は義父が管理しているはずだ。
毎回『無い、無い』と探し回る義母が義父から診察券を受け取らないで歯医者に行くなんて事ある〜?

後から義母の姉のKさんに確認したところ、やはり忘れたなんて事実は無く、むしろ電車の中で何度もカバンの中をゴソゴソして診察券が入っている事を確認していたと聞く事ができた。

そして4月の末から5月の頭の連休中、毎日実家へと通っていたが、ほぼ毎日何かしらの異常な行動に遭遇する事になった。

4月30日
実家へ行くと義父が冷蔵庫を掃除していた。
話を聞くと、お昼頃、業務スーパーへ買い物に行ってきて、買ったものは義母が片付けていたらしいのだが、アイスなどが冷蔵庫の方に入れてあったらしくびちゃびちゃになっていたらしい。

『本当に最近おかしいんだよ。昨日も夜中に電話かけてきてさ…』
義父と義母の寝室は別で部屋は隣同士なのだが、義父の携帯に義母から電話がかかってきたらしい。
特に応答があるわけじゃかなった為、隣の部屋に様子を見に行くと暗い部屋の中でベットに腰掛けてぼんやりとしていたらしい。
『電話したか?』と聞くと、していないと答えたらしい。

『うーん、携帯いじってるうちに、リダイヤルでもかけちゃったのかね?』
そんな話をしていたのだけどそれから数日後の5月4日未明…夜中に自分の娘の旦那さんのご両親に電話をかけてしまっていたらしい。

無言電話だったらしく、向こうのご両親が義妹に『お母さんから電話が来たんだけど…』と電話をくれたらしい。
そんなに交流のある方々じゃ無いので、リダイヤルをかけた…とかではなく、アドレス帳からわざわざ選んで電話をかけた事になる。

義妹が『なんで旦那の親に電話したの?』と聞くと
『宝石屋から電話がかかってきて、支払いが終わってないと言われた』等と言ってタンスの中の保証書なんかを確認し出して、全く話にならなかったらしい。

義母が風呂に入っている間にこっそりと携帯電話をチェックすると確かに知らない番号から電話がかかってきていたのは確認できたがそれ以上はわからなかった。
ただ、支払いが終わってない、云々って事は無いはずだ、と義妹が言い切り、その後、再び電話が来るような事も無かった為、間違い電話か迷惑電話だったんじゃ無いか?って事で話は落ち着いた。
なぜ、娘の義両親に電話をかけたのかは謎のまま…。

その他にも毎日の様に夕方になると、わざわざ着替えをして2階の自室から降りてきて
『歯医者に行く』
と言い出したり…この時は、昼寝の直後だった為、歯医者に行く日と勘違いしたのかな?と思ったりもしたけれど、
『ビラを配りに行く』
と言い出して、玄関に置いてあるDMとチラシを手に出て行こうとする始末。
ちなみに義母はビラ配りの仕事経験が?…と義父に聞くと全く無いらしい。

2階の廊下をズボンもスカートも履かずにパンツでウロウロしているのも何度も見かけ、その度に手には何かしら書類だったりハガキだったりを持っている事から、何かわけがわからなくなっているのかな?

ねぇ、先生は違うって言ってたけどさ、やっぱりこれって認知症だって‼︎

私の中ではそうとしか思えなくなっていた。

5月7日 16時30分
義母の姉のKさんから電話が来た。
『1時間ほど前に電話が来てたみたいなんだけど、電話に出れなくて、2回くらい折り返しの電話をしたんだけど、出ないの。様子を見に行ってもらってもいい?』というものだった。

ゴールデンウィーク中の様子から予想するに何か部屋の中でゴゾゴゾやってるんじゃないんだろうか…

旦那の実家は自転車で10分ほど。
『こんにちは〜』と玄関を開けると、まさに玄関前で不安げな義母が昔の手帳やら財布やら、最近は使ってないカバンなどを両手にかかえ、ウロウロしているところだった。
『あぁ、ゆっちさん!あのね、歯医者さんの診察券が見当たらないの!』
すごく必死に訴えかけてくる。
『診察券は…お義父さんが持ってるんだよね…』玄関入ってすぐ左手に義父の仕事部屋がある。
義父は昼間、だいたいここで過ごしているのだが…
『あぁ、いないね、二階で昼寝中かな?』
そうか、義父がいないからウロウロしてたのか。

『お義父さんが診察券持ってるんだよね。お昼寝中みたいだから、後で聞いてみようね』
そう話をして
『そうそう、Kさんから電話来たんだよ〜』と別の話を振ってみたけれど、義母の頭の中は診察券の事でいっぱいの様で
『あらそうなの?』とうわべだけの返事をして先ほどから手にしているカバンの中をゴソゴソしたり2年ほど前の手帳をパラパラしてカバンに入れては出して…と落ち着きがなく、『5月11日が歯医者なのに…』とつぶやく。

うん??しばらくは歯医者は無いはずだぞ?
そう思ったものの、否定してはいけない。
『そうなの?まだ先だから安心だね』
『そうね』
しかし、義母に響いている様子は全く無かった。

しばらくして義父が2階から降りてきて、診察券を出してもらい、裏に書いてある次回の予約日を確認すると8月になっていた。
『次は8月だって。まだまだ先だから、今は要らないね。どこかに行っちゃうと困るから、またお義父さんに預けておこうね』
一緒に日付を確認する。
『あぁ、まだ先なのね。そうね、じじに持っててもらった方がいいね』とすんなりと診察券を義父に預けたので、ほっとしたのだけど

数分後にはまた持っていたカバンをゴソゴソし始めたから、まさか…と思ったら案の定
『歯医者さんの診察券が無いのよ〜、明日受診なのに…』と。

ね、やっぱり認知症だって‼︎
もう、絶対だよ。

どうしたもんかな〜そう思いながら、義母がカバンから出しては入れてを繰り返している物の中に丸まったティッシュを見つけた。
何気なく手に取って丸まっているティッシュを広げてみると『夜』と表示のある薬が2袋出てきた。

飲み忘れなのか、大事だと仕舞い込んだのか…うーん、どちらにしても良くないなぁ。

一気に2日分飲まれても困るので、それはコソッと回収した。

うーん、どうしたもんか。
問題が色々とあり過ぎて、何をまずするべきか…

まずは、やはりデイサービスか何か、とにかく昼間は家を出る様にした方が良い。
最近の義母の奇行に義父がイライラしている。
とにかく空気が悪い。
デイサービスを利用するには、認知症だって認めてもらって介護認定受けないと…

家に帰ってKさんに電話して、先ほどの実家での出来事を話す。
『どう考えても認知症だと思うんですよね』
『そうよね、私もそう思うわ。…物忘れ外来ってのを受診してみるのはどうかと思ってたんだけど、どこか知らない?』
調べておきますね。そう答えて電話を終えた。

なんだか疲れて、調べるのは明日でいいや〜なんて思っていたのだけど、その日、実家では義母の奇行はまだまだ続いていたのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?