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難病だと発覚した義母の話5

前回書いた5月7日にはまだ続きがあった。


私が家に戻った後の事。
義妹の元に義母から電話が来て
『明日、歯医者に行ってくれるの?』と聞かれたらしい。

そして姉のKさんのところにも
『(私の娘)と(義妹の娘)も歯医者に行きたいんだって』との電話が来たらしい。
もちろんそんな話は無い。

これだけ『歯医者』を連発しているのは何か気になる事があるからなんだろう。
先日、歯ぎしり用のマウスピースが合わないと言っていた気もする(付けているのはみた事が無いけど)
でも、なんでそこで孫達が出てくるの??
義母の思考回路が全くわからない。

そして電話の後の事なのか、前の事なのかはわからないけれど、
『お姉ちゃん、どこに行った?』と玄関の辺りをウロウロしていたらしい。
お義父さんが『いないよ、来てないでしょ』と答えると不貞腐れた様に2階に上がって行った。
しばらくして2階に様子を見に行ってみると、義母のベッドの横と和室に布団が敷かれていた。

『なんで布団敷いてあるの〜?』と義父が聞くと不思議そうな顔で

『お客さん用に敷いたのよ?』

と答えたらしい。

その時、義父も背筋が寒くなったらしいけど、義父からそれを聞いた私もぞぞぞ〜と背中がぞわぞわした。

え?なんだろう?認知症とかそんなんじゃなくて、見えないものが見える的なホラーな感じなのかしら?
そう思ったりもしたけれど、義妹だったりKさんに電話したりしている訳だし、何がどうなってなのかはわからないけど、義母の頭の中では誰かが泊まりに来ることになったのだろう。

5月8日
この日も昼過ぎに様子を見に行ったのだけど、ちょうど、ご飯を食べている所だった。
何を食べていたのかは覚えていない。
ただ、義母が無心にガツガツと食べていたのは覚えている。

ちょうど、義父から昨晩の『布団敷き』のホラー話を聞いたばかりだった為、え?もしかして本当に何かに取り憑かれてるんじゃ…っていうぐらい、普段の義母からは考えられない様なガツガツぶりだったのだ。

よく考えれば、昨日は『診察券』の事で頭がいっぱいで大してご飯を食べてなかったんだろうなぁ。

そんな様子の義母を見ながら、義父が
『最近、アイスすげぇ食ってるぞ、アイスがすぐに無くなる』
という。
食べた事、忘れてるのかもね〜、食べたい時に食べちゃってるんだろうなぁ。
身体には悪そうだなぁ…
『あれば、あるだけ食べちゃうのかもしれないから、買い足さなければいいんじゃない?』
『嫌だ。俺も食いたいもん』
まぁ、そりゃそうか。

夕方になると1階を意味もなくウロウロして孫やらお姉さんを探す様になった、と義父から聞いた。
実際、その場面を見かけたが、義父があまりにもキツく
『最初っから来てないでしょ⁉︎いい加減にしろ!』と怒鳴るように言っていたので、義母もムッとした顔をしていた。

義父はそれを自分でも自覚してるらしく、イライラもしていて、どう返してやればいいのかわからない…と言っていたので
『そうだなぁ、一般的に否定するのはいけないって言われてるんだよね。だから、『いない』とかじゃなくて『帰ったよ』とかでいいんじゃない?』
自分ならなんて言うかなって事を想像して義父にアドバイスしたんだけど、それが大変な事態を引き起こすことになった。

その後、何日か夜になると『お客様用』の布団を敷き出したりする事もあったらしいが、『命に関わるような行動じゃなければ、放っておいていい』という私のアドバイスを受け、義父は否定して怒鳴ったりはしなくなっていた。

そして8月12日のその時も、私のアドバイスを聞き入れ
『お姉ちゃんは?』と聞いてきた義母に
『帰ったみたいだね』と返事をしたらしい。

そして義母は家を飛び出した。
時刻は20時を回っていた。

義母が出て行った事を、義父ははじめは気が付かなかった。
しばらくして1階のリビングにも2階の自室にも居ない事に気がつき、まさか…と玄関をみると、義母がいつも履いているクツがない事に気がつき、慌てて車で近所に探しに行った。
最寄りの駅までは歩いて20分はかかる。
とりあえず駅までの道を車で走らせていたら、駅に向かって歩いている義母を見つけたらしい。
『何をしているんだ⁉︎』と聞くと
『お姉ちゃんを駅まで送って行こうと思って…』と言っていたらしい。
義母を車に乗せて帰ってきて、この事を私に電話で伝えてきた。

義父からの連絡を受け、義母の様子を見るために21時、実家へと向かった。

5月のこと。もちろん外は普通に暗く、義母もよく飛び出したな…とも思ったし、すぐに見つけられて良かった…とも思う。
自力で帰ってくる可能性もあっただろうけど、ヘタをすれば『探し人』の町内放送を入れてもらうような事態になっていた可能性だってあったのだ。

義母の自室は電気が付いておらず、暗くてそれでも寝ているわけでは無く起きている気配があったため、
『お義母さん?』と声をかけると涙声で返事が返ってきた。
義母は暗い部屋で泣いていたのだった。
電気をつけて、何も知らないフリで『どうしたの?』と聞くと、色んな事がごちゃ混ぜで混乱している…と。
しばらくは義母の隣に腰掛け、背中を撫でてあげていたのだけど、涙が落ち着いて来たようだったから
『お茶でも飲みに下に降りましょうか』と言うと、こくんと頷いた。

ところが部屋を出る直前になって急に回れ右。
『小銭入れが無いわ』と探し始め、
あぁ、これは長い夜になりそうだなぁ…と思ったのだった。




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