見出し画像

難病だと発覚した義母の話7

2016年5月20日

H病院受診。
H病院は認知症専門の病院で、1階は診察室や検査室、デイケアなどの部屋などがあり、2階、3階は入院施設になっている。5年ほど前にできたばかりの病院だった。

余談だが、5年前のオープン時に入浴介助のスタッフ募集に応募して、採用された事がある。
旦那に反対され泣く泣く辞退してしまったけど。

義母が女の先生の受診じゃないと嫌だと言うので、確認すると、この病院に常勤でいる先生は男の先生ばかりだけど、非常勤で週に2日来ている先生が女の先生だと言うので、女の先生のいる曜日に予約を入れたのだった。

今回の受診に義母の姉のKさんもついてきてくれて3人で病院に向かった。

病院に入ってすぐ右手がデイケアになっていて、左が診察の受付。
この病院に決めた理由の一つがこのデイケアだ。
認知症と診断がされれば、この病院のデイケアに通う事が可能ではないか?と考えたからだ。


血液検査、CT撮影、長谷川式の認知症テストを一通り受け、義母が血液検査などを別室で受けている間に家族からの話しを聞いてくれて、一昨日まで通っていた心療内科とのあまりの対応の違いに感激してしまった。

『ご家族が認知症を疑っている症状というのはどういったものになりますか?』
と質問され、
ほぼ毎日の様に何かしらを探して引き出しやタンスをゴソゴソしている事
夕方になると誰々はどこに行った?と聞いてくる事
最近では、お客さんが来ると言って布団を敷いていたりする事などを私から。
以前の鬱病が酷かった時の事をKさんから話してもらった。

そして診断の時
『確かに認知症である可能性も高いのですが、ちょっと認知症とも違うかな…という印象なんですね。私の方で認知症と判断する事は出来ないかなぁ…』

先ほども一生懸命話しを聞いてくれていた先生はものすごく申し訳なさそうに伝えてくれた。

正直、『えぇ〜、そうなの⁉︎絶対に診断してもらえると思ったのに〜!』というショックな気持ちは大きかった。

それでも、前のクリニックで言われた時と衝撃や反発が違うのは、ちゃんと話しを聞いてくれた。調べてくれたっていう信頼があるからだ。

『この検査結果をクリニックの方に送っておくので、これからの治療もクリニックの方で…』
なんて言われて、私は慌てる。
もうあの心療内科のクリニックに行くつもりはない。

『あのクリニックに戻ってもどうしようもないので…O病院に紹介状って書いていただく事、出来ますか?』
O病院はここともう一つ悩んでいた『心療内科専門』の病院だ。ここに女の先生が在籍していることも確認済みだ。

『あぁ、O病院。あそこならいいかもしれないですね』
先生もそう言ってくださり、今日の検査結果やらなんやらを用意してくれたのだった。

私にとってはまたしても残念な結果だったけど、次につながる結果が残せてとりあえずはほっとしたのだった。

とはいえ、おかしい事に変わりはなく、その後も珍行動は続く。

5月22日
散歩に行くと財布を持って出て行こうとするので、一緒についていく事にした。
爽やかなお天気で、近所の大学の周りをぷらぷらと歩きながら雑談をする。
ところが途中で突然、ハッとした顔になり
『私、ゆっちさんにアイス預けてなかった⁉︎』と。

いえ、預かってませんけど?
お店寄ってないよ?
だいぶ歩いたし、アイスが食べたくなったのかな?
…って事で帰り道、コンビニでアイス購入(*´꒳`*)

5月26日
11時ごろお友達のOさんから
『お茶でもしましょう』と連絡をもらい、14時半に迎えに行くと言われたそう。

電話を切った後、玄関の辺りを行ったり来たりしているから、あやしいなぁ…と思ってたらさ、いつのまにか本当に出ていっちゃってたんだよね。
慌てて追いかけたよ。
気にしてたからすぐに追いついて良かったよ。
と義父から聞いた。

そんな事があったとも知らずに私が実家を訪れたのは16時過ぎだったと思う。

義母はリビングにいて、服装が部屋着でなくてお出かけの装いだった為
『お出かけですか?』
と聞くと
『Oさんとモスへ行ってきたの』と。
すごく楽しかったみたいで、そう話す声も表情も明るい。
『カギを持って出るの忘れちゃってね、今、窓から入ってきたの〜』
なんて話す声も楽しそうで、思わず流しそうになったけど…窓⁉︎

そういえば、玄関カギ閉まってたから開けて入ったなぁ。
お義父さんは…2階で休んでるっぽい…
状況を整理しつつ、楽しそうに話す義母の話を聞く。
『そうだったのね、窓は開いていて良かったですね』
『窓のカギは持っていたから開けられたのよ〜』
うん?窓のカギ??
『ほら、ここに鍵穴があるでしょう?…あら?これは無いわね…』

外から入ったであろう窓はその窓だけなのだけど、しかも至って普通の窓。クレセント錠だ。鍵穴なんて初めから無い。
なんだろう?これも認知症から来るものなのかな?妄想?

その後も『モスバーガーで食べた』『違う、モスじゃなくてバーミヤンだった』『モスでドリアを食べた』等々

うんうん、楽しかったんですね…
相槌を打ちながらも、いったい、どれが本当なのか、実は本当の事なんてひとつも無いんじゃないか…

しばらくして義父が2階から降りてきて
『夕飯、何が食べたい?』と義母に聞くと
『今はお腹いっぱいで何も思いつかない』と答えていた。

やっぱり何かは食べているんだろうなぁ。

お友達のOさんとお出かけをしていた事実は本当だと義父から確認が取れ、私は義妹のところへ相談に行った。

義母のお友達のOさんと義妹は面識がある様だったので、今日の事を聞けないか?という相談を。
できれば、何か義母の事で気がついた事とかないか?と聞きたかった。

そしてOさんから聞けた真実は
Oさんともう1人Nさんが居て、3人でモスバーガーで食べた。
以前一緒に通っていたカーブス(運動ができるジム)へ行こうと誘ったが『用意してこなかった』と断られた。
でもカバンの中にカーブスの準備をして持ってきていたのは見えてしまった。
食べているうちにそんな気分じゃなくなったのかな?と思い、特には突っ込まなかった。

では、帰ろうという話になり、Oさんが家まで送ってくれた。
玄関のカギが閉まっていて、ピンポンを押しても反応が無く、庭に回り窓の鍵が開いていた為、『ここから入るわね』と中に入って行った。…というのが、Oさんから聞けた真実。

とっても楽しそうで、明るくて、鬱になってしまう前の様で楽しかった。とOさんは話していたらしい。
そうだよね、友達とは何歳になってもワイワイやっていたいよなぁ。

Oさんは特に違和感は感じなかった…と言っていたらしいけど、やっぱり少しめちゃくちゃ感はあるんだよなぁ。
ほんと、これらの珍行動が認知症じゃないなら、なんなのさ!って思ってしまうのよね。

ただ、今ならば思う。
認知症の専門家でさえ『認知症と断定できない』としたこれらは、もしかするとのちに発覚する難病の前触れだったのかもしれないなぁ、と。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?