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難病だと発覚した義母の話11

2016年6月〜

介護認定の結果が出るまでの間にも義母の様子は徐々に悪い方に進んでいた。

旦那がエアコンのフィルター掃除のために、ウッドデッキで掃除機をかけていると、ものすごい形相で『近所迷惑だから、やめて!』と止める。
『昼間なんだから大丈夫でしょ。それよりホコリ取らないと、エアコン全然効かないじゃん』
と旦那が言っても
『迷惑だから!!』と旦那から掃除機を取り上げる。

旦那もだいぶ、ムッとした顔をしていたが、黙ってその場から離れた。
おそらくは母に怒鳴ってしまう前に気持ちを落ち着けようとしたのだと思う。

気がつけば、義母は2階の自室に居て泣いていた。
『こちらのために色々とやってくれているのに怒ってしまった…』
と落ち込んでいる様だった。

夕方になり、部屋が暗くなっても、義母の自室には灯りが付いていなかった。
お昼寝かな?
そっとドアを開けると、暗い部屋の中で何か聞こえる
すぐに義母の荒い息だと気がつく。
『お義母さん⁉︎電気つけるよ!』
部屋がパッと明るくなり、義母がベッドの上で腰掛けた状態ではっはっと肩で息をしている状態だった。

えっ!これって過呼吸ってやつ?
ビニール袋、口に当てるんだっけ⁉︎
そう思ったが、近くにビニール袋は無く、タオルが目に入った。
とりあえずタオルを口に当てて、背中をゆっくりとさすってみた。
『ふー、ふー、ふー』と言いながら背中をさすっていると、しばらくして落ち着いてきて、一緒に深呼吸をするともう大丈夫だった。

『もうすぐ夕飯できるよ』と伝えると、もう少し休んだら行くと言うので先にリビングに戻った。
30分ほどしてリビングに来た母はやはり顔色はあまり良く無く、食欲も無さそうで、すぐに自室に戻ってしまった。

とはいえ、薬を飲んでもらいたいし、その前には何かを食べてもらいたかった。
『つるんとした物なら食べられる?』とフルーツのたっぷりと入ったゼリーを持っていく。

雑談をしながら、義母はゼリーをしっかりと食べてくれて、笑顔で話もできていたから、落ち着いてきたかな?と思っていたけど、最終的には
『迷惑ばかりかけてごめんなさい』
と泣き出す。

これって…うつ、なのかなぁ。

翌日も14時頃、様子を見にいくと遮光カーテンを閉め切った部屋でパジャマのまま横になっていて、まだご飯も食べていないし、薬も飲んでしないという。
おそらくは水分も摂っていないかも?
『なにもできる気がしない』
『何もかも忘れていきそうで怖い』
『迷惑ばかりかけている』
そんなことばかり繰り返している。
その日もフルーツたっぷりのゼリーを食べさせ、薬を飲ませるのが精一杯だった。


6月29日 O病院受診

義母は迎えに行った時から調子が悪そうでリビングのソファーで横になっていた。
それでも、車の中や待合室では雑談ができていた。

診察に入り、この1週間は耳詰まりも辛かったし、落ち込むことが多かったと話をする。

C先生は義母の顔を見ながら
『死にたくなった事はある?』と聞いた。

義母の診察の時、私は少し離れた斜め横辺りに座っているのだけど、義母の目から涙がつーっと流れ出るのが見えた。

『こんなにつらいなら…と思ったりします』
義母の声は震えていた。
『入院して、治療してみる?お薬の調整もできると思うし』
先生が入院を薦めてくれた。
あくまでも本人の意思を尊重してくれるんだな。

『怖い』
義母はブルブルと震えていた。
『何もかも忘れそうで怖い』
そう言って自分で自分の腕を抱きしめていた。

『病棟がどんなところなのか、見学してから決めてみる?』
そう言って先生は病院の2階にある病棟を見学させてくれた。
2階は比較的症状の軽くて、薬の調整などで入院をしている人が多いとの事で、想像していたよりもずっと落ち着いたところだった。
3階、4階にはもう少し症状の重い方も入院されているとの事だった。

結局、認知症の薬を減らし、うつの薬の量を増やして様子を見ましょう。
どうしても辛かったら、入院も検討してみましょう。
そう話はまとまった。

病院から帰った後も
『じじがご飯をせっかく準備してくれたり、心配してくれているのに、冷たい態度を取ってしまったり、ご飯を食べられないのが申し訳ない』
『ご飯を食べないとじじに怒られる』とメソメソしていた。

ところが薬の影響なのか、1週間後の病院の受診までの間にどんどん調子が良くなっていった。
多少の物忘れはあるものの、それを気にしている様子も無いし、ご飯も食べられているし、積極的に掃除までしていた。
病院に行く前にはドライヤーで髪を整え、化粧までするほどに回復していた。

うつの方をしっかりと整えつつ、認知症の治療は少しづつにしておきましょう。
先生も少しほっとした様な様子があった。
そう落ち着いた頃に義母の介護認定の結果が出た。

『要介護1』

要支援では無かったため、相談員のMさんに担当してもらう事はできなくなってしまった。
Mさんに連絡をすると、すぐに別の事業所と、そこの相談員さんを紹介してくれた。

紹介されたケアマネジャーさんはGさん、Gさんは私と同年代くらいの40代くらいの方で、Mさんと同じ様に穏やかな雰囲気の方だった。

すぐに家に面談に来てくれて、話をきいて義母にあったケアプランを検討してくれた。

とりあえず、週に一度は家を出てデイサービスを利用してみよう…という話になった。
当時、義母はまだ66歳で比較的若く、一般的によくある様な、体操をしたり入浴をしたり…というデイサービスは向かないと思う。

義母にピッタリな少人数しか受け入れてくれないデイサービスに心当たりがある。
少人数しか受け入れていない為、空きがあるかどうか確認してみようと思う。
Gさんはそう提案をして帰って行った。

翌日には、『とりあえず、デイサービスを見学させてもらえるようなので』と連絡がきて10日後にデイサービスの見学をさせてもらう事になったのだった。

(2016年6月〜7月)


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