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そんな中で

「合計8点で千円になります」
気付いた時には、ひたすらデカくて食べ応えのありそうな菓子パンを無心でカゴに放り込んでいた。 
「なんかカゴ一杯に入れてるな、この方、、、」
なんて他の客から思われるのもなんだか嫌なので、多少周りを意識しながら。普段は菓子パンなんて食べないし、食べたいとも思わない、、、普段は。


「ダメだ、全く分かんねえや、、、」
先日、日商簿記3級を受験したのだが恥ずかしい事に落ちた。原因としては本番レベルの問題を全く解いていなかった為だと思っている。当初は『3級を飛ばして2級から受けてやろう』なんて事も思っていて、まさかこんなところで壁に突き当たるとは思ってもいなかった。そして何より、毎日かなりの時間を勉強に割いていたので落ちた事が分かった瞬間、目の前が真っ暗になったかのような絶望感に襲われた。

「あの子は要領良くていいな」
昔から私は力加減が出来ないというか、丁度良い塩梅で何かに取り組むというのが苦手で、本当に『0、100思考』でしか行動できない。それが無事に報われた際は『私のした事は間違いではなかった』と思えるのだが、良い結果に結びつかない事もある。そんな時は『100』で行動している分、反動がデカい。
「今までしていた事は何だったんだろう、自分は本当にダメな奴だ」
自己嫌悪・否定に襲われ、その後が厄介、、、『ジャンクフード(大抵は粗悪な菓子パン)』『性』を異常な程に欲してしまう。それ以外にもストレス解消法や鬱憤晴らしの仕方は沢山あるはずなのに、その2つの選択肢以外が急に閉ざされてしまい選択の余地が無い、、、そんな感覚に陥る。


「あっこれ落ちたな。あんだけ時間注いだのにまじか、、、もうダメだ、菓子パン食べなきゃおかしくなっちゃう」
私が受験したのはネット試験だったので、すぐに結果を知る事が出来た。試験終了後コンビニへ直行し、菓子パンを大量に買っては家で貪るように食べた。正直3個目くらいからは美味しいと感じていない。だからと言って食べるのは決して止めない、、、止めれない。そして菓子パンに少し満たされたら自慰行為をしては、また菓子パンを食べ始める。そんな事を何度か繰り返し菓子パンが全て無くなる頃には
「今日も明日も明後日もどうでもいいや、来週会う約束してる子?そんなの知らない」
そんな事を思ったりしていた。


「こんな些細な事でなに凹んでいるんだよ」
以前の私は、そういう状態に一度陥ると数日間はそこから抜け出せなかった。鏡を見ても映るのは浮腫み切った私。そんな酷い自分の姿を見ては、『もういいや』と無気力状態のようになり、気付いたらまた何かを口に運んでいる。そんな負の連鎖が続いていた。でもここ数年はその日のうちに、元の精神状態に戻れるようになった。自分とは比にならない程の辛い経験をしている方の動画を見ては自分と比べて、自分に起きている事の規模の小ささを痛感させるという方法で。なので今回の試験に落ちた当日の夜には、一通り反動を受けた後すぐに走っていた。真っ暗な下界で住むことになりそうだった私を、必死に元の世界へ引きずり戻すかのように。


「兄ちゃんの方が何倍も辛かったよね」
走っている最中フッと、小学生の頃兄ちゃんが特定のクラスメイト一人に虐められていた事を思い出した。兄ちゃんは辛いはずなのに、学校で会うと毎回笑っていて、弟の私にも優しかった。いつも笑っていた為、皆からのあだ名は『スマイル』だったそうだ。きっと虐めた奴も、兄ちゃんの優しさと愛想の良さに付け込みそういう事をしたのだろう。そんな兄ちゃんを思い出しこんな些細な事でクヨクヨしてた自分が悔しくなり、もっとスピードを上げた。そして私もよく周りから『いつも笑っているね』と言われることが多く個人的には良く思っていなかったが『これも兄ちゃんから受け継いだものだったんだ』と思い、急に誇らしくなった



こんな事は2.3か月に一回はある。もっと短い周期で来ることもある。でも最近は、それを乗り越えるごとに『また一段階成長する事が出来た』と捉えられるようになった。気分の浮き沈みが少ない人を羨ましくは思うが、ジェットコースターのように気分が移り変わるのも『生きてる』って感じがして意外と悪くない。今は調子がいいのでそういう風に言えるのかもしれないが。


「今週あの子とどこ行こう?まあ一緒ならどこでもいいか。ちなみに今はどうかな? おっ、悪くないじゃん(鏡に映る自分を見て)」





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