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思い出を話す

月曜日の夜、デイの車で送ってもらった息子が泣きながらNさんに言った。
「水曜日(次にデイへ行く日)は言うから。ごめんね。ごめんね…」
Nさんは「じゃ、また水曜日に教えてね」と軽く言って、帰って行った。
泣いた原因は、Nさんに「日曜日は何してたの?」と聞かれて答えられなかったから。
前日の日曜日、息子は移動支援でヘルパーさんと一緒に総合運動公園へコスモスを見に行った。
そのことをNさんに話せなかったのだ。

息子は自分から質問はするのに、逆に質問をされると答えられないことが多い。
だから今回のように答えられなくて、泣いて謝るのはあるあるで珍しくない。

息子はよく喋る。
というか、よくひとりごとを言う。
人に話しかけるときは、挨拶か質問形式で話す。
そして、なによりも人が好きだ。
でも、うまく人とコミュニケーションをとることができない。
その結果、満たされずにフラストレーションがたまっていく、、、。

話したい、でも自分の言いたいことがわかってもらえない。そして人の話しもよくわからない(理解できない)……のではないか、と私は想像する。
また、滑舌がよくないので言葉も聞き取りにくい。
コロナ禍でマスクが当たり前だった3年間で、さらに滑舌が悪くなった気がしている(マスクの中で口を開けずに話すから)。
息子はちゃんと話しているつもりでも、相手は何と言っているのかわからないという悪循環……。
これでは、言葉のキャッチボールが続くはずもない。

それでも、ときどき息子は自分から伝えたいと思ったことを話し出すことがある。
月曜の夜、「3年生が修学旅行でビックバンへ行くんだって」と学校で聞いたと教えてくれた。
私は、「ビックバンには10回くらい行ったことがあるね。泊りでも2回行ったね」と返すと、息子は以前に行ったビッグバンのことをほんの少し、思い出したようだ。
話しだけでは思い出しづらいだろうと思って、そのときの写真画像を探してプリントアウトしてみた。
すると、息子は友だちと一緒にビッグバンで泊まったことを思い出したようで、写真を「学校へもっていく」と喜んだ。

夜は好きな場所で寝ぶくろで寝たことも思い出したらしい

写真とその経緯(息子が話したがっていること)を書いた付箋メモをつけて、持たせた。
その日、帰宅した息子は写真のことを先生に話したそうだ。
「10回くらい、行ったことがある」「泊まったことがある」「恐竜のそばで寝た」「Yくんと行った」など、自分なりに話したようだった。
そして先生は何て言ったの?と尋ねると、「先生はビッグバンに行ったことがないって」「前の学校のときも行ってないって」などと聞いた内容も覚えていて、私の質問に答えることができた。

ああ、この子には伝えるための補助ツールが必要なんだ。
満足できるコミュニケーションがとれたとき、こんなにも満たされるんだ。
これは私にとって、久しぶりの発見だった。
今回は写真だけでなく、当時のしおり(資料)も持たせていたので、先生も理解しやすかったのかもしれない。
それでも、息子が楽しかった思い出(体験談)を自分から人に話したことが、感慨深かった。

自分が本当にいいたいことを話したからといって、相手にその通りに伝わるとは限らない。
それでも、自分なりに話したという満足感があれば、いいのかもしれない。
聞いてもらえた、わかってもらえたという安堵。
それが息子にも必要だと思う。
彼のコミュニケーションを少しでも補助できる(手助けする)ツールをもっと探してみたい。

ユースサービス大阪さんのキャンプには、何度も息子1人で参加しました


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