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クスノキの番人 読書感想文

クスノキの番人   東野圭吾著

 不当解雇された腹いせに、犯罪に手を染めてしまった玲斗が、弁護士費用を出す代わりに、突然クスノキの番人に任命されることから始まります。玲斗は何も分からないながら、祈念の案内役を務めます。クスノキの番人の意味が、玲斗の成長と共に分かるようになっています。はじめは好奇心任せで動いていた玲斗が、少しずつ意味を見出していきます。自分自身でわかるようになると、さらに自覚が生まれ、また成長をしていきます。
 私は玲斗のただ流れに身を任せるしかない気持ちが痛い程わかるし、千舟が玲斗が自分を卑下することを嫌う気持ちもわかります。自分で生まれて来なければいい人間だと言う玲斗を、拳をテーブルに叩いて言葉を遮る千舟。決して声を荒げる訳ではないけれど、怒鳴る事を我慢していることはわかる。貧乏で愚かで若い玲斗と裕福で有能で老いた千舟。犯罪に手を染めた玲斗ではなく絶望したのは千舟だった。玲斗は千舟のおかげで生き方が変わっていった。クスノキの番人としての自覚もそうだけど、人間としても成長している。このことが今度は千舟を絶望から引っ張り上げた。玲斗が全部受け止めてくれると約束したところが感動。クライマックスはもう泣き所がいくつもあって、最後の最後にまた泣いて、千舟~良かったねーなんて思いながら読み終わりました。ほっこり。なんだかんだハードボイルド系の小説を好んでしまうけど、心が温まるっていいね。玲斗の更生物語ではなく、家族とは何だろうと考えさせられました。血が繋がっていなくても愛情を注げるし、血が繋がっていても優しく出来なかったり。何にせよ後悔だけはしないように、家族にくらいは優しくしようと思いました。

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