音声燻製【#毎時ショートショートnote】

ある日、モクモクと町中に謎の煙が発生した。次第に煙は街を包んでいった。煙不思議と吸っても苦しくなく、人々はそのまま普通に生活を送っていた。
異変に人々が気付いたのは煙が街に充満してから一日に経ってからであった。
相手が何を言っているか分からない。街の人々は口々にそう言っていた。曰く、相手が喋っている言葉がまるで異星人の言葉のように感じられ、理解が出来ないみたいだ。
字は変化がないようなので人々は皆筆談を行った。
街の博士はすぐ煙を採取し、研究を始めた。
結論は三日足らずで出た。実は煙は人体に影響があったらしかった。煙は人間の声帯に溜まり、声に纏わり付く。煙で燻かされた声は発声すると違う言葉として出てきてしまう。それが意味不明な言葉の正体だった。
博士は煙を装置で吸い始めた。すると人々に言葉が戻っていった。煙はあっという間に消失し、街には日常が戻った。
この出来事は珍しい話として街で語り継がれた。ただこの話を初めて聞いた人は皆煙に巻かれたような表情になっていた。(429)

煙に巻かれると言いたかっただけでした。
たらはかにさんいつもお疲れ様です!

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