首絞め地蔵【ショートショート】
「あぁ、私めをお救いくださいませ…」
真っ暗闇の中、みすぼらしい女が祈りを捧げているのは神様でも仏様でもなく苔むした一体の地蔵であった。
女は手を合わせ狂ったように同じ言葉をぼそぼそと呟く。
「あぁ、お助け下さい、あぁ、お助け下さい…」
地蔵は女をじっと見ているようだった。
あの世で苦しまないように。地蔵は地獄に落ちた人を救う存在である。
しかし、この地蔵は少し違う。この世は生き地獄である。この生き地獄から人々救い出さねばならない。そのような思想を込めてこの地蔵は作られた。
素人によって作られたのであろう、表面はガタガタで表情もなんだか歪なものであった。
この地蔵を作った者は地蔵の完成から3日で死んだ。地蔵の前でのたれ死んでいる所を発見されたらしい。首には何かで絞められた跡が残っていたそうだ。
そのことから首絞め地蔵。そう呼ばれるようになった。
ふと、女は首に何かが纏わりついていることに気付いた。
理解した女は涙ながらに感謝をぼそぼそ述べる。
「ありがとうございます。ありがとうございます。…」
翌朝、女は死骸で見つかった。女の首にもまた、何かで絞められた跡が残っていた。
首絞め地蔵は墓場で待っている。地獄から救われたい人々を。
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