子供の特権【ショートショート】
「ほら、君もおいでよ」
目の前の男の子が僕に手を差し出した。男の子は自身が乗っている雲と同じ真っ白な髪色だった。
「む、無理だよ。雲なんか乗れっこない!」
僕には目の前の状況が絵空事にしか見えなかった。
「大丈夫。なぜなら僕達には子供の特権があるから」
「特権?」
僕には聞き馴染みのない言葉であった。
「そう。子供の特権。これがあればこうやって雲に乗れたり、あのお月様にだってぶら下がれるのさ!」
男の子は空を指差した。その先にあるお月様は不思議といつもより大きく見えた。男の子は続ける。
「僕達はいつしか大人になってこんなこと出来るはずがないって言ってしまう。この事も忘れてしまうだろう。だから今!子供である今を楽しまないと!」
男の子の目は真剣そのものであった。
僕はおそるおそる男の子の手を掴んだ。その手に引っ張られ、雲の上に立った。
「わぁ、すごい…」
雲は思ったよりもしっかりしており落ちる心配はなさそうだった。
「さぁ、行こうか。次はあの星を捕まえよう!」
雲が動き出す。それと同時に僕の心臓も大きく鼓動する。
「これが子供の特権…!!」
僕は男の子の手をぎゅっと握る。男の子は笑って手を握り返した。
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