生きているか死んでいるか【ショートショート】

「生き返ったのか…?」

つい先日、自分の大がかりな葬式を空から見下ろしていたと思ったらいつの間にか寝室にいた。俺はハッとして急いで洗面台に向かった。

「なんだこの顔は…」

自分の体には間違えない。しかし、鏡に映ったソレは目が飛び出ており、口は裂けている。心臓に手を当ててみる。そこにはあるはずの鼓動がなかった。自分はゾンビになってしまったのだろうか。また生きられるのは望ましいことなのに、私の感情は恐怖に支配されていた。どうしたらいい。一度死んでいるからといってまた死ぬ勇気があるわけではない。この姿で生き続けなければならないのか。先の不安でもう頭がパンクしていた。

キャー!

俺は声の方へすぐ振り返る。

あぁ、お前は。

私は涙を流し彼女へ抱きつこうと思った。

しかし頭が歯止めをかける。

ダメだ。今の俺じゃ。

彼女はどこかへ逃げたのかとうにいなくなっていた。

俺は本当に生きているのだろうか。

鏡はそれを否定するようにおぞましい姿を写し続けていた。

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