センター試験の思い出②

人生初のセンター試験は呆気なく終わった。いや、試験問題にはしっかり取り組んだし、相応に手応えがあった。2日間の試験日程を終えてまっすぐと家に帰り自己採点をした。私のセンター試験の得点は目標点を超えて9割以上取れていた。国語と数学2Bで若干しくじったものの全体と見れば十分すぎる出来だった。相応に幸運もあった。

センター試験の翌日、高校の担任にセンターで高得点をとり二次試験へ通過したことを報告したら「そうか」と淡々と返された。一応は進学校なのでセンター試験では基本的に高得点を取る生徒が多いこと、二次試験がある場合はその比重が高い大学が多いのでセンター試験が終わってからが本番であることを教師は熟知しているので、妥当な反応なのだなと思った。

同級生の中にはセンター試験でしくじってしまった人も少なからずいた。ある同級生は東大を目指しており地頭も良かったが、センター試験のマーク式の解答に不慣れだったのか点数が振るわずに東大の二次試験へ通過できなかった。その同級生は早慶などの私大併願に行かずに浪人することを選択した。

センター試験は必ずしも学力通りの成果が出るとは限らない。解答はマーク式で解答に至るまでのプロセスが二次試験や学校の期末テストなどとは違ってくる。数学や国語の漢字問題がその典型だろう。これについては現在の共通テストにおいても変わってはいないだろう。先ほど触れた二次試験へ通過できなかった同級生のように、学校での成績が優れていてもセンター試験の形式に不慣れだったがゆえに浪人してしまう人も毎年一定数存在する。スペック自体は高いので二次試験まで行ければ合格はできただろうに、実に惜しいことである。

さて、もう一度ここで伝えておこう。センター試験は学力通りの成果が出るとは限らない、そもそも学力を測る試験ではないとさえ私は考えている。
センター試験で出される問題の範囲と形式は限られている。問題の範囲が高校の教科書までである点は二次試験と変わらないが、センター試験のようなマーク式の解答ではより似通った問題がでることが多々ある。こうなってくると過去問や模試、予想問題など類似の形式の問題を数多く解くことでパターンを覚えて解くことが得点に直結していく。

過去の例を踏襲すれば容易に攻略できるという点ではゲームに近いかもしれない。マリオみたいな横スクロールアクションでも、過去作をプレイしていると最新作の初見のステージでもおおよその構成を把握して容易に攻略することができる。私はこうしてマリオワンダーを短時間でフルコンプした。

私は確かにセンター試験で9割以上の点を取った。しかし、その前から、センター模試を受けていた頃からセンター試験なんて学力を測るものではないと知っていたのでそれを誇ることもなく、むしろセンターでしくじった同級生の方が学力という点では上だったと今でも思っている。私がセンター試験で高得点を取れたのは、入念な対策と幸運によるところが大きい。それも実力だという意見もあるかもしれないが、素の学力とは別の要素であることは言っておく。事実、現役で第一志望の大学に入った私はその後成績が振るわず、創作活動に没頭したのもあって1年ほど留年した。センター試験でしくじった同級生は、1年後東大に入り学業の方は順調だったと聞く。

私が受験生の頃、某予備校がセンター試験が終わった後に駅に貼り出した広告で「自分の夢まで自己採点しないで下さい」というコピーで宣伝していたが、集客の意図はともかくそのコピー自体は至極正しいものだと今では、いや、今の方が身をもって実感する。人一人の人生をマーク式の大学入試で決めるなんて滑稽なものである。私は二次試験も合格したが、二次試験の結果ですらそうだとさえ思っている。

承認欲求がてら、最後に私の例を話そう。センター試験で9割取った私は、児童漫画家を目指して現在いわゆる賞レースの真っ只中だ。その賞レースではセンター試験の点数なんて当然関係ない。そもそもセンター試験をうけていない、それどころか学校でまだ二次方程式を習ってない人とも競い合うこともあり得るのである。(実際13歳で受賞した人がいた。)
漫画となると特別に思えるかもしれないが、私は会社員も経験しており、その経験上別にサラリーマンでもそれほど変わらないと思っている。受験生だった頃の私が今の私の姿を見たらどう思うか。私もある種学歴社会の成れの果ていったところか。

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