「描く」ことと「書く」ことと

私こと加ト☆しゅんは現在は仕事の傍ら漫画・イラスト描きを中心に創作活動をしている。1年前に小学館のコロコロコミックの漫画賞で奨励賞相当の受賞をしたことを機に担当がつき、担当指導を受けながら次の大きめの漫画賞に向けて新作作りに励んでいる。昨年の秋にはアシスタントの現場にも入り、少しずつであるが商業媒体への道へと足を進めている。

2024年になってまた何か新しいことを始めてみようと思い、ブログを開設してみた。私は、現段階では伏せるが世間では良いとされている大学の出身で、創作活動ばかりで学業に本腰を入れていなかったとはいえ美術史学を専攻して卒論では32000字程度の論文を書いたり、大学時代から塾講師のアルバイトをしたこともあり、文字や言葉で伝えることには比較的慣れていた。最近は塾講師の経験を活かして教育関連の仕事に転職した。「人に教える」ことが無意識的に好きなようで、チャットツールやオフ会などで人と話をする時は雑学を披露する癖がある。マウントを取りたいというよりも知ることを楽しんでほしい意識が強いのかもしれない。X(旧Twitter)では文字数が限られており発信した情報も一過性の強いものになってしまうので、ブログという文字媒体でもっと私の考えること、思うこと、そして私自身を伝えていきたいと思った。

ブログを始める前段階で極めて個人的で些細な葛藤があった。「漫画描きならばブログも漫画にするべきでは。」と考えていた。Twitterではエッセイ漫画をよく見かけるし、『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』の作者である曽山一寿先生は「そやまんがブログ」でエッセイ漫画を展開しており書籍化されるほどの高い人気を得ている。何かを教えたり、日常の体験を伝えることも漫画を媒体にするのが漫画描きの矜持だと思っていた。

けれども少し考えてそのような矜持よりも私は合理性を優先した。文字媒体の方が短時間で多くの情報を伝えられるのである。知識や見聞の披露は漫画という媒体でもできるが、結局時間がかかってしまうのである。まず漫画を描くのは文を書くよりも時間がかかる。
現段階の私の力量では、400字詰原稿用紙なら15分程度で書くことはできるが、漫画では1ページを描くのにコマ割りにもよるが短くとも3時間程度はかかる。下描きから始まって、ペン入れ・ベタ・トーンの工程があり、当然と言えば当然だが絵を描くのは文を書くよりもずっと時間がかかる。そして漫画1ページで伝えられる情報量を文字で換算しても400字原稿用紙を埋めることはまずできないだろう。セリフだけでも1ページに100文字以上あったらまず多すぎて読者は読むのに抵抗を感じるはずだ。文章と漫画とでは言語化した際に伝えられる情報量に大きな差がある。漫画原作のアニメが原作に追いつきやすいのに対してラノベ原作のアニメが原作のストックに余裕があり場合によってはアニメの方が巻いていることがあることからもそのことが伺える。

冗長に書いてしまったが、私はもっと情報を発信したい。漫画描きとしてできれば視覚に訴える形で伝えたいが、文章と比べてどうしても効率が悪い。そして私にとって文章を書くことは苦手ではないし、塾講師のアルバイトで小論文指導をするくらいには書ける方なので、漫画やイラストを「描く」だけでなく、ブログを「書く」ことでもっと発信していきたいと思っている。

終わりに伝えておくこととして、このブログで書くことはあくまで一つの価値観である。世の中は実にいろんな人が実に様々な考えを持っているわけで、あくまで加ト☆しゅんという人間がこういう考えを持っているに過ぎないと考えていってもらいたい。

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