見出し画像

現代人の栄養摂取について

 これだけ豊富な食材が身の周りに出回っていながら、現代人の「食と健康」事情は決して良好な状況ではない。どの世代にも共通するビタミンやミネラル不足。若い女性層に見られる「やせ」傾向。高齢者の低栄養。飽食の時代になっても、食と健康をめぐる課題は決して解決された問題ではない。いや逆に飽食の時代だからこそ、日常の食生活で「栄養バランス」を心がける必要性が高まっている。

■先進国で問題となっている「偏り」
 栄養不足と言えば、アフリカなど途上国のやせ細った子供たちの姿が思い浮ぶ。その連想する言葉も“饑餓”や“栄養失調”をイメージしがちだ。その結果、日本のような先進国では、もはや栄養不足の問題は存在しないかように思っている人が多いかもしれないが、実は、そうしたイメージは全くの誤りだ。

栄養不足には二つの側面がある。ひとつはアフリカで見られるような、そもそも食べ物の量が足りない饑餓。もうひとつは、食べ物は豊富に出回っているのに、健康を維持できていない「栄養の偏り」だ。先進国で問題になっているのは栄養の偏り、もしくは特定の栄養素が足りないアンバランスな栄養摂取である。
 そうした現代人のかかえる問題点は「国民健康・栄養調査結果」(厚生労働省2014年)を見ても明らかだ。現代人は毎日、いろいろなものを食べているので、どの栄養素も満ち足りているように見えるが、実は全く違う。

2014年国民健康・栄養調査)
 体の調子を整えるのに必要なビタミン・ミネラルの補給に欠かせない野菜の摂取量を見てみよう。同栄養調査によると、1日の野菜摂取量の平均値は男性が約300グラム、女性が285グラムだが、摂取量を年齢層別に見てみると、最も少ないのが20歳代の女性たちの約239グラムである。20歳代の男性も約237グラムで少なく、男女とも若い世代で野菜の摂取不足が目立つ。

 しかし、栄養素のビタミンやミネラルに着目すると、若い世代に限らず、中高年世代でも問題がある。学術誌「医と食」副編集長で管理栄養士の平川あずささんによると、20歳代~40歳代の男女におおむね共通して、鉄やマグネシウムなどのミネラル、ビタミン類、食物繊維が不足しているという。平川さんは「ビタミンで望ましい量に達しているのはナイアシンくらいです。個人的には栄養素の多い玄米もお勧めですが、現代人はもっと野菜、果物、大豆類、魚、肉など多様なものをバランスよく取る必要があります」と指摘する。
 よく「健康長寿には粗食がよい」といったことがいわれるが、この説には科学的な根拠が乏しい。東京都健康長寿医療センターの報告によると、肉や魚など良質なたんぱく質をとっている人ほど長生きの傾向がある。低栄養では筋肉や血管がもろくなり、免疫力も低下する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?