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史上最高のサマータイムアルバム『Endless Summer(2001)』 / fennesz

個人的な生涯ベストアルバムの1つであるフェネスの『endless summer(2001)』について、まだ聴いたことのないあなたのために紹介したい。

私が洋楽雑誌を買い始めたのがちょうど2001年頃で、具体的には『CROSSBEAT』と『rockin'on』を読んでいたのだが、その手の音楽雑誌は年に一度、年末か年度末に、音楽ライターたちがそれぞれの年間ベストアルバムを10位ぐらいまでランキング形式で発表するコーナーがあった。

そして2001年当時、ほとんどの音楽ライターたちがランキングで1位に選出していたのが『endless summer / fennesz』だった。

やっと「レディオヘッド」という名前を覚えたぐらいの、エレクトロニカのエの字も知らない当時の私は、レビュー文に出てくる「アンビエント」とか「グリッチノイズ」とか「フォークトロニカ」といったテクニカルタームに圧倒されっぱなしで、「玄人には良さがわかる感じの凄いアルバムなんだなぁ」ぐらいでそのレビューを読み流した。

ジョン・ゾーンを語れるぐらい音楽オタクっぷりが鼻に付いてきたその2年後ぐらいに、「ああそういえばあのアルバムみんな絶賛してたな」と何の気なしに『endless summer(2001)』を買って聴いてみたら、それまで聴いてきたどんな音楽アルバムよりも、その後に聴いたどんな音楽アルバムよりも、衝撃を受けた。

「こんな美しい音楽がこの世にあるのか」と。

過ぎゆく夏の情景を見事に音像化したこのアルバムは、フォークとエレクトロニカとノイズミュージックの見事なフュージョンであり、それが「このアルバムにしか使われない」前述の「フォークトロニカ」というバズワードの語源である。
2024年現在もまったく古くならない音楽史に燦然と輝く大名盤であり、インテリジェンスに溢れ、ノスタルジックでメロウでチルで、もう圧巻の内容である。


Endless Summer


Caecilia


Shisheido


余談だが、この『endless summer(2001)』について、2006年ごろから「デラックス・エディション」なる夕景写真のジャケットデザインのものが流通し始めていて、各種配信サービス(もちろん貼り付けているSpotifyでも)でもそのデザインがカバーアートとして使用されているのだが、そのジャケットデザインがシンプル過ぎてちょっと残念だなーと思っている。

『endless summer(2001)』の魅力はもちろんその夕景を喚起させる美しさなのだが、最大の個性は美しさの中にある「グリッチノイズの毒気」であり、オリジナル盤のジャケットデザイン(この記事の見出しの画像)にみられる雑多なフォトモンタージュ感はそのノイジーさを見事に表現している。
けれどその魅力が新しいジャケットデザインでは視覚的にあまり表現されていなくて、なんだか「癒しの水の音」とか「焚き火の音」的なヒーリングアルバムのジャケットデザインみたいになっちゃってて、その感じで食わず嫌いしてる人がいたらもったいないなーと思う。

改めて本来のオリジナルのジャケットデザインをイメージしながら自室のヘッドフォンで、夕暮れの浜辺で、ぜひ聴いてみてほしい。少し違った印象になるかもしれない。

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