数十年の取り返し
勉強はできた方かと尋ねられれば、即座にノーと答える。
勉強はしてきたかと尋ねられれば、これも即座にノーと答える。
学生時代、勉強が嫌いだった。
親には勉強しなさいと言われた記憶はないが、その代わり宿題をしていたら必ず隣に母親がいた。
すぐに泣く子だった。今もそのまんまだ。出来ないと悔しくて泣く。変わらず毎日泣いていた。泣きながら宿題をしていた。
勉強のできる姉と、地頭が賢い兄。私たちは幼かった。姉と兄は私のその姿をくすくすと笑っていた。それもまた悔しかった。
なんであんなに勉強ができなかったのかと問われれば、わからない。けれど、何も考えずに授業を聞き、聞いているだけで脳には入っていなかった。昔のことを思い出して「なんであの時先生に質問する勇気が出なかったのだろう」とつくづく悲しくなる。
上手く立ち回れたはずなのに、なんて思う。
全てのトラウマが、私の勉強嫌いと全て辻褄が合う。
大人になってから、読書をするようになった。
姉からは「昔から本は読んでいたでしょう」と言われた。けれどそれはあれだ、格好つけたかったからにすぎない。
学生時代の無知を取り返そうとしている。
何にも興味を示さず、ただ毎日、寝て、食べて、起きて、学校へ行く、そして家に帰って、の繰り返し。
何にも興味がなかったのだと思う。
勉強もそれである。
大人になってから、なぜこんなにも何かを得ようと本を読んでいるのか私にはわからない。
けれど、本は、私が先生に、大人に聞けなかった全てを優しく教えてくれる。
0から全部。なんなら、マイナスから教えてくれる。
何も学ばず、何にも興味を示さず、ただ毎日をやり過ごしていた幼少期。
今は活字が教えてくれる。
私の先生。
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