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New Spaceの”収穫期”到来 : 近年 宇宙スタートアップが達成したこと
この記事は…
◆筆者:宇宙輸送(ロケット)のスタートアップで働いている人
◆対象:宇宙産業のトレンドを知りたい方
◆内容:2023年からの新興企業による達成事項の一例を紹介
◆狙い:民間の活動という目線で各ニュースをみてもらう人を増やすこと
※宇宙ビジネスに関するnote記事を毎月投稿する「#まいつき宇宙ビジネス」シリーズ:2024年2月分
はじめに
最近、ますます宇宙関連のニュースを耳にすることが多くなってきたと思いませんか? 少なくとも私個人の感覚としてはそう感じています。
日本中の注目を浴びたSLIMの月面着陸は記憶に新しいですが、(記事執筆時点の直前)2024年2月23日朝(日本時間)にアメリカのスタートアップ企業による「民間初」の月面着陸が達成されました。
このように、これまでの政府による宇宙開発に加えて民間の新興企業に関するニュースが続々と出てきていることが、全体的に多くなってきたと感じる要因だと思います。
スタートップといった新興企業の台頭やそれらによる価格破壊や新しいビジネスモデルが起こす宇宙業界の変化を”New Space”と表現することが多いですが、そのNew Spaceにてこれまで撒かれてきた種が育ちそれを成果として現れてくるフェーズ、つまり”収穫期”に昨年ごろから入ったと私はみています。
この記事ではほんの一例ながら実際のケースを挙げていきます。
なぜこのタイミング?
まず、なぜこのタイミングか?ということを少しだけ考えてみます。
明確な答えはないのですが、資本市場から宇宙セクターへの投資の流入時期は無関係ではないでしょう。
以下のグラフは、宇宙関連のインフラストラクチャ(宇宙ベースのアセットを製造・打上げ・運用するためのハードウェアとソフトウェア)への投資金額の推移を示したものですが、2020年から大きく増え、2021年にさらに増加したことがわかります(その後マクロトレンドもあり一旦減少に)。
![](https://assets.st-note.com/img/1708844836760-6xHmxBBQ4Z.png?width=800)
(衛星やロケット等の)宇宙機の開発は、政府系のミッションであれば10年とか普通にかけますが、スタートアップに要求されるスピード感では、初号機をつくるの時間は「3〜5年」が一般的ではないでしょうか。
この2つの要素を掛け合わせると、2023年から成果を出してくるスタートアップが増えるのはごく自然な成り行きだと感じます。
ケース1:月面輸送
最初に一番分かりやすい「月面輸送」をご紹介します。
2023年から2024年にかけて、月面輸送が大いに盛り上がりました。
ispace / Hakuto-R :日本(2023年4月)
Roscosmos / Luna-25 :ロシア(2023年8月)
ISRO / Chandrayaan-3 :インド(2023年8月)
Astrobotic / Peregrine :アメリカ(2024年1月)
JAXA / SLIM :日本(2024年1月)
Intuitive Machines / Nova-C :アメリカ(2024年2月)
太字が民間企業、いずれもスタートアップです。
ロシアや日本といった人類の宇宙開発の歴史を作ってきた国の政府ミッションと並んで、民間の新興企業が果敢に挑戦し、ついにIntuitive Machinesが民間初の月面着陸を達成したことは本当に素晴らしい快挙ですし、Space XがFalcon 1で民間初のロケット軌道投入やCrew-Dragonによる民間初の有人輸送を達成したと同じくらいのインパクトを感じました。
ケース2:ロケット
ロケットの領域でも、民間の積極的な挑戦がみられます。
アメリカのRelativity Spaceは3Dプリンタを多用したロケットで、メタンを燃料に採用した先進的な Terran 1 を打ち上げました(2023年)。結果軌道投入まではいかなかったことと、より大型のTerran Rに計画を移行し3Dプリンタの活用比率を減らすという判断に繋がるのですが、十分な成果と言えると思います。
その後、中国のLandspaceが、官民両方において世界初となるメタン燃料を使ったエンジンでの軌道投入に成功を Zhuque-2(朱雀2号)で達成しました(2023年7月)。
なお、こちらは来月の話ですが、日本でもスペースワンの「カイロス」の初打上げが予定されており(資本構成上 厳密にはスタートアップとは言えない会社ですが)、政府系ロケットしかなかった日本にも新しい風が吹こうとしています。
ケース3:リエントリ回収
個人的に注目していた アメリカの Varda Space Industiesのカプセルリエントリ回収成功(2024年)も紹介させてください。
民間初という意味ではSpaceX等が達成していると言えますが、Vardaのような比較的小さなスタートアップが地球低軌道からのリエントリ回収技術を実証したことは素晴らしい成果です。
当初は2023年夏頃にもリエントリを行う予定のところ、FAAからの許認可取得の関係で遅れていましたが、これも許認可がボトルネックになるくらい先端的な商業活動であることを示していると言えます。
まとめ
SpaceXのようなジャイアントが切り開く新しい世界にもワクワクさせられますが、その後に続く・もしくは新しい領域で成果を残す新興企業が続いていくのも心躍りますよね。まだ時間はかかりそうですが、商業宇宙ステーションのような大きな”果実”も控えています。
今回紹介したのはほんの一例ですし、収穫期は始まったばかりです。
これからますます民間初の話題が増えていきますので、政府系のミッションとはまた違った目線で今の時代ならではの宇宙開発(宇宙ビジネス)を楽しんでいけたらと思います。
Written by Genryo Kanno : https://genryo.space/
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