源ちゃん牛丼を買いに行く
浅草の寄席の帰りには腹が減る。家に帰って何か食べたいのだが、迷ってしまう。駅を降り家路につくその方らわらに、我らが牛丼屋が手招きをしているような錯覚に陥る。
牛丼。肉と米をバランスよく食べたい。今日は多くない寄席の割が手元にある。牛丼を買うには十分な金額だ。なんなら、野菜をつけてもいい。牛丼屋はドレッシングも豊富で、特にフレンチドレッシングは好みだ。そうこう悩んでいると足は勝手に牛丼屋へ向かっている。
駅の改札おり、右手に曲がり、目の前に噴水があるターミナルを横目に見ながら、さらにずんずん進んでいく、駅前から商店街の入り口へひたすらまっすぐ進み、途中ドーナッツの誘惑を振り払いながら、さらに進む。串カツの旦那がこちらを見る。
まてまて、今日の割はそんなにないぞ。旦那の店が安いのはわかっているが、今日のお客様は挑戦的な方々で、たじたじな状況、いっそのこと日本酒と串カツなんて最高だともわかっている。だがまてまて、今日は腹が減っている。牛丼屋の手招きにどうしても向かってしまう。
うううううう、心で唸りがながら、酒の誘惑を振り切り、なんならワンカップがあるじゃないかと自分に言い聞かせながら、割の額を再度計算。牛丼、サラダにワンカップを2本でも行けるぞといい聞かせている自分がいる
串カツの旦那の視線をかいぐぐり、さらに、どういうわけかなじみからLINEがくる。寄席の近くで飲んでいるから来ないか。おせーよと思いながら、丁寧に返す
牛丼屋の道のりはだいぶ遠い。日ごろ散歩している1万歩ぐらいの感覚だ。気を取り直して、視線を上げて、牛丼屋めがけて進む。まっていろ、牛丼屋、そして俺の牛丼。
なんなら半熟卵もつけてやる。ポケットに忍ばせている小銭が早く券売機に俺らを入れろと言わんばかりにじゃらじゃらと音を立てている。歩くスピードが徐々に速まっているのが風の音でわかる。
さぁゴールはすぐそこ、牛丼が微笑んでいるさまが目にうかぶ。
まってろよ俺の牛丼