玄妙臨書展「古典漫遊」シリーズ
書を習い始めて以来、私、玄妙は中国と日本の歴史に残る名碑名帖を臨書し続けてきました。
この度、2021年から2023年にかけて開催した「古典漫遊」シリーズで発表した作品70点を一挙公開いたします。
本展は、単なる作品展にとどまらず、私の書道人生の軌跡を辿るものです。
中国から日本へと、時代とともに変化していく文字の美しさを、臨書作品を通してご堪能いただけます。
書家 玄妙の歩みを、歴史と共にある書の軌跡としてご鑑賞ください。
⬇️ 下記の表は、中国・日本の書の歴史年表です。(写真は手本を一部分抜粋しています)
「古典漫遊」シリーズは、この年表に沿って、その時代の碑帖の説明文と臨書作品を公開しています。
「琵琶行」白居易
琵琶行序 元和十年、予左遷九江郡司馬。明年秋、送客浦口、聞舟中夜彈琵琶者。聽其音、錚錚然有京都聲。問其人、本長安倡女、嘗學琵琶於穆・曹二善才、年長色衰、委身爲賈人婦。遂命酒、快彈數曲。曲罷、憫默、自敍少小時歡樂事、今漂淪憔悴、轉徙於江湖間。予出官二年、恬然自安、感斯人言、是夕始覺有遷謫意。因爲長句,歌以贈之。凡六百一十二言、命曰琵琶行。
<読み下し>
琵琶行序 和十年、予、九江郡の司馬に左遷さる。明年秋、客を浦口に送る。
舟中に夜琵琶を彈く者を聞く。其の音を聽くに、錚錚然として京都の聲有り。
其の人に問へば、本、長安の倡女にて、嘗て琵琶を穆曹の二善才に學ぶ。
年長け色衰へ、身を委ねて賈人の婦と爲る、と。遂に酒を命じ、快く數曲を彈かしむ。曲罷り、憫默として、自ら敍ぶ、少小時の歡樂の事、今漂淪憔悴し、江湖の間を轉徙するを。予官を出づること二年、恬然として自ら安んぜしも、斯の人の言に感じ、是の夕べ始めて遷謫の意有るを覺ゆ。因りて長句を爲し、歌ひて以て之に贈る。凡そ六百一十二言、命づけて『琵琶行』と曰ふ。
<現代語訳>
琵琶行序 和10年、私は九江郡の司馬という役所に左遷された。翌年の秋、友達を湓浦の渡し場で見送った時、船の中から夜中に琵琶を弾く音が聞こえてきた。その音は澄みきっていて、田舎の風景に似合わない、都会的な響きだった。誰かが弾いているのかと尋ねると、その人は長安出身の遊女で、穆と曹という二人の名人に琵琶を習ったと言った。しかし、今は年を取り、容姿も衰え、商人の妻になっているという。そこで酒を頼み、その女性に何曲か弾いてもらった。演奏が終わると、彼女は物憂げな表情で、若かりし頃の楽しい日々や、今は流れてさまよっている寂しい境遇について話し始めた。私は地方に赴任して2年、心の平安を得ていたつもりだったが、この女性の話を聞いて、初めて自分の左遷された身の上を意識した。そこで、この女性のために長い詩を作り、贈ることにした。この詩は全部で612文字あり、『琵琶行』と名付けた。
・玄妙個展2021「古典漫遊〜文字の変遷をたどる〜中国編」
・玄妙個展2022「古典漫遊 中国書法から日本の書まで文字の変遷をたどる」
・玄妙個展2023「古典漫遊 中国書法から日本の書まで文字の変遷をたどる」