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自然資本とコモンズ(1):自然資本とは何か? by 長坂健司(GEN事務局)

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 社有林等の森林は、企業のサステナブル経営に重要な役割を果たします。企業は資本を用いて収益を上げる活動をします。それを参考に、森林などの自然環境を資本の1つとみなして、世界が直面している環境課題に対してそこから生まれる各種サービスを継続的に用いていこうとする考え方が広がってきました。
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 前回、社有林と企業経営との関係を紹介しました。企業にとって社有林は、木材の供給源であるだけでなく、コーポレートブランドの価値向上に役立っています。

 また、東京証券取引所がカーボン・クレジット市場を開設したというニュースも紹介しました。それに関連した最近の報道で、経済産業省が2025年に提出を予定しているグリーントランスフォーメーション推進法の改正案として「政府は総額20兆円の脱炭素支援をてこに企業に排出量取引制度への参加を求める。企業が自ら判断している現状に対し、政府の支援を受ける要件にして実効性を高める。温暖化ガスの排出削減で業種別の指針をつくり、それに基づく目標を達成できない企業には指導や勧告を検討する。」と報じています(2024年1月12日日本経済新聞電子版)。脱炭素の方法には、森林による炭素固定以外にもいろいろありますが、ここまでくると、企業の一ブランド戦略というよりも企業経営の根幹に関わるテーマとして、地球規模の環境課題に対する取り組みが求められる状況になりました。ちなみに、このような方針の経営のあり方は、サステナブル経営と呼ばれます。また、このような経営を行う企業に対して金融機関が実施する投資や融資はサステナブル投融資といわれます。

 さて、企業経営にとって事業経営の元手である「資本」は重要です。企業の規模を見る時に資本金の額を参考にすることがよくあります。企業とは、ストックである「資本」を使って、フローである「利益」を得る、という仕組みであるということもできます。実は最近、この「資本」に「自然」をくっつけた「自然資本」という語が注目されています。環境省のウェブサイトによると、自然資本とは、「森林、土壌、水、大気、生物資源など、自然によって形成される資本(ストック)のことで、自然資本から生み出されるフローを生態系サービスとして捉えることができます。自然資本の価値を適切に評価し、管理していくことが、国民の生活を安定させ、企業の経営の持続可能性を高めることにつながると考えられます」とあります。

 下の図で示す通り、サステナブル経営の実施のためには、この自然資本をうまく維持管理し、サービスの安定的な供給につなげることが重要であるといえます。


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