森と人とビジネスと(5):スマート林業 by 長坂健司(GEN事務局)
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ITによって、林業も「スマート林業」にバージョンアップしようとしています。今回はその一例として「林業×楽器」について考えてみました。
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日本国内で林業が注目されています。林業は古くから建材だけでなくエネルギーの供給の役割を果たしてきましたが、前者は輸入材に、後者はガスに置き換わったことで、しばらく注目されていませんでした。それどころか、林業の主な対象であるスギが花粉症の原因の一つであることから、林業そのものに対するイメージは、ネガティブなものに変わってしまいました。
ところが最近、そのような林業に対する一方的なマイナスイメージが払拭されつつあります。そのきっかけの一つがITです。例えば、フォレストEXPOと呼ばれる展示会がオンラインで開催中ですが、そこでの押しは「スマート林業」。なんでもスマートを付ければいいというものではないのでしょうが、他産業と同様、林業もITをテコに大きく変わりつつあります。
この展示会には多くの企業が出展していますが、その中には、これまであまり林業のイメージがなかった企業もあります。例えば、ヤマハ発動機といえばバイクや船外機のイメージが強いと思いますが、実は、他にもいろいろ製造しています。その中の一つが無人ヘリコプターです。ドローンが一般化されるよりもずっと前から、ヤマハ発動機はこの事業を続けてきました。これまで主に農業用に使われてきましたが、今では「スマート林業」の一翼を担う役割を果たしています。
どのような形で使われているのかについては、動画「奏でる森を育むために」をご覧ください。ヤマハ発動機の母体である楽器のヤマハとうまくコラボしています。ピアノやバイオリンには木材が欠かせないのですが、ゆっくりと時間をかけて育った木が必要です。百年先のことを考えて森を再生する事業に、スマート林業が一役買うというのは、ちょっと面白い組み合わせだと思います。
ちなみに楽器のヤマハの本社のある浜松は、林業が盛んな天竜川の下流に位置します。世界的に有名な企業が、その出発点で林業と関わりがあり、今、再びその絆に注目しているという事実は、これからの森とビジネスとの関係を考える上で興味深いテーマだなと感じています。