見出し画像

森と人とビジネスと(1)エネルギー源としての森林 by 長坂健司(GEN事務局)

======================
GENの活動は、森と人と共にありました。また近年では、SDGsの達成に向け、森に注目する企業が増えてきています。私の回では、森と人とビジネスの関係について考えてみます。
======================

私の専門は林政学です。森林の「林」と政治の「政」が組み合わさっているので、そういう分野の研究者だと思っていただくことが多いです。それで間違いではないのですが、実はもう少し幅広く、森と人(社会)とのインターフェイスを研究する分野だと思っています。森と人との関わりについて学ぶ分野としては、林業の収益性向上を目指す森林経理学や森林利用学もありますが、林政学は、より広い視野で考える分野です。
ここで収益性ということで、ビジネスの側面がでてきます。林業は、自動車産業や鉄鋼業と同じビジネスです。森とビジネスは対立する関係でしばしば捉えられてますが、実際のインターフェイスはもう少し複雑です。林業は木材を供給することから、その川下には多くの企業が存在します。昔から関わりがあるのは、住宅産業や製紙業です。王子ホールディングスや日本製紙が日本有数の山林所有者であることをご存じの方もいらっしゃるでしょう。これらの業界にとって、森はなくてはならない存在であると言えます。また、近年では、アマゾンやアップルといったIT系の大企業が森林を購入しています。これら企業の投資は、原材料を確保することとはまったく違う文脈で実施されています。
今、皆さんの周りで話題となっている分野としては、エネルギー産業が挙げられるでしょう。エネルギー供給源として森林が果たす役割に再び注目が集まっています。森は、古くからエネルギー源として地域社会にとってなくてはならない存在でした。GENのスタディツアーに参加した経験のある方であれば、その道中で必ず聞いた話だと思いますが、大同の森林の再生を妨げていたのは、過剰な放牧と薪炭利用でした。前者も後者も、山が地域住民にとってほとんど費用をかけずに利用でき、代替するものもなかったことが原因です。ところが現在、大同で、薪炭を主要な燃料に使っている農家はあまり多くないはずです。また、そもそも農家の数が大きく減っているということもあり、燃料源としての森の役割は、大同ではかなり低下したと言ってよいと思います。
 日本では逆です。木材は再生可能エネルギー源として、大いに注目されています。今、世界中で挑戦が続いているエネルギー転換のあり方は、京大の森先生によると「デジタル化された再生可能エネルギーを主力とする分散型供給システムへの転換(日本経済新聞2022年7月21日朝刊)」であるべきとされていますが、木質バイオマスは「デジタル化」を除けばおおよそ合っていると言えそうです。しかし、その内容をよく見ていくと、木質バイオマスの現状が必ずしも良いとばかりは言えないようです。
このあたりを出発点として、話を進めていきたいと思います。(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?