見出し画像

黄土高原の作物と料理(2/2 ヒマワリ・マメ編) by 前中久行(GEN代表)

======================
 黄土高原の作物とその料理について、今回はヒマワリと豆編です。ヒマワリは実は大切な作物なのです。伝統的日常料理の名称、形状、調理方法は多様です。しかし、素材をたどると多くは大豆とジャガイモに行き着きます。単純な材料から工夫して調理した料理を現地では「豆宴会」と表現して、その技と文化を誇っています。
======================
 黄土高原の夏の風景として目を引くのは、ヒマワリとジャガイモの花です。
 近年、日本列島でも各地で景観形成を目的にヒマワリが植えられていますが、中国におけるヒマワリは主に油糧作物としての栽培です(写真)。

日本でも油糧作物としてのヒマワリ栽培は行われています。学生時代に遺伝育種学の課題として与えられたのがヒマワリの改良史についての論文紹介でした。北アメリカの先住民集落のゴミ捨て場に生えていた小型の植物がスペインを経てロシアに伝わり品種改良されて現在の巨大なヒマワリに変身したというような内容でした。最近は目的とする油成分を多く含む品種改良まで進んでいます。
 中国の人たちはヒマワリの種をスナックとして囓っています。「美味しいですよ」とすすめてくれるのですが、私は皮と実をうまく囓り分けることができず皮まで食べてしまいます。
 
 ジャガイモ畑も目につきます。白い花が沢山咲いています。花の後にはプチトマトそっくりの果実ができます(写真)。

ジャガイモの芋に光があたると緑色に変色して有毒になります。ジャガイモの果実もきっと有毒です。大阪近辺でもジャガイモの花が咲くことはありますが黄土高原の花数が圧倒的に多いのです。黄土高原は緯度の高いところにあり夏の日長時間が長いのでその影響と思われます。
 ジャガイモの現地料理を一つ取り上げるとすれば私は「炒土豆絲」を紹介します。見かけは麵料理そっくりです。ジャガイモを細長く千切りにして軽く炒めただけの料理です。サラダをたべているようなジャガイモに残る半生感がとても美味しいのです。本来は家庭料理ですが、星付きホテルでも供されています。ジャガイモデンプンを経た加工食品も種々あります。冷菜として食される「涼粉」がその代表です。ゼラチンや寒天のような食感です。
 
 大豆の起源地は東アジアです。原種のツルマメは日本列島にも自生しています。大同市や蔚県では大豆の栽培を目にすることは少ないのです。現在の中国は大豆の大輸入国です。国内産量の8倍くらいを輸入しています。食用、油用、飼料用に多量の国内需要があるのです。
 当地での栽培は少ないのですが、料理の材料として大豆の利用量は圧倒的です。朝食時の豆乳「豆浆」から始まり、豆乳の加工品である湯葉や豆腐、豆腐も堅さや形が色々です。たとえば「豆腐皮」は薄い平面状で、これでネギや炒め肉を包んで食べます。さらに豆腐に手をくわえた乾燥豆腐「干豆腐」、高野豆腐「凍豆腐」、油揚げ「油豆腐」など。乾燥豆腐は蔚県の名物で、ラッパの音とともに「ガンドーフ」と行商が売り回っています。
 大豆は調味料としての「醤」の原料でもあります。豆乳を絞った後のおからの料理をみたことはありません。あくまでも家畜の飼料ということでしょう。
 食卓に並ぶ多種多様な料理の元をたどると多くは大豆にいきつきます。さらに、黄土高原の地域ではジャガイモを「土豆」とも呼びます。地中にできる豆というような認識でジャガイモの大切さが表現されているのでしょう。これを含めると食堂のメニューは豆、豆、豆……(写真)。郷土料理メニューの三~四分の一に豆の字が含まれています。写真はコロナ感染症以前の2015年のものなので料理価格は現在とは差があるかと思いますが、私が推奨する「土豆絲」は10元と最も安価な料理です。これを逆手にとって「豆宴会」と宣伝しているお店もあります。看板には大豆を臼で引いて豆乳にする、さらにその後の様々な加工工程が描かれています(写真)。
 


 大同市や蔚県は歴史遺産を大切にして伝統料理の技法継承にも積極的です。それらは緑化ツアーをさらに楽しいものにします。コロナ感染症が早く落ち着いて緑化ツアーが再開できることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?