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生物多様性と私たちの暮らし by 小倉亜紗美(GEN世話人、呉工業高等専門学校准教授)

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生物多様性と私たちの暮らしにどんな関係があるのか?なかなか難しい言葉なのでイメージしにくいかもしれません。でも新型コロナウイルスの感染拡大も生物多様性の低下が関係していると指摘されています。では、生物多様性を守るために私たちに何が出来るのか考えたいと思います。
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 呉工業高等専門学校の小倉亜紗美です。
私の前回のエッセイではGENの平和への貢献について書きました。
今回はGENの活動とも関係深い生物多様性と私たちの暮らしの繋がりについて考えてみたいと思います。

 WWF(世界自然保護基金)の「生きている地球レポート2022」が発表されました(https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5153.html)。このレポートでは、自然と生物多様性の健全性を測る「指標生きている地球指数」が1970 年から69%低下したと報告しています。では、この生物多様性の喪失は私たちの暮らしとどのような繋がりがあるのでしょうか。

 2019年の年末に発生が確認されあっという間に私たちの生活を一変させた新型コロナウイルスの感染拡大にも生物多様性の損失が関係していることが最近の研究で指摘されています。「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」には、“国連環境計画(UNEP)の「Six nature facts related to coronaviruses」によれば、人獣共通感染症の多くのケースでその発生の要因となっているのが、人間活動がもたらす環境の変化とされ、人為的な環境改変によって野生生物の生息域が縮小し、生物多様性を減少させ、その結果、特定の病原体及び宿主動物や媒介生物にとって有利な環境状態をもたらすことになると述べている”と紹介されています(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21010101.html)。

 つまり、生物多様性を高めることは、私たちの暮らしを守ることに繋がるのです。
しかし、生物多様性を高めると言っても、何をどうしたらよいのか、市民として出来ることがあるのだろうかと、頭の中に?マークが浮かんだ方も多いかもしれません。
生物多様性とは、様々な生物とそれらの住む自然環境のことですので、まずそれを知ることから始めることが大切です。

 GENで開催している自然観察会はその第一歩、「知る」ために重要な取り組みです。しかも自然の中に身を置くことで、生態系サービスの一つ、きれいな空気を吸い、リフレッシュをすることもできます。これらも生物多様性の恵みの一つです。

 2013年に出版された「里山資本主義」(作:藻谷浩介・NHK広島取材班、角川書店)という本には、私の住む広島県の中山間地域には、里山からの恵みが多くあり、都会に比べて年収は低いかもしれないけれど、里山からの恵みのお陰で都会よりも豊かな生活を送ることが出来ているということが紹介されていました。このように、視点を変えてみると、これまで見えなかった生物多様性の価値が浮かび上がってきます。

 それを、もっと可視化し、優れた取組を広めるため広島県では、「ひろしま里山グッドアワード(https://good-award.jp/about/)」が開催され、広島県内の中山間地域にあるものを活かして新しい価値の創造につなげている優れた取組を表彰しています。

 私の大学の研究室の後輩たちが関わるNPO法人三段峡―太田川流域研究会、通称「さんけん」さんは2019年度に「さとやま未来大賞」を受賞しています。学生さんたちも関わり、「原色広島三段峡図鑑(https://zukan.sandankyo.online/)」というオンラインの生物図鑑を作成し公開しています。

 上記の図鑑を眺めてみて、「本物を見てみたい!」と自然の中に足を運ぶことこそが、生物多様性を高める第一歩かもしれません。

 生物多様性と私たちの暮らし(特に日本酒との関係)について、詳しく知りたいという方は2021年10月2日にオンラインで実施したGENなんでも勉強会「お酒とわたしたちの生活を守る仕組みづくり」(https://www.youtube.com/watch?v=t2SPd44AA0g&t=35s)をご覧ください!
日本酒を飲むことで生物多様性に貢献できる夢のような(?)仕組みについてお話しています。

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