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世界の森林と日本の森林(その1)by 立花吉茂

はじめに
 地球の緑が減ってピンチの状態になっている、という話はよく耳にするが、本当にそうなのだろうか? いったいどれだけの森林が世界にあるのだろう。そして、それがどのくらい減ってきたのだろう? 森林の量とともに森林の質はどうなっているのだろう? なぜ木を植えなければならないのだろう? などなど、ちょっとまじめに考えてみよう。
 
世界の森林の分布
 「森林」は乾燥した土地には成立しない。だから雨が多くて暖かい地方に発達する。熱帯の多湿地方には熱帯雨林ができ、日本の南部のような暖かい温帯には常緑樹林ができ、すこし寒い地方には落葉樹林が、そして寒い地方には針葉樹林ができる。もっと寒くなると水分があっても高い木は育たずにツンドラになってしまう。
 雨の少ない地方は暖かくても森林はできない。極端な場合には砂漠になってしまい、サバンナやステップと呼ばれる「草原」になる。草原は草だけの場合もあれば、低木が混じったり、低木だけの場合もある。寒くて乾燥した地方には当然ながら森林は成立しない。
 図1に世界の森林の分布図を示した。これを見ると、もともと世界に森林はそんなに多くないことがわかる。それはもともと、乾燥地が多いことを意味している。そんな少ない森林がどんどん切り倒されたり、焼き払われたりしているので、もう半分以上が失われた。
 


日本の森林
 日本は世界の先進国のなかで抜群に森林の多い国である。国が小さいから面積は少ないが、どこを見ても山には木が茂っている。
 そして、その種類数の多いことはとびぬけている。ヨーロッパ全土で100種あるか、ないかの程度なのに、この狭い日本には600種以上の高木が生えているのである。その原因は暖かくて雨が多いことにある。梅雨があって夏雨型の気候だからであり、冬があるにもかかわらず、常緑樹林が発達しているのは黒潮の影響も見逃せない。日本は全国的に1000ミリ以上の雨があるから、関東以西(南)には照葉樹林が、その北方には落葉樹林が、そして北海道の北東部には針葉樹林が発達していた。
 農耕を覚えたわれわれの祖先は、この森林を切り開いて、平坦部は農地に、その近くを里山として二次林を活用した。したがって、日本の自然林は大部分がなくなったのであるが、元の森林の種類は絶滅しなかった。それは20km四方に必ず存在する神社、仏閣に生き残っていたのである。この生き残りの種子が鳥たちに運ばれて、自然は復活するのである。だから日本の山には木を植えなくても緑がいっぱいあって、自然に復活して元の森林に戻ってゆく。しかし完全に復活するには300年以上かかる、と言われている。
(緑の地球46号(1996年5月)掲載分)


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