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森と人とビジネスと by 長坂健司

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書き手:長坂健司(GEN事務局) GENの活動は、森と人と共にありました。 近年ではSDGsの達成に向け、森に注目する企業が増えてきています。 ここでは、森と人とビジネスの関係に… もっと読む
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記事一覧

森と人とビジネスと(9):企業と森林 by 長坂健司(GEN事務局)

======================  SDGsの達成には企業の役割が重要であるといわれます。日本の林業において、企業の存在感や役割はどんな感じか、社有林の面積に注目して書きました。気候変動や水資源の確保といった課題に企業が果たすべき役割は多々あります。 ======================  SDGsの達成には企業の役割が重要とされています。企業側もそれは理解していて、SDGsの達成にどのように自社が貢献しているか、積極的にアピールしています。  林業でも

森と人とビジネスと(8):南の国の木造建築 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== 木材が腐るのには理由があります。それをしっかり管理すれば、高温多湿な東南アジアでも木造建築は建てられます。今回は、筆者がベトナムで感じたことを書きました。 ======================  7月下旬、ベトナム北部のハノイに居ました。少し時間があったので、現地の民族学博物館に行きました。  ベトナムには8割以上を占めるキン族を含む54の民族が住んでいます。これら民族を切り口に展示を行っているこの博物館は、屋外展示も充

森と人とビジネスと(7):製材工場 今昔 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== 林業だけでなく製材工程でも機械化が進んでいます。今回は、現代風の製材工場がどのような様子かを紹介します。 ======================  製材は、昔から世界中で行われていました。木材は建材として古くから使われてきたので、当然といえば当然です。下記のイラストは、中世ドイツの製材の様子ですが、このように人手で製材する時代が長く続きました。  機械による製材が日本で始まったのは19世紀半ばです。1861年に江戸幕府

森と人とビジネスと(6):機械化がすすむ林業 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== 日本の林業でも欧州の林業のような機械化が徐々に進んでいます。先日、本当に久しぶりに岡山県北部の伐採現場を見学しましたので、そこで見聞きしたことを紹介します。 ====================== 皆さんの持つ林業の現場のイメージはどのようなものでしょうか。木を切るのには力が必要、男性の職場じゃないの、と思われるかもしれませんが、今はそんなことはありません。女性もバリバリ働いています。そうなった理由の一つは、伐採現場の機械化

森と人とビジネスと(5):スマート林業 by 長坂健司(GEN事務局)

======================  ITによって、林業も「スマート林業」にバージョンアップしようとしています。今回はその一例として「林業×楽器」について考えてみました。 ======================  日本国内で林業が注目されています。林業は古くから建材だけでなくエネルギーの供給の役割を果たしてきましたが、前者は輸入材に、後者はガスに置き換わったことで、しばらく注目されていませんでした。それどころか、林業の主な対象であるスギが花粉症の原因の一つであ

森と人とビジネスと(4):総合的な知の必要性-NHKスペシャル 見えた 何が 永遠が~立花隆 最後の旅~を見て思ったこと by 長坂健司(GEN事務局)

======================  世の中が大きく変わっている現在、大学教育のあり方も再考を求められています。私は以前から「リベラルアーツ教育」に強い関心を持っていましたが、立花隆さんを取り上げたNスぺを見て、改めてそのことを考えてみました。 ======================  昨年2月に「ヨーロッパ 人の暮らしと森」と題して、ドイツで暮らすコンサルタントの山元さん、エストニアで暮らすマクロ生態学者の藤沼さんから、日常の暮らしのあり方やそれぞれの国での

森と人とビジネスと(3):日本における燃料材需要の推移 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== 木質バイオマスの需要の推移は、今後の日本における木材利用にとって重要です。近年の需要の増加は木質バイオマス発電や熱利用に由来します。発電所の規模は、収益性と燃料調達先の考え方が影響しています。 ======================  さて、木質バイオマスの利用は、日本全体の木材需要のうちどれだけのシェアを占めているのでしょうか。図は、1955年から2020年までの日本の木材需要の推移を示したものです。林野庁が毎年、森林・

森と人とビジネスと(2):木材のカスケード利用 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== GENの活動は、森と人と共にありました。近年ではSDGsの達成に向け、森に注目する企業が増えてきています。私の担当分では、森と人とビジネスの関係について考えてみます。 ======================  気候変動対策として、世界各地でエネルギー源の転換が行われています。例えば、発電用の燃料として一般的だった石炭、石油、天然ガス、原子力から、再生可能な風力、波力、地熱、太陽光、バイオマスに変えていこうとするものです。エ

森と人とビジネスと(1)エネルギー源としての森林 by 長坂健司(GEN事務局)

====================== GENの活動は、森と人と共にありました。また近年では、SDGsの達成に向け、森に注目する企業が増えてきています。私の回では、森と人とビジネスの関係について考えてみます。 ====================== 私の専門は林政学です。森林の「林」と政治の「政」が組み合わさっているので、そういう分野の研究者だと思っていただくことが多いです。それで間違いではないのですが、実はもう少し幅広く、森と人(社会)とのインターフェイスを研