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選択肢の少なさが集中をもたらす

在宅勤務と外出自粛が続いて、自宅で過ごす時間が以前よりもかなり長くなりました。最近、自宅にいる自分がどうにも集中を欠いた散漫な状態な気がして、その原因はなんだろう?と考えました。

一つ思いついた原因は、「自宅は選択肢が多すぎる環境だから」というものです。自宅は、他の場所に比べて自由度が高く、自分がやりたいなーと考えたことをすぐできる場所です。PCやスマホをいじる、寝る、筋トレする、料理をする、風呂に入る、本を読む、友人と電話をする、漫画を読む、掃除をする、ゲームをする。好きなことをできる一方、選択肢が多くて「何をやろう?」と考える機会も多くあります。

思うに、人間は選択肢が多い環境よりも、選択肢が少ない環境のほうがものごとに集中できるのではないでしょうか。ここ最近で、自分が何かに集中できた、と感じるとき、そこはたいてい選択肢が少ない環境でした。例として、映画館、職場、紙の本をあげてみます。

映画館

映画館は、選択肢が少ない場所です。「映画を観る」以外の選択肢は基本的に存在しません(「寝る」とか「トイレに行く」はまぁ例外ですが)。スマホをいじるとか、歩きまわって体を動かすとか、ふだんの日常生活で持っている選択肢のほとんどが封じられています。

この選択肢が少ない状況では、おのずと唯一の選択肢である「映画を観る」ことに集中せざるを得ません。ストーリーもキャラの心情も、頭に入りやすくなります。

個人的な実感ですが、映画館で映画を観ると、自宅で映画を見た時よりも充実した映画体験になることが多いです。大きなスクリーンや音響の影響もあるでしょうが、それ以上にこの「映画を観る」以外の選択肢がない状況で、集中して映画を観るから、映画の世界にがっつり没入できるのではないかと考えています。

職場

職場もまた、選択肢が少ない場所です。「仕事をする」以外の選択肢は基本的に存在しません。まぁひとくちに「仕事をする」と言っても、そこにはグラデーションがあって、「ダラダラ仕事する」「バリバリ仕事する」「マイペースで仕事する」など様々ですが、仕事以外に意識を割かれることが少ない環境にいることに変わりはありません。

これが自宅での在宅勤務になると、とたんに選択肢が増えます。常時監視されているのでなければ、多少は好きなことをできるようになります。「仕事をする」という選択肢に加えて、自宅で取りうる選択肢がすべて手の届く場所に来るわけです。

職場の先輩で「在宅勤務中に、ちょっと休憩しよっかなーと思ってたら、いつのまにかドラマを1話分見てしまっていた」なんて人がいました(先輩の名誉のために言っておくと、彼はめちゃくちゃ仕事ができる人です)。これは、職場では取り得ない選択肢です。このへんの意味でも、やはりやるべきこと(この場合では仕事)が決まっているのであれば、選択肢が少ない環境のほうが、自身のリソースを集中砲火できると言えそうです。

紙の本

これは物理的な場所ではないのでちょっと例外なのですが、選択肢の少なさを示す例になると考えたので書きます。

紙の本について語る前に、その対比として、スマホやタブレットで電子書籍を読む状況について考えてみます。スマホやタブレットは、極めて多機能で、言ってみれば選択肢の多いツールです。電子書籍を使って本を読んでいたとしても、常に他の選択肢がちらつきます。絶えず様々な通知が飛び込むうえに、ホームボタンを押して他のアプリを開けば、無限の選択肢が待っています。

スマホやタブレットは非常に便利で、自分もその便利さをめいっぱい活用して生活しているのですが「読書に集中する」目的を第一に考えたときには、極めて集中しにくい、騒々しいツールです。

いっぽうで、紙の本は「読む」以外の選択肢が少ないです。もちろん、「読むのをやめて他のことをする」選択肢は常にありますが、スマホが発する誘惑に比べたら微々たるものです。

紙の本を読むときは、電子書籍を読むときより集中して読める実感があります。電子書籍より目にやさしいとか、本を触るので五感が刺激されるとか、そのへんの理由もあるのでしょうが、それ以上にこの「選択肢の少なさ」が大きいのでは、と思います。

余談ですが、紙の本と電子書籍の対比については、以前に別サイトに記事を書きました。継続して考えていきたいテーマの一つです。

まとめ

選択肢の多さ/少なさと、集中の関係について考えてみました。少なくとも、上にあげた例について言えば、やはり選択肢の少なさが集中をもたらすと言えそうです。

人間は地球で一番賢い生き物ですが、実は意外と不器用なのかもしれません。「複数の物事に同時に集中する」なんてことはとても出来ず、選択肢がたくさんある環境では、注意散漫になるのが落ちです。

「自分が今、本当に集中すべきことが分かっている」という前提が必要になりますが、何かに集中して取り組むためには、あえて選択肢を削る、他の選択肢が視界に入らないようにする、といった工夫が有効でしょう。

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