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メルボルンのミュージックシーン(フェスティバル/野外パーティー)

前回の記事ではメルボルンのクラブ/バーにスポットを当て、メルボルンにおけるミュージックシーンについて書いた。
今回はオーストラリアの広大な土地を活かした野外で行われるパーティーシーンを振り返っていきたい。

メルボルンという街における外の空間とは

そもそもなぜメルボルンの人々は外で遊ぶ事を求めるのか。この街の特徴を僕なりに考察してみた。

・天気
メルボルンの天気を一言でいうならメンヘラです。ギラついた陽射しを浴びていたと思いきや、いきなり雨が降り出し、そして10分後には止む。昼間は半袖でも汗ばむが日が沈むと防寒具に身を包むまないといけないくらい風が強く寒くなったりする。降水量自体は東京の1/4くらいですが天気はコロコロ変わります。(そして雨の予報は外れやすい)
※余談ですがメルボルンには沢山のカフェがあり、バリスタで修行しにくる人もいる程。そしてそのカフェ文化が根付いたのは、変わりやすい天候が故に雨宿りをする場所としてお店が多くできたと聞きました

・太陽の長さ
メルボルンの夏は雲がほとんどない晴れが続くので太陽が長く出ている、そして反対に冬場は曇りがちで日がとても短い。その短さからくる寒さを知っているからこそ、どんどん日が長くなっていくにつれて街も活気が出てくるし、夜9時を回っても空が明るい環境は1日がとても長く感じ充実した日々を過ごす事ができるだろう。

・広大な土地
メルボルンはCBD(Central Business District)と呼ぼれる中心街(新宿駅から原宿駅程のサイズ)には近年の都市開発で高層ビルが聳えるが、CBDから10分でも外に出ればピクニックやバーベキューを楽しめるような公園が沢山存在する。(しかもほとんどの公園が代々木公園くらいの規模)
そして更に車で数十分も走れば、山、湖、牧場、農場が現れる。海に囲まれた日本では水平線を見ることが多かったが、この街のハイウェイから見た緑の地平線は美しかった。

・人と人との距離感。
メルボルンは東京の4倍程の面積だが人口は半分以下。つまり1人あたりのスペースがめちゃくちゃ広い。そして寛容でフレンドリーな国民性もあり、そもそものソーシャルディスタンスが十二分に確保されている。
メルボルンに来る前からオーストラリアが大きな国というのは理解していたつもりだが、土地はもちろんのこと人々の優しさや心の広さは想像以上だった。(メルボルンの人が特に優しいというのもあるかもしれない)


前置きが長くなったが、そんなメルボルンで行われるフェスティバルや野外パーティーについて以下記載する。

どのようなフェスがあるのか

メルボルンの人々は広大な自然を活かし、そもそもはブッシュパーティーという形で独自にサウンドシステムを持ち寄り山や海に集まって楽しんでいたが、この10年くらいでの法規制などでライセンスを持った大型フェスティバルが確立されてきた。そして、近年は他都市同様に都市型フェスが増えてきた。これは移民を積極的に受け入れ人口が増えた事と、メルボルンの都市とミュージックシーンが発達し人々が快適さを遊びに求め始めたからだと考えられる。

・野外フェス

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12月から4月くらいまで毎週のようにどこかで大きなフェスが郊外で開催される、キャンプ道具持参で2,3泊するお馴染みのスタイル。ジャンルはダンスミュージック(Disco/House/Techno/Psychedelic)やロック。
会場は森の中で行われる物もあるが、代表的なダンスミュージックフェスであるStrawberry FieldsPitch Music & ArtsInner VarnikaRainbow Serpentをはじめ多くのフェスは砂煙が舞いあがり、ジリジリと焼けるような太陽の下で行われる。
そんな正に土臭い環境で、人々の服装はバラエティに富んでおり、コスプレする人やヒッピー、エスニックから目のやり場に困るセクシーなお姉さんお兄さんもいます。
会場の規模はもちろんデカいです。そして携帯の電波は繋がりません。なので待ち合わせなどはできないし、はぐれたら終わります。
でもスマホが使えないというのは、音楽とその雰囲気を最大限に楽しむことに集中できる。そして何より毎日新しい出会いがどんどん生まれるし、そのフロアのエネルギーを共に感じて踊った後に彼らのテントで遊び、最後は「また明日フロアで会おう!」って感じで解散する。
電波の繋がならい場所で外部との関わりを絶ち、音楽や人との出会いからなるオーストラリアカルチャーをとことん楽しむ為の空間といったところでしょうか。

・都市型フェス

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メルボルンの都市型フェスは公園や巨大な倉庫を利用して行われることが多い。特にこの街は昔から工業が盛んである為、体育館クラスの倉庫が沢山あり、空き倉庫を改装してパーティー会場にしたりしている。
オーストラリアは地震が滅多に起きないのと、建物の外観を残す法律がある為、築年数は古いが保存状態が良い建物が沢山ある。
この元からある物を再利用していく文化は建物だけではなく、家具や車のような生活品も同様で、一つ一つの物が人から人へ渡り歴史や味を生み出していく。
肝心のパーティーの内容ですが、客層はクラブと大きくは変わりませんが、場所が倉庫の場合は音が回る感じで聞こえます。でもその普段は音楽用で使われてない場所でパーティーをしているDIY感がいい雰囲気を出していて、いまある場所と物を活用して遊び場を作り出すカルチャーを感じる事ができる。
他にも公園や空き地をうまく利用しているフェスも開催されるし、小規模な物であれば自分達で機材などを全て持ち込んでパーティーを行う事も全然できる(イリーガルになる場合もあります)

ラインナップ

驚いたのが、同じ海外アーティストやDJが連日や翌週にどんどんプレイすること。日本だと1アーティストは1都市1パーティーしかしない(契約上できない)場合が多いと思うが、この国では似たようなラインナップで複数のギグが行われたり、チケットも売上次第でパーティー自体がキャンセルになったりと忙しい。あと、ヘッドライナーが挿し変わったりしたのも幾つか見た。
なのでお目当てのアーティストがオーストラリアに来る際は、フェスで見るかクラブで見るかなどパーティーのラインナップを見比べて決める事もできなくはない。
世界からオーストラリアへの高額な渡航費や年々高騰していたアーティストのギャラは複数のパーティーでシェアすればいいという考えは合理的だし、アーティストマネジメント側からしてもせっかく遠くオーストラリアまで来てるんだから多くプレイさせて帰りたいだろう。(アーティスト自身はのんびりしたいと思う時もあるんだろうけど)

オーストラリアが抱える日本と同じ悩み

前述の通り、オーストラリアは南半球の島国なので、海外アーティストの渡航費だけでもかなり高額になってしまう。そしてこれは極東の日本も長年同じ問題に悩まされてきたことだと思う。
そう考えた際に、同じ島国である2つの国を南北で繋いでアーティストのブッキングを出来ないのかとずっと考えてきた。つまり、ヨーロッパ発日本経由オーストラリア行きのツアーだ。そうすれば、ブッキングでも提案の幅が広がるし、何より日本×オーストラリアのミュージックシーンの繋がりが強くなると思う。僕が育ってきた東京にも今を過ごすメルボルンにも素晴らしいローカルアーティストと箱があるわけだし、手を取り合わない理由はないと思う。東京/日本のアーティストをメルボルンへ、メルボルン/オーストラリアのアーティストを東京へ。そういった点と点を繋げる存在になる為に今後も活動を続けていきたい。

歴史ある外の空間

メルボルンならびにオーストラリアには先住民族のアボリジニから始まる、自然に感謝し、そのエネルギーを存分に浴びて、発散させる文化がはるか昔から根付いてきている。だからこそ、人々は少しでも晴れたら外に出て太陽、風を感じようとしている。

実際、僕はこの街に来てから散歩が趣味になった。芝生が広がり、子どもや犬が走りまわる緑豊かな公園。数世紀前から佇む大小様々なサイズのヴィクトリア建築やゴシック様式の教会。童話に出てきそうな可愛い形をした家が立ち並ぶ住宅街。昔からあるホテルや倉庫の外観を残しリノベーションして営業するバーやカフェ、レストラン。そしてその建物や路地裏に描かれる多彩なグラフィティ。

東京にいた時は新しく最先端の都市のあり方を見る事ができたが、メルボルンではただ歩いているだけで街の全てから歴史と、人々がその場所を愛し大切に残そうとしていることがわかる。

今回はメルボルンの外の空間と人々そしてミュージックシーンの関係をお伝えした。もし興味をもっていただき、オーストラリアのフェスに参加するならば、野外フェスで異文化を体感することを僕はオススメする。国境が開くのはまだまだ先になるかもしれないが、より自然と調和し成熟した素晴らしいパーティーが今後増えていくことだろう。

メルボルンは現在ロックダウンが解除され、街が元通りになりつつある。次回以降は街の様子や僕らの遊び場所を紹介できればと思います。
それではご機嫌よう。


Genki Tanaka
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