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経営に活かしたい先人の知恵…その9

◆危機的状況に陥らないために、いい状況の時に危機意識を持つ◆


 「安きにありて危きを忘れず、存続しつつも亡びることを忘れず、治に居ても乱を忘れない。こうあってこそ、その身は安らかで国家の安泰を保ち得るのである」(『易経』)

 これは孔子の発言とされているが、帝王学の書として知られる『貞観政要』にも、この言葉が複数回出てくる。組織を長く存続させるためには、いい状況の時にこそ、危機意識を持って、統治しないといけないということだろう。

 しかし、これほど難しいこともない。明君として名を残す太宗(唐二代目皇帝)でも、よい状況が続くと、気持ちに緩みが出てきたようで、それを諌める言葉として、『貞観政要』にも、度々出てくるのだ。

 孔子は、国家を安泰させる道として、「安きにありて……」と説いているが、これは企業組織も同じだ。経済環境がよく、業績のいい時期が続くと、どうしても気持ちが緩むし、現状に満足してしまいがちだ。しかし、いい状況がいつまでも続かないことは歴史が証明している。景気そのものが循環するだけでなく、自然災害、国際紛争等々の影響で経済環境は悪化する。

 私の70年余りの人生でも、記憶に残るだけで「1971年 ニクソン・ショック」「1973年 オイル・ショック」「1985年 プラザ合意後の円高不況」「1993年 バブル崩壊」「1995年 阪神、淡路大震災」「2008年 リーマン・ショック」「2011年 東日本大震災」「2020年からのコロナ禍」「2022年 ロシアのウクライナ侵攻」…今年早々には、能登半島で大きな地震があったばかりだ。

 いい状況の時に、これがいつまでも続くわけがないと考え、危機に備えて、体質を強くすることが、持続的発展を可能にすると、私は考えている。いい時に従業員のみなさんに危機意識を持たせることは本当に難しいが、コロナ禍の影響が残る今は、誰もがが危機意識を持っているはずだ。それだけに、今がチャンスだと考えて体質強化に取り組むべきだと、ご理解頂きたい。

 失われた30年の間でも、持続的に発展してきた企業は多くある。そうした企業に共通するのは、「いい時に慢心せずに次なる手を打ち、悪い時には悲観せずに改革に取り組む」姿勢にある。企業が危機的状況に陥らないために、いい時に危機意識を持つことが、何より大事だと考えている。


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