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僕vs社員リーダー・器が小さいのはどっちだ

勃発した日の夜は、【僕1:社員リーダー9】の割合で、器の小さい人間だと決めつけ、気持ちを保っていました…。

ある派遣バイトで勃発してしまった時の話。
その日は披露宴でお客さんを案内したり料理を運んだりする、ホールスタッフのバイトだった。
「明日集合場所が大阪になったから、チケット取って新幹線で○時までに向かって」
と前日夜に言われたりなど、これはだいぶ前且つ最も驚いた突発的スケジュールですが、こんな感じで唐突にスケジュールが入ってたりと、
まだ俳優業だけでは食べていけない僕にとって、単発で直前で入る事ができる派遣バイトは、生活のため本当にありがたい。

そんなある日のバイト。
披露宴でのスタッフバイトはじめてだった。
支給された制服を着て、その日の披露宴で働くバイト・社員さん全員で始めに朝礼が行われるため、披露宴会場である大ホールへ向かった。

【勃発まであと約6時間】


バイト、社員含め50人近くいた。
ホール内で整列していると、この披露宴の社員リーダーらしき方が前に現れ、本日の流れを説明しはじめた。
この社員リーダーと僕がのちに勃発してしまうことになる。

社員リーダー「えぇぁああガぁあ」

話し始めの一言目で、機嫌が悪いと分かってしまう言い方。
声で近くの小さな物体を壊したいような声の出し方。
最初はこの方の普段が、そう取られてしまうような話し方なのかも…と思ったが、それは15秒後くらいで違うと分かった。
途中途中、名指しで指示する他の社員さんへの言い方がもう説教してるようなトーン。そして説教口調をすることによって、自分のストレスを発散し、時折気持ちよくなってるようにも見える。
電車が大幅な遅延してる時に改札窓口で見かける、駅員さんに当たり散らしている中年サラリーマンに似ていた。
そして彼に言われている社員さんも、彼の顔色と場の空気を壊さないように、あからさまな愛想笑い。
さまざまな単発派遣バイトをしてきた中で、始業時間から機嫌悪い人はこれまでも出くわしたが、その中でもダントツでしかも最初からほぼトップギアで機嫌が悪そうな、この社員。
この時点で僕も機嫌が悪くなっており、彼が説明している間は、睨むような目で説明を聞いていた。

湿度90%くらいのジメっとした朝礼は終わり、次は100名ほどが来場する披露宴会場の、テーブルの各チームごとに分かれ、顔合わせと細かい説明の時間になった。
社員1人、バイト3人で約8名が座る1テーブルを担当する。
僕ともう一人のバイトさんは、披露宴での仕事は初めてだったが、僕らはラッキーだった。
担当の社員さんがやさしく丁寧に教えてくれる方だった。
俳優で例えると『ブラッシュアップライフ』で志田未来さんの旦那さん役などで出演している田村健太郎さんみたいな雰囲気の社員さん。
2019年の根本宗子さん作・演の舞台『クラッシャー女中』を見てから大好きな俳優のひとりである田村健太郎さん。似の社員さんによって、心は安らぎを取り戻していった。

健太郎さんは分からない事を順序立てて、レクチャーして下さった。
たくさんあった不安は、たむけんさんのおかげでだいぶ小さくなり、僕らは各ポジションに付き、そして披露宴が始まった。


【勃発まであと約3時間】


始まったら、僕らの仕事のメインは料理出し。
前菜→スープ→魚→肉…などの順番で、社員さんが指示出すタイミングで料理を出し、タイミングで料理を下げ、また次の品を出し、タイミングでドリンクを聞き、という手順がものすごくスピーディーに…。
特に社員さんや手練れのバイトの方は、1動作も無駄な動きがないくらいに洗練された動きだった。

通常、料理皿は両手で持つと、2枚。
2枚持ちは初心者やまだ慣れてない方々が多い。
手の甲に皿を乗せると、3枚持ちになる。
3枚持ちは、慣れてきた方や経験者。僕は披露宴は初めてだが、レストランと鳥貴族アルバイト経験があったので、出来た。
そして手練れの方は、両手の甲に乗せて4枚持ち。
さらには、どう持ってるのかよくわからない5枚持ちの方もいた。

人それぞれ、さまざまな枚数で料理を提供をしていた最中、奴がこの循環を崩した。
僕と同じテーブルの披露宴未経験者のバイト女性は、料理出し自体ほぼ初めてであった。
たむけんさんも「危ないから2枚で大丈夫だよ」と言って下さっていたのに、彼女が2枚で料理皿を持っていこうとした時、
「3枚持てないのか?持てるようになってから働いてくれよ」
と彼女に聞こえるように、社員リーダーがぼやいた。
奴は、他にも都度2枚持ちの奴に「料理冷めるだろうが~」などとぼやき、質問をしたら最初が「ああっ?」と聞くなよ!分かんねえのか!みたいなニュアンスの入り。

人間という生物自体に恨みがあるのかって思うくらい、人に厳しい。
逆に言うと、僕が見る限り、スタッフ誰に対しても彼の接し方は同じ感じだった。
人によって態度を変えたりはしないのか。やはり本当に人間そのものに恨みがあるのか…。

披露宴会場では、奴も僕らもそんな様子は見せないので、披露宴は無事に大成功で終了。
裏ではあんな感じなのに、披露宴会場に一歩踏み入れた途端、大笑顔で接客してるんだよな、社員リーダー。
プロ意識なのか、憑依型なのか、天使と悪魔が共存してるのか…。


【勃発まであと約15分】


数時間後にはこの会場でまた別の披露宴が行われるらしい。
すごいタイムスケジュール…。
同じ会場だが、レイアウトやテーブルの数、ましてや椅子の種類までも変わるという。
すぐさま撤去→次の設営作業がはじまった。


【まもなく勃発】


僕は今ある椅子の撤去をして、新しい椅子を持ってくる作業をしていた。
会場内にいる社員さんに「倉庫から○○の種類の椅子を持ってきて」と言われ、倉庫へ向かった。
倉庫へ行くと、人間界に復讐真っただ中の社員リーダーがいた。

僕「中の社員さんに言われて、○○の椅子を持っていきたいんですけ…」
社リー「いらない!必要ない!戻れ!」

めちゃくちゃ怒鳴られた…。

僕「でも中の社員さんが…」
社リー「だからいらない!おまえはバイトだろ?俺が言ってるんだよ!」

埒があかないので、そのまま戻り社員さんに伝えると、社員さんも困りながら、「先に別の作業をしよう」ということになった。

椅子の撤去作業に回った。
だが撤去場所は倉庫。倉庫には依然として、奴がいた。
奴は椅子を持っていく都度、「ここに置け!」とすごく置きづらく、効率性の悪そうな位置を指示する。
奴は倉庫内の整理をしていたので、彼なりのベストポジションがあるのだろう。それでも彼第一で、椅子を倉庫内に持ってくるメンバーたちはその都度やりづらさと効率性の悪さを感じて、苦い顔や友人同士で入った子は愚痴を言ってるようだった。

そして遂に…。

何度目かの椅子を倉庫へ運んでた時、僕らの前のチームが椅子を倉庫へ入れた際、
「それ入れたら、この椅子ホール内入れろ」
と社員リーダーが指示をしていた。

(おそらくさっき持ってきてって中の社員さんがいってた椅子だろう。間違ってなかったじゃん。何食わぬ顔で、指示の中に紛らわせて無かったことにしようとしてる感、丸出しだよ)

前のチームが指示された積んである椅子を持っていこうとしたとき、
「そっち持ってくな!こっちの持ってけ!」
取り出しやすい箇所にあった椅子ではなく、少し奥にあった椅子を持って行けと指示した。種類は同じなのに。

(なんのこだわりだよ!取りやすい方先持ってった方が安全だし、効率いいだろ!)

前のチームは、指示通りに目の前のではなく、少し奥にある同じ種類同じ数積まれた椅子を取ろうとした。
見るからに取りづらそうで、危険な感じ…。

その最中、10脚ほど積んである椅子のパレットは、バランスを保てなくなり、「ドドンッ!」と崩れた。

そこにいた皆が「!?」であった。
幸い移動しようとしていたチームの子達には怪我も全くなく無事であったが、見ていた僕が社員リーダーに怒鳴った。

僕「危ねえだろうが!手前の椅子、先に取らせればいいじゃないすか!え、種類も数も同じですよね?」

こう言ったら当然、奴は怒鳴って言い返してきた。

社リー「なんだあ!?おまえバイトだろ!こっちは手順やタイミング踏まえてやってんだよおお!」

僕「その結果、椅子崩れましたよね!?ケガしてたらどうするんですか?ケガさせないための手順とかタイミングじゃないんですか!?」

すると

社リー「おまえなんだその口は!どこの会社のバイトだ!?会社名と責任者言え!」
僕「すぐ上とか責任者呼ぼうとする!ズルくないすか?今ここでの問題ですよね!まずはここで話し合いましょうよ!」

まさか自分がドラマとかで見る「どこのモンだああ!上の奴出せ!」みたいなことを言われる人生だとは思ってもなかったので、この時小さい頃からドラマっ子なのもあり、半沢直樹や『ハケンの品格』の大前春子みたく、孤高の主人公が周りの為に声を上げているみたいな気分であった。

ドラマだと、ここでこれまで声を上げれなかった仲間が加勢してくれ、その主張はどんどん大きな影響をもち、悪は降参を認めるみたいな流れだ。

僕も自身だけではなく今日1日だけで、奴によって苦しんでる顔をしている沢山の人を見た。
僕は20代後半だが、バイトの子たちは多くは大学生だった。
まだ10代の子もいたと思う。
大学1年生らしき子に「学生ですか?」と聞かれた時、今の年齢を言うと「え、就職は?フリーターですか?」みたいに思われるのが嫌で「大学4年です」と答えてしまった。

その想いも全部込めて、あとは社員リーダーの怒号はますます増していた事にさすがに怖くなってきて、多勢が欲しくなって、

「今日ずっと、皆あなたに迷惑してるんですよ!!」

と僕は倉庫内にいる全バイトの気持ちを代弁して言ってるみたいな感じで言い、他のバイトに目を向けた時、そこにいたほぼ全員が目線を逸らし、残りは巻き込まれえないようにさりげなく去っていった。

まさかの全員が僕に加勢しなかった。

もうその空間は、ただ異星から来た化け物同士が言い争ってるみたいな空間になっていた。

その後、僕は控室に呼ばれ、派遣先の責任者の方と話し合いになった。
責任者の方からは「君の言ってたことは間違いではないかもしれないけど、伝える手段は適切ではなかったかもね」と言われた。

翌日から、この日の自分がどんどん嫌になっていった。
僕は社員リーダーが個人的なイライラやストレスを発散するために、嫌味を言ったり怒鳴ったりしていると思った。
でもそれは僕も同じだった。自分のイライラを発散したいから、朝礼のときから社員リーダーを睨んだり、そして最後には怒鳴った。周りのためより、自分の苛立ちを発散しなければ爆発しそうだったから怒鳴った。

あの場は、お互いの自己発散のために怒鳴りあっていただけの時間だった。
そして実際、今思っても僕は自己発散のために怒鳴ってしまったり、周りに助けを求めて巻き込もうとしたと確信できてるが、
社員リーダーは本当に自己発散のためにやっていたのかは、確かではない。
本人にしかわからないかもしれないし、そもそも単発1日だけのバイトが毎日そこで働いている社員さんを勝手に決めつけたり、ましてや業務に対してのいちゃもんを付けるべきではなかったと思う。
言うにしても、その言い方や伝え方が間違ってた。
あまりにも理不尽であったり、命の危険がある際は声を上げるべきだとも思うけど…。
塩梅難しすぎる!!

でもあの時、あの場にいた他のバイトの方は、「どっちもどっちだわ…」と思っていただろうな。
僕も社員リーダーも変わんねえわの空気と目だったよな…。
だから、バイトの方々は僕に加勢しなかった。
あんなにサッと目の前で、人が離れた感覚を味わったのは初めてかもしれない。ほんと怖かった。
だから誰かのために声をあげたのではなく、自己発散のために言ってることがちゃんと透けてた結果なんだろうな…。
そう思うと、観月ありささん主演のドラマ『斉藤さん』の主人公・斉藤さんはほんと凄いわ…。
今シーズン1観たら、当時以上に響く気がする。

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