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映画『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』鑑賞

テンポとリズムの心地良さ


 アポロ計画への関心を高めるために政府に雇われたPRマーケティングのプロ(スカーレット・ヨハンソン)と、アポロ計画ロケット発射責任者(チャニング・テイタム)とが、反発つつも惹かれ合う物語を縦軸に、マーケティングのプロが政府によって「嘘の月面着陸」撮影を命じられる話を横軸として、その両者が絡み合いながら映画は進む。 テンポよく、話がさくさく進むのが嬉しい。主人公の2人が変に葛藤に耽溺して動きが止まることもなく、一方で、アポロ1号犠牲者慰霊碑前の花壇にまつわる場面に象徴されるように、軽いだけのの物語でもない。登場人物の各々が、その立場を背負う者としての使命感や責任感を抱いている姿が描かれており、好感が持てた。 偽記録を撮る映画監督がエキセントリックに過ぎたり、すでにロケット内に格納されている月着陸船の部品をロケット発射直前(!)に交換したりと、粗が目立つ場面もあるが、それも含めてこの映画のリズムになっているのだろう。 難を言えば、アポロ8号の「月の出の写真」のプロデュースや、ニール・アームストロング船長の月着陸時の言葉までもが、マーケティングのプロによるものとする筋立ては、「やりすぎ」の感が。アポロ計画に対するリスペクトに欠いている描写のように思われた。 『アポロ13』や『ドリーム』のような「プロジェクトを達成していく」高揚感には欠けるが、観るものを不幸にはせず、ほんのり明るい気分にさせてくれる映画。なにより、陰謀論への没入を軽くいなすかのような姿勢がいい。 不吉のシンボルである黒猫が、最後に期せずして大仕事をやってのけるところが魅力的で憎いね。

※ 2024年8月4日一部更新


鑑賞日:2024年7月[劇場]
評 価:☆☆☆☆☆☆★★★★(6/10)


#映画 #映画感想文 #フライミートゥザムーン

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