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映画『原子怪獣現わる』鑑賞

98年版『GODZILLA』の祖先かのような


 映画『ゴジラ』に影響を与えたという本作。
 前々から観たいと思いながら術がなく、先日U-NEXTに加入したことでようやく鑑賞できた。
 話の展開は一本調子で起伏に欠けている印象。主役のはずの怪物=リドサウルスは、ニューヨーク現れて暴れた後、淡々と「駆除」されてしまった。
 この流れ、どこかで観たことがあるなと頭を巡らせ、はたと思い出す。そうか、本作は映画『ゴジラ』(1954年)の祖先というよりは、「あの」エメリッヒ版『Godzilla』(1998年)のご先祖様だ。かの作品のマグロ大好き怪物も、ニューヨークでひとしきり暴れて、軍に駆除されてしまった。
 リドサウルスの血液に病原体が含まれている設定も、兵士たちが倒れていく描写はあるものの、それ以上の悲劇性は描かれておらず、話に広がりがあるようには感じられなかった。
 翻って、子どもに向けた放射線測定器が激しく反応し、検査者が首を横に振るシーンから伝わってくるように、怪獣ゴジラは放射線に曝された被害者でもあった。東京を破壊した忌むべき存在ではあるが、同時に水爆実験によって誕生した悲劇の存在であり、その出自に哀しさが付き纏っている。
 同じ核実験の影響で生まれた存在でありながら、1年違いで制作された『原子怪獣現る』と『ゴジラ』との大きな大きな差異に、米国と日本があの時代に体験してきたものの違いが表れている。
 ディザスターもののエンターテインメントとしてみても、ニューヨークのごく一部を破壊した怪物の映画と、銀座尾張町から新橋·田町、芝、芝浦方面、大東京の中心部を火の海にし、国の中枢たる国会議事堂を破壊した怪獣の映画とでは、どちらに軍配が上がるかは語るまでもない。
 いや、そもそも比べること自体がナンセンスなのかも知れない。
 特撮やモンスターものの映画の系譜を知るためには観ても良い映画、といったところかな。

※ 画像はAmazonから。


鑑賞日:2024年8月[U-NEXT]
評 価:☆☆☆☆☆★★★★★(5/10)


#映画 #映画感想文 #原子怪獣現わる#レイ・ハリーハウゼン


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