自転車旅 第2話 『絶望のその先へ』
・5月28日
2日目。
友人が就活のため、家を早く出るので、そのタイミングで僕達も家を出た。
友人Tよ、本当にありがとう。
気合入れて頑張ります。
僕の整備不良のせいでチャリはボロボロなので、チャリ屋が開くのを待つ。
本日の荷物。リュック背負ったらかなりスリムに。
お、これいけんじゃね?
だがなにか足りない気がした。リュックはある。寝袋もある。何だ?
ん?
え、嘘でしょ?
あ、、、、
、、、テント忘れた。
ああああああああぁぁ!!!!!!!!!!
急いで友人に連絡するも、友人はもうとっくに電車の中。就活もあるので簡単には帰って来れない。
オワタ、、、、!!
一旦冷静になって考える。そうだよな、テントなんてなくてもベンチとかで寝ればいいし。荷物も軽くなる。
、、、雨降ったら?、、、ベンチ無かったら?防犯面は?そんなことばかり頭をよぎる。
ああダメだ!!あんな邪魔者扱いしてもやっぱりお前が好きなんだ!!
今あるのは2択。友人の帰りを待つか、友人が届けてくれるか。
まあ友人の帰りを待つのが第一だろう。
ただ、一応連絡を入れる。申し訳ないけど届けてくれないでしょうか。朝の風に揺られながら返事をボーっと待つ。
俺はなんてクズなんだ。
すると、友人Tから連絡が。
「学校終わったら持ってくよ」
持つべきものは何とやら。僕はテントだと思ってたけど、どうやら持つべきものは友達、いや神様らしい。
ほんまスイマセン、、ありがとうございます!
そうと決まればこちらは前へ進むのみ。友人のためにも、中途半端なところでは失礼である。
本日の朝飯。いややかましいわ自分。ストレスあるフリすんな。甘ちゃんが!!
チャリ屋が開く前に電池やらなんやらを購入。昨日ライトに電池が入ってないまま走ってた。
チャリ屋が開いたので直しにむかう。
チャリ屋のおっちゃんに聞くと、工具を渡してくれ、自分でやったら無料だよと言われたので頑張って自分でやるも中々難しい。
かなり苦戦していると、ああもう貸して!と言われ結局やってもらった。
終始イライラしててなんか申し訳なくなりました。
さあ気を取り直してスタート!
と思いきやまさかの大雨。大磯の方まで進み、一旦マックで休憩。
本日の方針を決める。マックはWiFiがあるから素晴らしい。友人的には御殿場が行きやすいらしく、御殿場に目的地を合わせる。
この日からグーグルマップではなく、NAVITIMEの自転車バージョンのアプリを使用。
坂道の少ないルートや、最短ルートなど色々調べてくれるから凄い良い。
こんな感じ。右下が一生出てこない。
獲得標高ってのは累計の標高。710m。結構高い。
てなると坂道が多い。しかもここらへんは山山山。
これでもまだマシなルートなのだ。
南に進むには必ず箱根山と戦わないといけない。
3時間半で到着と書いてあったので、
相棒と「なんだチョロいじゃん笑」なんて話しながらグダる。
まあ先に言っとくけど、3時間半で着くわけがない。
こちとら2日前までニート。まだ2輪でヨロヨロしてる小学一年生みたいなもん。しかも山道は初。この先地獄が待っているなんて僕達は全く想定してなかった。
・12時
雨も止んできたので出発。
一応雨具を着る。
色合いである。パリピのスニーカーみたいな色達。
ついでに立ち姿がレンタルなんもしない人みたい。
まぁいいでしょう。前に進む。
磯子からの道は緩やかで途中海が見えた時はテンションが上がった。
・14時30分
小田原付近に到着。
この時点で御殿場に着くのは夕方以降になることは確実に。
NAVITIMEを使いながら走ってるので、充電がすぐに無くなる。途中で休憩して充電してまた進むってのを繰り返さないといけないので、一旦ローソンで休憩。
最近のコンビニは休憩スペースがあるから本当に助かる。
・15時30分
出発。
もう田舎も田舎。
何も無い。
NAVITIMEがよく分からない道を推奨しまくり、間違えまくる。
・16時頃
荷台に括りつけてある紐が限界を迎えているため、たまたま通ったホームセンターにて縛る紐を購入。
ネットで見た感じ、チューブ型のがいいらしく、チューブ型2とフックがついてるものを1つ購入。
帽子を被りながら店員さんに
「しっかり縛れるものありますか?」と聞いたせいで
犯罪者か何かに疑われる。
相棒も帽子を深く被り、やっすい服や靴下を購入したため余計犯罪者臭が漂っていた。
何もしてませんよ!!!(この発言すら怪しい)
・17時
夕飯。カロリー基準で見てるため、自ずとマヨネーズになってしまう。計240円くらい。
しかし、ここからが山場。
山場って多分、今の状況と同じで山を超える的な意味で使われてて、いつの日かクライマックスのような表現になったんだろうな、と用語の在り方についてしみじみ考える。
用語の話は置いといて、本場の山道である。
写真は撮っていないが、マジで怖かった。
車でしか来ねーだろ、、と思うような道ばかり。
トンネルなんてもう車道しかないし、トラックばかりが猛スピードで通り過ぎる。
しかも山道でかなり標高は高く、風も強い。
「流石にヘルメットないと死ぬぞ、、」と今までの人生で考えたことの無いようなことが頭に浮かび、必死にヘルメット装着し、死に物狂いでチャリをこぐ。
・18時30分
とっくに日は暮れ、僅かな電灯と車のライトだけが頼りだった。
山というのは登りがあれば当然下りがある。
いつ着くんだろうなという不安と焦りの中、疲れは確実に僕らを蝕んでいく。山というモンスターを初めてた経験し、精神的にも限界が来ていた。
下りの最中に事件は起きる。風が気持ちよく「ああ、気持ちいいなあ」と目線を少し逸らした時だった。
ダダンッ、という音がした。山道なので僅かな歩道しかなく、もちろん整備はされていない。なので段差が激しいところがあり、普通なら見てわかるので対応出来る。
ただ、この時は疲れと焦り、そして一瞬の目線の移動。その0コンマ何秒かの認識の遅さが、僕の判断を鈍らせた。
ダダンッと音がした後、「あ、段差だ」と気づく。だが遅い。下り坂で加速していた自転車は上手く動かす事が出来ない。
己の体幹を使い、なんとか状態を戻すもスピードに乗った自転車はガードレールと擦れてしまう。
ガガガガッ
目に前が真っ暗になり、気づくと僕は仰向けに倒れていた。
一瞬、何が起こったか分からなかった。
しかし、膝に走る激痛、腰の鈍い痛みで理解した。
やってしまった。
そのときの写真がこちら。
いやもっと鬼気迫る顔せえ。
さっきのシリアスな雰囲気が台無しじゃねえか。
長々と小説風に書いてしまって申し訳ない。小説家になりたいという潜在意識が僕を動かしてしまった。
普通にケガしました。
うはー、完全にやってしまった。
まさかケガするなんて。
ともあれ、この時は真っ暗闇に取り残される方が嫌だったのでアドレナリンの関係であんまり痛くもなかったので前へ進む。
・19時すぎ
ようやく足柄付近へ。
足柄って聞いた瞬間、少しだけ安心した。
これ、カメラのライトで明るい風になってるが、めちゃくちゃ暗い。
御殿場ももうすぐ。
ただ、もう疲弊しきっているのでボロボロ。
しかもまだまだ山の中で、
「やっと山抜けたか、、次はどっちだ?」
「えーっとルート的にはこっちか、、」
「また山じゃねえか!」
みたいな。
足腰もそうだけど、精神面的に相当ダメージがきててどちらも倒れそうだった。
・20時。
ようやく、ようやく御殿場に到着!
御殿場、寒い!!!なんだよこの寒さ。
暗闇の中で寒さに怯えながら、まるで子猫のような弱々しさの僕ら。
知らない大人の人にはついていっちゃいけないってよく言うけど、優しくしてくれたら付いていきますわ。。
ただ、優しくしてくれる人もいなく、ボーっと座ってると僕らの前に1台の車が。
そう、友人Tである。テントを渡しに来てくれたのだ。
もう実家のおばあちゃんみたいな安堵感。泣きそうな気持ちを抑えながら思いっきりハグした。
コンビニで少量の飯を食い、色々あったことを子供のように話した。それをウンウンと聞いてくれる友人Tが一瞬優しいお父さんに見えた。
神様っているんだ。
そういえば、今になってやっと傷が傷んできた。
グロいのがダメな方のためにぼかしてます
見てみるとエグいぐらいの血。
肉も見えてる。
友人Tと別れ、これからどうするか相棒と話し合う。
本来ならばテントで寝て明日に備えるはずだが、疲弊し、衰弱しきっている僕達に正常な判断も出来るわけが無い。
僕達は誰かに招かれたかのように道を進み、気づけば
漫画喫茶『快活CLUB』の前に立っていた。
大切だった人にフラれ、途方に暮れてるときに傍にいてくれた人を好きになるように、
仕事が終わり、その日の疲れを忘れるためにお酒を飲みお金を使うように、
僕達はそっと『快活CLUB』へ入っていった。
個室をとり、シャワールームに飛び込み、温かいということに感謝し、全てを忘れるかのように寝た。
誰も僕達を咎めはしなかった。
ただ、僕の中の何かにヒビが入った気がした。
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