Pfas

PFAS(Per- and polyfluoroalkyl substances)は、広く使用されている人工化学物質であり、耐火性、撥水性、摩擦抵抗性、油や汚れの防止などの性質を持っています。しかし、これらの化学物質は、環境中に長期間残留することが知られており、健康や環境に悪影響を与える可能性があることが判明しています。本稿では、PFASに関する情報を詳しく説明し、その健康や環境に対する影響について探求します。

PFASの定義と種類

PFASとは、化学的には、一連のフッ素化合物の総称です。これらの化合物は、炭素鎖の中にフッ素を含む有機化合物であり、その化学構造により、一般的に4つの異なるグループに分類されます。

  1. Perfluoroalkyl acids(PFAAs)- 炭素鎖中に全ての水素原子がフッ素に置換された化合物であり、炭素鎖の長さに応じて、PFOA(perfluorooctanoic acid)、PFOS(perfluorooctane sulfonate)、PFNA(perfluorononanoic acid)などがあります。

  2. Perfluoroalkyl sulfonates(PFASs)- スルホン酸基が含まれた化合物であり、PFOSなどがこれに該当します。

  3. Fluorotelomer alcohols(FTOHs)- 炭素鎖にフッ素が含まれた化合物であり、水に溶けやすいFTOHsが代表的です。

  4. Polyfluoroalkyl phosphoric acid esters(PAPs)- 炭素鎖にフッ素が含まれた化合物であり、廃棄物や環境中でPFOAなどのPFAAsに変換されることが知られています。

PFASの用途

PFASは、その耐火性、撥水性、摩擦抵抗性、油や汚れの防止などの性質を活かし、広範囲にわたって使用されています。以下に代表的な用途を挙げます。

  1. 衣類・布製品- 防水性や撥水性を付与するために、ジャケット、靴、カーテン、テント、寝袋などに使用されます。

  2. 家庭用製品- フライパン、包装材、食器、家具、カーペット、じゅうたん、掃除機のフィルターなどに使用されます。 3. 建材- 防水性や防火性を付与するために、外壁、屋根、断熱材、床材などに使用されます。

    1. 消防用フォーム- 火災現場で使用される消火フォームに含まれており、火災の拡大を防ぐために使用されます。

    2. 航空宇宙産業- 航空機や宇宙船の耐火性や撥水性を付与するために使用されます。

PFASの健康や環境への影響

一部のPFASは、人体や環境に対して悪影響を与える可能性があることが判明しています。以下に代表的な影響を挙げます。

  1. 健康への影響- PFOAやPFOSなどの一部のPFASは、健康に悪影響を与える可能性があります。これらの化合物は、がん、肝臓障害、甲状腺障害、免疫力低下、妊娠中の発育異常、生殖能力低下などの健康被害を引き起こす可能性があります。

  2. 環境への影響- PFASは、環境中に長期間残留することが知られており、地球上のあらゆる場所で検出されています。これらの化合物は、水、土壌、空気、野生動物、食物連鎖など、様々な環境中に存在します。環境中に放出されたPFASが生物に取り込まれると、生物濃縮現象により、食物連鎖を通じて高次の生物に蓄積されます。これにより、野生動物や人間にとって、健康被害を引き起こす可能性があります。また、PFASは、土壌や地下水に浸透し、地下水汚染や土壌汚染の原因となることがあります。

PFASに対する規制

近年、PFASに対する規制が強化される傾向があります。以下に代表的な取り組みを挙げます。

  1. 国際的な取り組み- 2019年11月、スイスで開催されたストックホルム条約第9回締約国会議(COP9)において、PFOS、PFOA、PFHxSなど一部のPFASを禁止することが決定されました。また、欧州連合(EU)では、2019年に一部のPFASに関する規制が施行され、2020年にはすべてのPFASについてのリスク評価が開始されました。アメリカ合衆国でも、2020年にPFASを含む化学物質に対する規制強化法案が成立し、厳格な規制が導入される予定です。

    1. 国内の取り組み- 日本でも、2019年に環境省が「PFAS対策推進プラン」を策定し、2020年にはPFOSを含む一部のPFASに対して基準値を設定しました。また、2022年からは、食品中のPFOSやPFOAなどの一部のPFASの検査が法定義務化されます。これらの取り組みにより、PFASに対する規制が強化され、環境や健康への影響を最小限に抑えることが期待されています。

まとめ

PFASは、多くの製品に使用されている化学物質であり、防水性や撥水性などの特性を持ちます。しかし、一部のPFASは、健康や環境に悪影響を与える可能性があり、規制が強化されています。今後も、PFASに関する研究や規制が進むことが予想されます。消費者としては、製品のラベルや取扱説明書を確認することで、PFASを含む製品を避けることができます。また、廃棄物の適切な処理や環境負荷の低い製品を選択することも、環境への貢献につながります。

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