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完璧な親であろうとする苦しみ

多くの親御さんからのご相談を受けていると、親御さん自身が親として「完璧でなければいけない」と思って苦しんでいることがよくあります。これはあくまで子供のためを思ってのことです。しかし、自分が完璧であらねばという意識が強すぎて、今度はお子さんにも完璧さを求めてしまうケースが少なくありません。これでは負の連鎖が続き、双方が苦しい思いをすることになってしまうのではないでしょうか。

カウンセリングを続けるうちに、親御さん自身がそのことに気づき、自然と呪縛から解き放たれることもあります。ただ、実際にお子さんと接している親御さんがそこから完全に抜け出すのは、なかなか難しいことなのかもしれません。今回はそのことについて少し考えてみることにしましょう。

親も人間です。完璧な人間などこの世にいないのですから、親御さんが完璧である必要は全くありません。子供が求めているものはAIのように完璧な親ではなく、自分を認め、その存在を受け入れてくれる人間としての親なのです。

仕事も家事も育児も完璧にこなす、確かにそれができれば素晴らしいことなのかもしれません。しかし、実際にそれを実行できる人はどれほどいるでしょうか。まずいないのではないかと思います。

人は欲しいものを何もかも手に入れることはできません。何かを得るためには、時に何かを諦めなければならないのです。どれかを完璧にこなそうと思ったら、そのために何かを手放さなければなりません。どちらの方が良い悪いというものではなく、人生はそうした選択の上に成り立っているものなのです。

すべてを完璧にしようとして結局思うようにならず、それが自身のストレスとなって子供にあたってしまうこともあるでしょう。人間ですからそういうこともあります。ただそのままの状態が続くと親御さんにとっても子供にとってもいけません。もしこうした状況に陥ってしまっているのであれば、親御さん自身がまずそのとらわれを自覚する必要があります。

自分が完璧主義に陥っているかもしれないと思った親御さんは、まず少しずつ「手を抜く」ことを覚えましょう。手を抜くと言ってもそれは「適当に済ませる」とか「子供のことを疎かにする」ということではありません。はじめから完璧にやろうなどと思わず、程々の力加減でやったほうがかえって上手くいく場合もあるのです。

例えば、仕事が忙しくて毎日のお弁当や塾弁まで手が回らないときは、きちんとそのことをお子さんに伝え、少し楽をさせてもらってはどうでしょうか。子供も親御さんが大変なのはよく分かっていますから、きちんと話して納得すれば理解してくれます。逆に仕事が落ち着いたときは、子供と一緒に過ごす時間を多くすればいいのです。家事であれば夫婦で役割分担する、子供にもできることは手伝ってもらう、などのやり方があるでしょう。

家庭は親だけで成立するものではなく、子供と一緒に作り上げていくものだという意識を持つといいと思います。大切なのは信頼関係です。日頃から信頼関係が築かれていれば、少々のことでは子供の心は揺らぎません。

これらすべては子供と向き合うための心の余裕を作るためのものです。子供を置き去りにして親御さんだけが一生懸命になってしまってもいけませんし、逆に子供のことを放ったらかしにしてもいけません。その塩梅は非常に難しいものです。悩んだときは、子育ては子供と一緒に行う共同作業なのだということを思い出すといいでしょう。

子供が本当に求めているものは一体なんでしょうか。それは自分の全存在を承認し、受け止めてくれる存在です。親が完璧である必要などありません。自分のすべてを認めてくれ、失敗も成功もすべて受け止めてくれる存在があることで、子供の心はどれだけ安心し、勇気づけられるでしょうか。その安心があるからこそ、子供は恐れることなく色々なことに挑戦し、成長していけるのです。


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