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【書評】ストーリーとしての競争戦略⑦

楠木建先生のストーリーとしての競争戦略の纏めと感想の第七回目です。前回はストーリーの中のシュートである競争優位についてみてきました。今回はストーリーの始まり、サッカーでいうキックオフである「コンセプト」についてみていきます。

⒈ コンセプトとは何か?

ストーリーの始まりであるコンセプトとは以下の様なものだとしています。

製品やサービスの本質的な価値定義

これは何を言っているかというと、本当のところ誰に何を売っているのか?という事です。これは単純にモノを売っているということではありません。顧客は売られているモノを使って得られる何かを買っているはずで、我々は商品を通じて何らかの価値を顧客に提供しているのです。この価値定義をわかりやすい言葉で表現する事が大切です。リコーの「画像処理のデジタル化」やベネッセの「コミュニティを大切にした継続型ビジネス」といった言葉は結局自分達の事業が何のために行われているかがよく理解できます。この様な言葉がコンセプトです。

⒉ WhoとWhatを突き詰めて考えてHowは考えない

コンセプトをどうやって考えるかです。コンセプトは「誰に」「何を」を突き詰めて考えることがとても重要です。この二つを突き詰めて考えていくことでいくつもの「なぜ」が生まれてきます。例えば

顧客が商品を使ってなぜ喜ぶのか?
なぜ顧客は継続的にお金を払うのか?

という事です。そして最終的にはなぜ顧客を囲い込めるのか?という事まで考える様になります。

ここで大切な事があります。それは「どのように」から考えないという事です。例えば「顧客の囲い込みをします」という言葉をよく耳にしますが、この様な方法論先行型は結局自分達がどの様に儲けるかという自分勝手な話になってしまいます。そうではなくて、「誰に」「何を」をとことん突き詰めて考える事で顧客に提供している本質的な価値を明らかにし、何のために事業をやっているかという事がはっきりとわかるようになってきます。

⒊ コンセプトで大切なこと

コンセプトを考える上で大切な事が二つあります。

①誰に嫌われるか?を明確にする
②人間の本質を捉える

①の「誰に嫌われるかを明確にする」というのは要はターゲットを明確にする事です。全員に愛される様な表現はコンセプトを曖昧なものにします。例えば、最高品質や顧客満足の追求といった言葉は聞こえは良いですがコンセプトではありません。全員に愛される必要はありませんので、ターゲットでないもの=誰に嫌われるかを明確にする事が大切です。

②の「人間の本質を捉える」ですが、どんなビジネスであれ人間が関わってきます。人がなぜ喜ぶのか?なぜ楽しむのか?なぜ悲しむのか?なぜ面倒くさがるのか?などの人間にフォーカスする事が重要です。

⒋ コンセプトを作るには

切れ味の良いコンセプトを作るには自分の頭で考える事が大切です。顧客の声をいくら聞いても人間の本性を捉えたコンセプトにはなりません。スティーブ・ジョブズがiphone にキーボードを搭載しなかった例が有名ですが、ニーズとコンセプトは別物です。その製品やサービスを本当に必要とするのは誰か?どの様に利用しなぜ喜びなぜ満足を感じるのか?顧客に使わせて何度も観察しじっくり考える事でコンセプトが出来上がってきます。

今回はストーリーの始まりであるコンセプトについてみてきました。全てはコンセプトから始まります。しっかりとしたコンセプトが出来上がればストーリーの半分くらいはできたのも同然です。次回はストーリーの始まりであるコンセプトとゴールである競争優位を結ぶ部分をみていきたいと思います。





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