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ランバ・ラル散る!さらっと明かされるセイラとジオン公国の過去!~機動戦士ガンダム 第20話「死闘!ホワイト・ベース」感想

独房のアムロ

フラウ「食べていないんじゃないの?」
アムロ「ドアを閉めろよ、逃げ出すかもしれないぜ」
フラウ「そんなこと言わないでよ!」
アムロ「あのランバ・ラルって人、必ず攻めてくるよ。ザクやグフが無ければなおさらあの人は来るんだ。絶対に」
リュウ「来たら来たでいい。その時はガンダムに乗る。で、お前はどうする?」
アムロ「ホワイトベースを降りてもいいと思っています
リュウ「・・・本気か!?」
アムロ「ええ。いけませんか!?どうせみんな気まずくなったんだし!
リュウ「ええい!貴様っ!!」
アムロ「あっ・・・本気で殴ったんだね、リュウさん」
リュウ「・・・い、いつか、マチルダさんがお前の事をエスパーかもしれないって言ったのが、俺はいかにもお前の事らしいと思ってたんだ。いいかげんいじけ虫は・・・」
アムロ「フッ、マチルダさんか。自分の言葉でお説教したらどうなんです?
リュウ「チッ、フラウ・ボゥ、行こう」
フラウ「はい」
アムロ「一人でむきになったって人間が変わるもんか」

アムロがまた殴られたのでアムロ殴られメーターを更新しておこう。

・1回目、2回目 ブライトから(第9話
・3回目 リュウから(第12話
・4回目 ロランから(第15話
・5回目 リュウから(今回第20話)

リュウが殴りたくなる気持ちもわからないではない。

前回ホワイトベースに戻り、独房に入れられたアムロ。この期に及んでまだホワイトベースを降りるなどと言っている。

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アムロにしてみれば、もともと「お前はいらない」と言われたから脱走したまでで、なぜ独房に入れられたり、みんなして説得しようとしてくるのか理解できないだろう。

かなり意固地になっており「みんな気まずくなったんだし」などと口走っているが減らず口というやつである。

挙句の果てには「自分の言葉でお説教したらどうなんです?」である。

こいつはいっぺん殴ったらなあかん。

ハヤト・カイの不満

ハヤト「あ、よろしいですか?」
ブライト「うん、いいよ」
ハヤト「すいません、アムロのことなんですけど。ブライトさん、彼を外すつもりないんでしょ?」
ブライト「なぜそう思う?」
ハヤト「独房に入れるってことはアムロの反省を促している訳で、つまりあてにしている
セイラ「そうね」
ミライ「もともと、アムロをはずそうと言い出したのはブライトだけど、どうなの?」
ブライト「アムロはガンダムを持ってジオンに逃げたってよかったはずだ。それをしなかったのはなぜかと考えてみたのさ。そしたら」
カイ「望みが持てそうってのかい?」
ブライト「ああ」
カイ「アムロが帰ってきたのは一時的なホームシックみたいなもんさ
ブライト「しかしな、あと一息だと思わんか、なあ、リュウ?」
リュウ「アムロのことか?うーん、大丈夫だろ」

ハヤトやカイは今回のアムロの処遇に不満を持っているようだ。

それも十分理解できる。アムロがガンダムを持って脱走した結果、グフの急襲を受けガンタンクもガンキャノンも絶対絶命のピンチに陥った。

タイミングよくガンダムが戻ってきたからよかったものの、あの場で死者が出てもおかしくなかった。

すべてはアムロの身勝手な行動に起因するものである。

軍紀では脱走者は死刑となっているのであるから、もはやアムロにはガンダムを任せるなど思いもよらないことだろう。

しかし、ブライトの采配はアムロの独房入りだけ。アムロの身勝手な行動に対する処置としては軽すぎる。しかも、ブライトは今後もアムロをガンダムに乗せようと考えている。

ハヤトたちは、アムロばかりがひいきされているように感じ、不満を持っているのだろう。

こうした不満に対してブライトの回答は「まだ望みがもてそう」。

アムロはガンダムをもってジオンに逃げ込もうと思えばできた。それをしなかったのはやはりいつかはホワイトベースに戻ろうとしているからだろう。

アムロにホワイトベースを完全に裏切る気はないとブライトは考えたわけだ。

これに対し、カイが「アムロが帰ってきたのは一時的なホームシックみたいなもんさ」と茶化しつつも反論する。「一時的におうちが恋しくなっただけ、どうせまたアムロはいなくなるに決まっている」ということだ。

カイもハヤトもアムロ・ガンダム不在のために命の危険にさらされたのだから当然と言えば当然の反応である。

ドムがやってくる!?

クランプ「ラル大尉、ドズル閣下からの電文です。マクベ閣下から中継していただきました」
ラル「ハモン、いいニュースだ。陸上タイプのモビルスーツ・ドムを3機、まわしてくれるそうだ」
ハモン「ドム?あの重モビルスーツ?」
ラル「ハモン、移動するぞ。ドムを受け取ったら我々はただちに木馬に攻撃を掛ける」

一方のランバ・ラル隊。前回のホワイトベースとの戦闘でグフ1機をザク1機を失った。ギャロップの外にはザクが1機だけたたずんでいる。

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そこにドズルから朗報が舞い込む。ドム3機が補給物資として送られてくるようだ。

ランバ・ラルは意気揚々と次の作戦行動に移ろうとしている。しかし・・・。

マクベが握りつぶす

マクベ「ランバ・ラルはこの辺りの私の鉱山を知りすぎた。キシリア様がジオンを支配する時にこの鉱山は役立つ。実態はギレン様にも知らす訳にはゆかんのだ」
ウラガン「は」
マクベ「次の手はわかってるな?」
ウラガン「しかし、あの方の依頼を握りつぶしたこと・・・」
マクベ「心配ない。ランバ・ラルはそうは考えはせん」
ウラガン「はっ!」

このシーン、よく見ると鉱山基地の外には3台の大型トレーラーがある。その荷台にはおそらくドムが搭載されている。

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ドズルから無事ドム3機が到着しているにもかかわらず、マクベはこれをランバ・ラルに届けないつもりだ。

その目的は戦争終了後のザビ家内の権力闘争でキシリアを優位に立たせることである。

第16話の感想でも述べたように、キシリアはこの戦争終了後に勃発するであろうザビ家内の権力闘争をすでに見据えて行動している。

こうしたキシリアの意向を受け、その部下であるマクベも鉱山基地の情報が外部に漏れないように注意している。

ランバ・ラルはホワイトベースとの交戦のためにマクベの鉱山基地周辺をうろうろし、基地のことを知りすぎてしまったと考えたマクベは、ランバ・ラルへの補給物資であるドム3機を自分の手元に留め置き、ランバ・ラルに渡さないようにした。

これによってランバ・ラルが討ち死にしても構わない、むしろその方が好都合と考えたのであろう。

ハヤト達の脱走!!

セイラ「ハヤト、カイ、ハワード、マクシミリアンが出て行ったの。追いかけてくれて?」
ミライ「あたし達、アムロの事をそんなに身贔屓にしていたかしら?」
ブライト「みんながひとつ、考え落ちしているのさ」
ミライ「考え落ち?」
ブライト「アムロがいない間、指揮者としての僕はひどく不安だったってことさ」
ミライ「不安・・・」
ブライト「君も星回りのいい女性だと思っている。しかし、アムロだ。あいつがいなくなった時感じた不安っていうのはこりゃ絶大だ。いったいなんなのだろうな?」

ハヤト、カイと他2名がホワイトベースを脱走した。これをリュウが追いかける。ハワードとマクシミリアンの名前は初登場である。

リュウを見送るミライにブライトが「アムロがいない間、指揮者としての僕はひどく不安だったってことさ」とぽつりと本音を言う。

ブライトが不安を抱いたのは「ガンダムがいないこと」ではなく「アムロがいないこと」に対してだ。

アムロの身勝手な行動に手を焼いていたブライトが「アムロをガンダムからおろす」といったことがきっかけでアムロは家出をした。

しかし、そのブライトも自分では気づいていなかった大きな期待や信頼をアムロに感じていたのだろう。

今回のアムロの家出はブライトにもアムロのことを再考する機会を与えたようだ。

「お前のいう通りになったな。」

ラル「ド、ドムは届かぬと言うのか?」
ウラガン「は、まことに残念です。我がマクベ部隊の援護も間に合わず、中央アジアに入る直前で補給線は撃破されて、ドムは・・・」
ラル「いや、このランバ・ラル、たとえ素手でも任務はやり遂げてみせるとマクベ殿にはお伝えください」
ウラガン「はっ!」
ラル「ご苦労でした」
ウラガン「失礼いたします。(なるほど、いくさ馬鹿とはこういう男のことをいう)ようし、帰るぞ!」
ハモン「で、どうなさいます?」
ラル「お前の言う通りになったな。補給戦力をあてにせず、元々ゲリラ屋の私の戦法でいこう。どうだ?クランプ」
クランプ「その方が兵どもも喜びます、隊長」

ドムが届かないと分かったランバ・ラルが少々うろたえながらも「ゲリラ屋の私の戦法でいこう」と即座に作戦変更。このあたりの切り替えの早さは戦い慣れしている感を存分に醸している。

しかし、ランバ・ラルが窮地にあることは変わりない。「ゲリラ屋の私の戦法でいこう」というのも部下を不安がらせないための虚勢であろう。

おそらくこの時点でランバ・ラルは今回の作戦で自分が死ぬことも覚悟しているのではないか。そうでなければ「このランバ・ラル、たとえ素手でも任務はやり遂げてみせる」との発言は出てこないだろう。

部下のクランプが「その方が兵どもも喜びます」と言っているが、これもランバ・ラルの覚悟を感じ取り、部下として隊長と運命をともにする覚悟であることを示すものだ。

ランバ・ラル隊の結束の強さを窺わせる。

このシーンで気になるのはランバ・ラルの「お前のいう通りになったな」というセリフである。「お前」とはハモンのことである。

もともとハモンはマクベのことを当初から「マクベ様は油断のならぬお方と聞いております」と警戒していた。

今回、マクベ経由でドズルからドム3機がやってくるという電文を受けた時も、おそらくハモンはマクベがどこかで手を打ってくるのではないかと懸念していたのであろう。

そして実際にその懸念通りになった。

ミライといいハモンといい、機動戦士ガンダムでは切れる女がよく登場するものだ。

ハヤト達が脱走した理由

リュウ「連中め、やっと止まりやがって・・・。お前達までなんということをしてくれるんだ!?」
ハヤト「戦うのはホワイトベースでなくたってできます。近くの連邦軍を探してそこに・・・」
リュウ「ブライトを見捨てるつもりか?」
カイ「ブライトにはアムロがついてんでしょうが」
リュウ「いいかげんにせんか、カイ!」
ハヤト「僕にはホワイトベースで戦う意味がなくなったんですよ。これは仕方のないことでしょ」
リュウ「ハ、ハヤト!!」

ハヤト達の脱走の理由は「アムロをひいきするブライトへの反発」である。

自分達の機体であるガンキャノンやガンタンクをもっていっていない分アムロよりましだが、それにしても理由が子供っぽい。

基本的にはアムロと変わらない理由で出ていっている。この辺はハヤトやカイもガキということであろう。

ランバ・ラルの作戦

ラル「ギャロップは木馬の前面に出てギーンのザクと共におとりだ。そこをうしろからキュイで木馬に突っ込む。ハモンにギャロップの指揮を任せる。そして私とクランプで第一キュイ、第二キュイの隊長を務める。いいな?」

今回の作戦は図入りで解説されているので分かりやすい。

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ザクが1機しかない圧倒的に戦力不足のランバ・ラル隊、今回はザクとギャロップをおとりに使い、後方からキュイでホワイトベースに攻め込む作戦である。

果たして・・・。

しぶしぶながらもホワイトベースへ・・・

カイ「ああっ!殴らなくたっていいだろう!リュウ!」
ハヤト「そうですよ!力ずくで人にいうことを聞かせようたって無理ですよ!」
リュウ「・・・殴らなきゃわからんのだろう?お前達は!」
カイ「ん?なんだ?あの音」
リュウ「ん?」
ハヤト「えっ?」
リュウ「・・・伏せろ!見つかっちゃまずい」
ハヤト「あの音、捕虜の言ってたギャロップだ。ホワイトベースに向かっている」
リュウ「ランバ・ラル隊か・・・戻るか戻らないかはお前達の良心に聞くんだな」
ハヤト「リュウさん」
カイ「まったく。行くか?」
ハヤト「はい。いいだろ?」
ハワード「はい」
マクシミリアン「はい」
カイ「いやに冷え込むじゃないか」
ハヤト「カイさん」
カイ「ん。しゃあねえな・・・」

ランバ・ラル隊がホワイトベースを狙って行動を開始しているのを目の当たりにしたリュウとハヤト達。

「戻るか戻らないかはお前達の良心に聞くんだな」というリュウの言葉にハヤト達は渋々ながらもホワイトベースに戻る決断をする。

もともとがブライトへの反発であるし、ブライトを少し困らせてやろうというくらいの考えだったのではないか。

「この風、この肌触りこそ戦争よ」

ラル「フフ、この風、この肌触りこそ戦争よ」

得意戦法で戦争に臨み、やる気十分に見えるランバ・ラル。

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このセリフもランバ・ラルがいうから画になっている。

しかし、ランバ・ラルの置かれた状況を考えれば、不利な戦争を最前線で戦わなければならない兵士の悲哀も感じさせるセリフである。

戦闘開始!!

セイラ「ブライト、ガンダム発進します」
ブライト「す、すまんセイラ。左にザクがいる、発進の隙に狙い撃ちされんように高度を取れ。あてにしているぞ」
セイラ「はい、やってみます。ガンダム、発進!」

今回はセイラがガンダムに搭乗。アムロが独房にいるため致し方なしである。

そこにリュウとハヤトたちのバギーが帰ってきた。

アムロを出獄させる

ブライト「フラウ・ボゥ、アムロを独房から出せ。ドアのキーはタイプ6Eで開く。わかってるな?」
フラウ「はい!」

ここでブライトがアムロを独房から出す決断をする。

ハヤトたちには「アムロを贔屓しすぎでは?」と言われ脱走までされてしまった状況でアムロを独房から出すのは勇気がいることである。

こうしたブライトの采配は、襲撃を受けている現状では仕方ないかもしれないが、今後のホワイトベースの運用に禍根を残しそうである。

白兵戦用の戦車!?

カイ「あっ、なんだありゃあ?」
ハヤト「戦車?」
カイ「そうだ。ありゃあ白兵戦用の奴だ。奴ら、肉弾戦で来るつもりじゃないのか?」
リュウ「ホワイトベースに跳びこむぞー!そりゃーっ!!」
マーカー「白兵戦用の戦車、キュイです」
ブライト「なに?白兵戦用の?」
ラル「木馬が逃げにかかるぞ。射撃開始!」

ここでランバ・ラルの作戦の詳細が明らかになった。ランバ・ラルはザクや戦艦ではなく生身の人間で白兵戦を仕掛けるつもりである。

自らを「ゲリラ屋」と呼ぶランバ・ラルらしい戦闘だ。

キュイからジェットパックで飛行し、次々にホワイトベースに取り付くジオン兵。

セイラ「だ、駄目だわ。ガンダムの武器では威力がありすぎて兵隊だけをやっつける訳には」

ガンダムで攻撃すればホワイトベースも一緒に破壊してしまう。

この状況ではガンダムは役に立たない。どうする!?

ホワイトベース内での戦闘に!

クルー「78番ハッチが突破されたぞ!」
ラル「急げ、サブブリッジを占領するぞ!」
ラル「銃を持っていれば殺す。どこかに隠れているんだ」
フラウ「あ、あなたは!あの人、レストランに・・・」

ついにホワイトベース内に侵入された。ランバ・ラル隊はホワイトベースの鹵獲を目指し、サブブリッジを占拠しようとする。

「銃を持っていれば殺す。どこかに隠れているんだ」とフラウボウに対して抵抗しにように促している。無駄な殺生をするつもりはないらしい。

また、クランプもホワイトベースのブリッジを爆破する際、キッカたちを見て「さがってろ、怪我するぞ!さがれと言っている!」と無用な怪我をしないようにしている。

敵兵だからといってむやみやたらに殺生するのは得策ではない。捕虜にして情報を聞き出すこともできるし、ホワイトベースの運用も連邦軍兵士がいないと無理だ。

なにより不必要な虐殺は戦争後に禍根を残すことになり、戦後処理がややこしくなるだけである。

ラル「(勝てたのはそのモビルスーツのおかげだ。自分の力で勝ったのではない)」

ランバ・ラルの言葉を思い出しながら、アムロも必死の抵抗を見せる。

自分の力を見せつけてやる言わんばかりの気迫でジオン兵にぺケ字拳をお見舞いするアムロ。

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銃を持ったジオン兵相手にアムロは丸腰だ。状況的にはかなり危なかったがタイミングよくブライトが参戦。九死に一生を得た。

ブライト「ガンダムをセイラと代われ。第2ブリッジの敵をガンダムで撃退する」
アムロ「どうやって?」
ブライト「ホワイトベースを壊してもだ」
アムロ「は、はい」

ブライトの決断はホワイトベースを破壊することも辞さない作戦で、かなり思い切ったものだ。仮に勝てたとしてもホワイトベースへのダメージもかなりデカい。

アムロとセイラが交代してアムロがガンダムに乗りこむ。セイラはサブブリッジに向かう。

そこでセイラはランバ・ラルと再会する。

ランバ・ラルとセイラ

ラル「あっ、ひ、姫、ひ、姫様か?間違いない、アルテイシア様に違いないな。私をお忘れか?あなたの父上ジオン・ダイクン様に御仕えしたジンバ・ラルの息子ランバ・ラルですぞ
セイラ「アルテイシアと知ってなぜ銃を向けるか!」
ラル「はっ!やはり。で、ではなぜ!?」

ランバ・ラルのこのセリフ、機動戦士ガンダムの物語の背景に関わるかなり重要なことをサラッと言ってのけている。

ランバ・ラルのセリフは短いが情報量がかなり多いので少しずつ読み解いていきたい。

まず、ジオン・ダイクンについて。「ジオン公国」の国名の由来はおそらくこの人である。

建国の偉人の名前をとってそのまま国名とする例は歴史上いくつも見られる。例えば「ボリビア」の名称も独立戦争の指導者シモン=ボリバルからとったものだ。

ジオン建国に寄与したジオン・ダイクンという指導者がおり、その名をとって「ジオン公国」としたのであろう。

ジオン・ダイクンの部下としてこれを補佐したのがジンバ・ラルで、そのジンバ・ラルの息子がランバ・ラルである。

おそらく若かりし頃のランバ・ラルはジンバ・ラルに付いてジオン・ダイクンを補佐し、ジオン公国の建国に尽力していたのだろう。

その際、ジオン・ダイクンの子であるアルテイシア(セイラ)とも繋がりがあり、親しくしていた。身辺警護など重要な任務を負っていたに違いない。回想シーンを見るかぎりただの子守係のようにも見えるが。

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ここで一つ疑問が残る。ここまでの物語でジオン・ダイクンは全く登場していない。しかも現在のジオン公国の実権はデギンあるいはギレンが握っている。これはなぜか。

考えられる可能性は2つ。

一つは、ジオン・ダイクンは志半ばで急逝してしまい、後継者としてデギンがその遺志を継ぎジオンを建国、独立戦争を起こしたというストーリー。

もう一つは、デギンがクーデターを起こしてジオン・ダイクンから実権を奪ったというストーリーだ。

可能性としてはどちらもありそうだが、いずれのストーリーでもジオン・ダイクンはすでにこの世にいないだろう。

ここで同じくジオン・ダイクンの子であるシャアがザビ家に対して復讐を目論んでいることに着目したい。

この事情を加味すれば、後者のストーリーの可能性が高い。

地球連邦政府からの独立に向けて共同歩調をとっていたジオン・ダイクンとデギンだが、いつしか意見が対立するようになる。

そして、ついにデギンがクーデターを起こしジオン・ダイクンを亡き者にする。ジオン・ダイクンの家族も行方不明に。

デギンが公王となりジオン公国を建国。地球連邦政府に独立戦争を仕掛ける。

シャアは父ジオン・ダイクンの仇であるザビ家を討つため、身分を隠してジオン軍士官学校に入学、ガルマに近づく。復讐の機会を虎視眈々と狙い、ガルマを死に追いやることに成功、といったところか。

とすれば、セイラとシャアが連邦軍とジオン軍に別れて戦っているのは皮肉としか言えない。

少々想像力を豊かにしすぎたきらいもあるが、実に妄想をよく掻き立てる設定である。

ランバ・ラル、リュウが負傷!!

リュウ「セイラ、退け!うおーっ!」
ラル「おっ、不覚」
リュウ「おおっ!」
セイラ「リュウ!」
ラル「ううっ!」
セイラ「ランバ・ラル、退きなさい!」
ラル「ひ、姫様、おっ!」

アルテイシアとの思い出に浸っていたところにリュウが銃を乱射しながら突入。ランバ・ラルが負傷する。

他のジオン兵が現場に駆け付け銃撃戦に。その最中リュウも負傷してしまう。

ランバ・ラル死す!!

ラル「ハモン、すまぬ。木馬をギャロップで撃破してくれ。ランバ・ラル、戦いの中で戦いを忘れた・・・アルテイシア様が」
ハモン「どうなさったのです?」
ラル「うおっ!・・・またモビルスーツのガンダムか。・・・わしの戦っていた相手が皆、年端のいかぬ少年達とは皮肉なもんだ・・・」
ラル「君達は立派に戦ってきた。だが、兵士の定めがどういうものかよく見ておくんだな」

「ランバ・ラル、戦いの中で戦いを忘れた」とは詩的な表現である。

確かにセイラを見てランバ・ラルは「アルテイシア様がなぜこんなところに?」と一瞬戦闘を忘れてしまう。その瞬間をリュウに銃撃され負傷。作戦は失敗に終わった。

ハモンとの交信で「木馬をギャロップで撃破してくれ」と指示を出す。

ランバ・ラル自身ホワイトベース内にいるのであるから、これを撃破せよとは要するに自分は死んでもいいからとにかくホワイトベースを撃墜せよという命令に他ならない。

この命令を受けたハモンの心情はいかばかりであろう。

その直後、ガンダムのビームジャベリンがサブブリッジを破壊する。完全に勝負ありだ。

破壊した穴からガンダムがサブブリッジ内をのぞく。このシーンは怪獣映画を思わせる構図で、怪獣ににらまれるのに近い恐怖を醸している。

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最後までランバ・ラルは武人である。少年兵らに対して「立派だ」と賛辞を贈りつつも、「兵士の定め」として自ら爆弾を抱え散る様はまさに宇宙世紀の武士と呼ぶべき死に様である。カッコいい。

ハモンの攻撃

アムロ「ハモンさん!!ランバ・ラルが死んだんだぞ!!やめるんだーっ!!!」

アムロの叫びももむなしく、ギャロップは攻撃を続ける。

この攻撃の際、ブリッジ内のハモンは一切描かず、ギャロップが砲撃する状況だけを描いている。

ギャロップでホワイトベースを砲撃することは、ランバ・ラルを自らの手で死に追いやることを意味する。

ハモンはランバ・ラルの最後の命令を忠実に実行しているのだ。この時のハモンの心情は察するに余りある。

瀕死のリュウ

ブライト「静かに、静かに運ぶんだ」

ランバ・ラルとの戦闘に勝利したホワイトベースだが、その代償もかなり大きいものだった。

今回の白兵戦でホワイトベースのクルーの相当数が死亡するか負傷している。

ラストシーンでブライト達が銃撃を受けたリュウを担架で運んでいるが、その際のブライトのセリフが「静かに、静かに運ぶんだ」である。

直接どのような怪我を負ったのかは描かれていないが、この描写だけでリュウも命に関わる怪我を負ったことは窺える。

第20話の感想

実に濃厚な回であった。マクベやランバ・ラル、ハモンなど各登場人物の思惑が錯綜しており、フツーにアニメを見ているだけでは見逃してしまうよな細かい演出が散りばめられている。

また、今回セイラやシャアの過去、そしてジオン公国建国の経緯もある程度明らかになった。しかし、セイラやシャアの正体はホワイトベースのクルーにもジオン軍にも知られていない。こうした事情が通奏低音としてこの物語に厚みを与えることだろう。

ランバ・ラルの死に様はまさに武人である。ガルマの死に様もそれなりにかっこよかったが、それとはまた違ったかっこよさがある。

ラストシーンで重傷のリュウが描かれており、次回に向けて嫌な予感がしているのは自分だけではないだろう。

次回はハモンの復讐戦である。イセリナの復讐劇とはまた違った回になりそうで、そのあたりを分析してみたい。

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