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ランバ・ラル登場!ガルマを死に追いやったシャアの苦悩!~機動戦士ガンダム 第12話「ジオンの脅威」感想

レームダックのデギン

ガルマ「二ヶ月ほどの内に一度ジオンに帰ります。ですが父上、その前に必ず一つ大戦果を上げてご覧にいれますよ。親の七光りで将校だ元帥だなどと国民に笑われたくはありませんからね。では、お目にかかる日を楽しみにしております」
キシリア「まだこんな所にいらっしゃったのですか。閣下のお気持ちはお察しいたしますが、公王としてのお立場ゆえ、お役目だけは果たしていただき」
デギン「わかっておる」

家族で落ち着いてガルマの冥福を祈りたかったデギン。もうすぐ国葬が始まるのに一人自室でいつまでもガルマの思い出に浸っている。

キシリアの「閣下のお気持ちはお察しいたします」と言っているが、どこまで気持ちを汲んでいるかは推して知るべしだろう。

冒頭ナレーションで「デギン・ザビ公王はその実権を長男のギレン・ザビに譲り渡して開戦に踏み切った。」とあるように、デギンは公王として君臨しているけれども、実際の采配はギレンが行っている。もはやデギンはレームダック化してしまっている。

キシリアの言葉もとらえようによっては強烈だ。「公王としてのお立場ゆえ、お役目だけは」という言葉は「形式上公王の地位にあるのだから役目だけは果たしてくれ」という、デギンその人ではなく公王という立場にしか期待していないかのような発言である。

キシリアの言葉を遮るように「わかっておる」というデギンは、ザビ家内のパワーバランスの変化と自分自身のふがいなさに苛まれているようだ。

ランバ・ラル登場!

ラル「面白いものとはなんだ?」
クランプ「は、我が軍の識別表にない戦艦をキャッチしたのであります」
ラル「ほう、見せろ」
クランプ「例の木馬だと思われます」
ラル「うん」
ハモン「ガルマ様の仇を討つチャンスという訳ですか」
ラル「そう急ぐな、ハモン。奴の地点は我々の基地からはかなりの距離だ。航続距離を計算に入れなければな」
クランプ「このザンジバルなら問題ありませんが、ほかのはただの大気圏突入カプセルですから」
ラル「そういうことだ」
ハモン「では、このまま見過ごすおつもりですか?」
ラル「フフフフ、私の任務はガルマ様の仇討ちだ。ドズル中将からじきじきの命令をなんでやり過ごすものかよ」
ハモン「でも、只今は大気圏に突入している途中です。ご無理を」
ラル「しかし手出しをせずに行き過ぎる男なぞ、お前は嫌いなはずだったな」

ランバ・ラルの初登場である。

ランバ・ラルが軍人なのはわかる。ハモンはいったい何者なのか。会話や行動から推察するにランバ・ラルの内妻であろうが、それにしては軍服を着ていない。その辺りの設定は後々語られるのであろう。

それにしても、ランバ・ラルとハモンのやりとりは実に大人っぽい。

最初見たときはランバ・ラルが愛人を戦地に同行させているのかと思ったが、ハモンの身のこなしを見ているとすぐにそうではないということがわかる。

ブリッジに入ってくるとき、まずハモンが先に入室し、サッと横によけて、ランバ・ラルを迎えている。相当な教養のある人でなければこうした(もともとの意味での)レディファーストの行動をさりげなくこなすことはできない。

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また、ランバ・ラルの肩で2人がそっと手を重ねる描写も2人の絶対的な信頼関係を余すところなく表している。

さて、状況を確認すると、ドズルの命令でガルマの敵討ちのために地球にやってきたランバ・ラル、戦艦ザンジバルで大気圏に突入中である。そのとき、さっそくホワイトベースを捕捉した。

コムサイ2機も連れていることから、焦らず航続距離を計算するところなど、手練れという雰囲気を醸している。

ドズルからの直々の命令ということでやる気も十分だ。

ランバ・ラルが一筋縄ではいかない存在だということが存分に伝わってくる。今後、強敵としてアムロの前に立ちはだかることだろう。

精神的に参ってしまったアムロ

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暗い部屋にへたり込んで機械をいじるアムロ。窓からの光がアムロを照らしている。

フラウボウの問いかけにもぼんやりと返答するだけ。食事するときも目の焦点が合っておらず、精神的に相当参っていることが窺える。

機械を一心不乱にいじっているのも現実逃避だろう。

余裕のないブライト

セイラ「メインエンジンの3番ノズルが表示より2パーセント推力不足ですけど」
ブライト「実数値にしてどの程度だ?」
セイラ「およそ40トン」
ブライト「なんでそんなになるまで放っておいたんだ!」
ミライ「碌に整備する暇も取れないのを無理して・・・」
カツ、レツ、キッカ「わあーい!」
ブライト「ここは遊び場じゃないんだぞ!出て行け!」

メインエンジンの整備不良が判明。ブライトが周囲に「なんでそんなになるまで放っておいたんだ!」と当たってしまう。

ブリッジにやってきたカツ・レツ・キッカに怒鳴りつける様はリードと全く同じだ。ブライトに余裕がなくなってきている。

リード「ええい、やめないか、騒がしい!」
キッカ「・・・うわわああぁぁぁ!」(第6話)

ブライトが自室に控えて椅子にどかっと座る。

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光の当たり方や構図は先程のアムロと全く一緒だ。アムロと同様、ブライトも疲れ果てていることをあらわしている。

ブライト「どうぞ。なんだい?」
ミライ「別に」
ブライト「わかっているよ、言いたい事は」
ミライ「でしょうね。あなたが中心になる以外ないし、みんな頼りにしているんだから
ブライト「とも思えんが。」

部屋にやってきたミライに、ブライトが「わかっているよ、言いたいことは」とつぶやく。「クルーはみんな素人なんだから…」といった類のお小言をミライは言いに来たと言いたいのだろう。

しかしミライは「みんな頼りにしてる」という激励の言葉をかける。

ここで「怒鳴るな」とか「子供なんだから優しくしろ」とかといった小言を一切いわず、みんな応援してるよとさりげなく伝えるところが素晴らしい。

ホワイトベース内で一番人間ができているのはミライである。安定感抜群。

シャアの扱い

キシリア「例のシャアはどうしました?」
ギレン「ふるさとにでも帰ったんだろ。な、ドズル」
キシリア「そう・・・」

前回左遷されたシャアについて、ザビ家の対応がそれぞれで面白い。

ギレンは態度からしてシャア自体にあまり興味がなさそうだ。

ドズルはシャアのことを聞かれても答えようともしない。ガルマを守りきれなかったシャアのことを許せず、その名を口にすることすらはばかるといった様子だ。ドズルはシャアのことを二度と用いることはないだろう。

キシリアはシャアにはまだ利用価値があると考えている様子だ。部下に何やら指示している。今回のラストでシャアに接触しているので、今後シャアはキシリアの下で動くことになるのだろう。

雷初体験のみなさん

カツ、レツ、キッカ「ああっ」
カツ「なな、なんだい?今のは?」
フラウ「ジ、ジオンの新兵器かしら?大丈夫よ。どんな新兵器が来てもガンダムが防いでくれる」
ジオン兵「た、大尉、連邦軍の新兵器です」
ラル「うろたえるな!これが地球の雷というものだ」

ジオン・連邦お互いに雷を相手の新兵器と考える描写が面白い。

こういうシーンが入ることで、宇宙のコロニーしか知らない人がいるということを思い起こさせてくれる。

アムロは雷を見ながら、前回のイセリナを思い出している。イセリナに銃口を向けられ「仇」と言われたことがトラウマになっているのだ。

前半パートではアムロの症状を丁寧に描いている。暗い部屋でボーッとしたり、会話がたどたどしかったり、目の焦点が合ってなかったり、トラウマのシーンがフラッシュバックしたり、ヘルメットをかぶって苦しいと訴えたりと、40年前のアニメとは思えないくらいに実にリアルだ。

新型モビルスーツ-グフ

ラル「アコース、コズン、用意はいいか?」
アコース「はい中尉!」
コズン「準備OKです!」
ラル「アコース、コズン、我々が地球で戦うのは初めてだ。敵のモビルスーツが出てきても深追いはするな」
アコース「了解!」
コズン「了解!」
ラル「ハモン、行ってくる」
ハモン「戦果を期待します」
ラル「ハハハハハ、あせるなよ、ハモン」

ジオンの新型モビルスーツグフの初登場である。

ロボットアニメといえば、毎回違った敵ロボットが登場し対決するという演出が一般的だった。

動戦士ガンダムでは第12話でようやく新キャラの登場である。リアル路線を徹底的に行こうという製作側の意気込みを感じるところである。

ところで今回のランバ・ラルの戦闘目的は何だろうか。

「深追いはするな」といっているところや「戦果を期待します」というハモンに「焦るなよ」といっているところからすると、様子見と考えてよいだろう。

コムサイ2機も航続距離の問題から早々に戦線を離脱しているので、ホワイトベースを撃墜することまでは考えてないと思われる。

なお、このシーンでアコースがランバ・ラルのことを「中尉」と呼んでいるが、これは単純なミスであろう。

ザクとは違うグフ

グフとガンダムの初対決だ。

ラル「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」

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このシーンはかなりカッコいい。これまでのザクならガンダムのビームサーベルでやられてしまっていたところだろう。

しかし性能においてザクを超えるグフは簡単にやられないというところが描かれている。

続くシーンでのランバ・ラルの後退の仕方も見事だ。

グフとザク2機が後退したところにザンジバルが援護射撃をしながら降下。その間にグフとザクを収艦している。

戦い慣れしている感が存分に出ている。

ハモンも、ただランバ・ラルについてきただけの内妻かと思っていたら、ジオン兵に的確に指示し戦線から撤退している。

ジオン側の軍隊としての連携行動は相変わらず見ていて気持ちいい。

シャアは後悔している?

ギレン「我々は一人の英雄を失った。しかし、これは敗北を意味するのか?否、始まりなのだ!地球連邦に比べ我がジオンの国力は30分の1以下である。にもかかわらず、今日まで戦い抜いてこられたのはなぜか?諸君!我がジオン公国の戦争目的が正しいからだ!!一握りのエリートが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して五十余年、宇宙に住む我々が自由を要求して何度連邦に踏みにじられたかを思いおこすがいい。ジオン公国の掲げる人類一人一人の自由の為の戦いを神が見捨てる訳はない。私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!なぜだ!?」
シャア「坊やだからさ」

コップを指でトントンしながら演説を聞くシャア。

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第11話でデギンも杖で同じ仕草をしていた。

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シーンの意味としては同じと考えて良いだろう。ここで表現されているのは「フラストレーション」である。

あの時デギンはガルマの葬送方法をめぐってギレンと対立し「なぜ家族葬じゃだめなんだ。ギレンはどうしてわからないんだ」とイライラしていた。シャアもガルマの国葬を見ながらフラストレーションがたまっているのだ。

ではシャアは何にイライラ、もやもやを感じているのか。

第10話で、ガルマをはめたシャアは「君はいい友人であった」と言っている。

シャア「フフフフ、ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
ガルマ「なに?不幸だと?」
シャア「そう、不幸だ」
ガルマ「シャ、シャア、お前は?」
シャア「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ。フフフフ、ハハハハハ」
ガルマ「・・・シャア、謀ったな。シャア!!」(第10話)

口に出してしまった意味は大きい。

シャアは、ザビ家への復讐のためにガルマをいいように利用し、ホワイトベースとの戦いの中でガルマを亡きものにしようと企て、実行し、成功した。

しかし、シャアは最後の最後で「よい友人であった」と口にしてしまった。利用するだけ利用して殺してやろうと思っていた相手に友情を感じていたのだ。

おそらくシャアはその友情に自分では気づいていなかったのだろう。「よい友人であった」というセリフは、作戦が決まって一瞬油断した隙に表に出て来てしまったシャアの本心である。

シャアは「よい友人」であるガルマを死に至らしめたことを心のどこかで後悔している。シャア自身もそのことに気づきつつある。それが心のざわつきとしてコップトントンに表れている。

しかし、こうした本心を認めるわけにはいかない。だから「坊やだからさ」と言い捨てた。

「あいつは坊やだから死んだんだ」、「自分が手を下さなくても、遅かれ早かれいつか戦争の中で死ぬ運命にあったんだ」と自己正当化するような言い訳をしなければならなかったのは、認めたくない自分の本心(=良き友であるガルマを殺したことを後悔していること)に気づきつつあるシャアが自らの心にむりやり蓋をするために他ならない。

ブライトが言い返す

アムロ「こ、これが、敵・・・」
ブライト「何を言うか!ザビ家の独裁をもくろむ男が何を言うのか!」
アムロ「独裁・・・」

ギレンの演説をみてクルーたちは圧倒され一様に押し黙ってしまった。

しかしそんな中一人ブライトだけが「何をいうか!」と言い返す。一言だけだが言い返すことが大事なのだ。

前半パートでミライに「みんな頼りにしている」と言われ、自信なさげに「とも思えんが」と反応していたブライト。本人に自覚はなさそうだが、ホワイトベースの空気を作っているのはブライトである。

そのブライトがたった一言だが言い返した。これにクルー達は「自分たちのリーダーが言い返してくれた」と心強さを覚えたことだろう。そう思えることがホワイトベース内の士気を高めるのだ。

ブライトが何も考えず言い返したのか、クルーの顔色やブリッジの空気を読んで言い返したのかはわからないが、いずれにせよクルー達にとってブライトは頼れる艦長になりつつある。

第12話の感想

ギレンの演説によって戦況がより詳しく明らかになった。ここまで断片的に示されてきていたジオンの戦争目的も説明されている。

ジオンの国力が連邦の30分の1しかないとすれば、長期戦は絶対的にジオン側が不利である。

したがって、ジオン側は速攻で連邦軍を無力化して、講和を結び、独立国として国家承認させることになるだろう。

そのためにコロニーを落とすという非人道的な手段を取った。ジオンとしてはここで勝負をつけたかったはずだ。

しかし、予想に反して地球連邦軍が粘り、戦争は泥沼化。ゲリラも跋扈し始める始末。ジオン側にも厭戦気分が蔓延しつつある。

他方、連邦軍は新型モビルスーツを開発して巻き返してきたというのが現時点での戦況だ。

しかし、こうしてみてみるとジオン側が戦争に勝利することは現時点でかなり難しくなっていると言ってよい。国力に劣るジオンに起死回生の策はあるのだろうか。

今回ランバ・ラルとハモンが登場した。この2人の醸し出す大変大人な雰囲気がちびっ子向けアニメに大変似つかわしくない。今後も要チェックである。

今回シャアの「坊やだからさ」の分析を試みた。ガルマの死がシャアにとってここまで大きいものだったとは驚きである。このあともガルマは亡霊のようにシャアに付きまとうのではないか。

ともあれ今回は「ザクとは違うのだよ、ザクとは」や「坊やだからさ」といったガンダム名ゼリフも盛りだくさんでとても楽しめる回であった。

グフとガンダムの対決も楽しみである。

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