被災企業の復興に必要なリスクファイナンス
こんばんわ、ゼネラルコンサルタントです。
2024年9月の能登地方における豪雨により、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。被災地の皆様が一日も早く平穏な日常を取り戻されることを心より願っております。
私事ですが、ある企業に出向していた最中に激甚災害に遭い、災害対応、そして復興を共にした経験があります。被災された企業の1日でも早い復興に微力ながらお役に立てればと思い、被災企業の復興に至る経験をリスクファイナンスの観点でお話しいたします。
1.リスクファイナンスとは
被災直後で初動対応として行うべきことは「人命の確保」と「事業継続のための対応」の2つです。これらはBCPにより体系知化され、周知されてきておりますので、本記事では言及いたしません。詳細は中企庁が発信している中小企業BCP策定運用指針でご確認ください。
「事業継続のための対応」のうち、復興にあたって必ず必要になるが後回しになりがちのは「カネ」の部分になります。災害収束後、復興にあたっての資金確保の考え方が「リスクファイナンス」になります。
リスクファイナンスとは、「企業が行う事業活動に必然的に付随するリスクについて、これらが顕在化した際の企業経営へのネガティブインパクトを緩和・抑止する財務的手法」と、経済産業省は定義しています。
2.リスクファイナンスの具体例
小難しい定義を記載しましたが、具体的には
(1)保険
(2)自己資金(現預金)
(3)銀行融資
(4)その他
に大別されます。(1)保険、(3)銀行融資、(4)その他について、以下で詳細解説をいたします。
(1)保険
中小企業にとって、現実的なリスクファイナンス手段となるのが火災保険(財物補償)を代表とする損害保険です。
火災保険(財物補償)とは、自然災害等により建物・機械等に損害が発生した場合に、修繕または入替を行うために保険金が得られる保険となります。したがって、現状復旧を行うための費用に関しては火災保険で賄うことができ、中小企業の大半は加入している保険になります。
しかし、被災企業にとって現状復旧を行う費用のみで十分でしょうか?
例えば、被災により製造設備や建物が使用不能となり、修繕や入替に長期間かかるケース(=つまり休業せざるを得ない状況が長期間続くこと)では、復旧するまで売上が大きく減少(もしくは全く売上がなくなる)することになります。その間の固定費(特に人件費)は大幅に削減することは難しく、この資金手当は必ず行わなくてはなりません。
個人的な経験を再度申し上げますと、被災前に火災保険のみの加入であったため休業損害保険を具申し加入していたことで、幸運にも約6か月間の全面休業期間の固定費を休業損害保険にて賄えました。
(3)銀行融資
企業が自然災害で被災した直後は、日本政策金融公庫などの公的金融機関や民間金融機関共に、「復興に必要な資金調達は全面的にお任せください」と言うスタンスとなり、非常に心強い存在となります。
しかし、公的金融機関、民間金融機関から本当に復興に必要な資金を借り続けることはできるのでしょうか?
残念ながら「No」です。
いくら自己の責によらない自然災害でも、融資は融資、いつかは必ず返済をしなければなりません。しかも、20年、30年と言った超長期に渡る返済期間の容認もしてくれないケースが大半であると思います。
また、「当座貸越枠」の過信もNGです。
当座貸越は、あくまでも通常時に必要な運転資金で使用することが建前です。業績や財務悪化など信用状況に大きな変化があれば、金融機関は借入を拒むことはできます。
(4)その他
その他として、激甚災害で中小企業に限り、建物・機械等の復旧・入替費用の3/4の費用補助をする、「なりわい再建支援補助金(旧グループ補助金)」という補助金制度が創設される場合があります。
過去、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨災害、台風19号災害、そして能登半島地震など、激甚災害指定となる場合に「なりわい再建支援補助金」が創設されました。
個人的な経験を申し上げますと、出向していた企業では「なりわい再建支援補助金」を使い、事業設備の復旧、復旧をあきらめた復旧費用を上限に新規事業設備費用に充当することができる「新分野事業」制度を活用することができました。
一方で、なりわい再建支援補助金は税を使った補助金制度です。交付申請手続き、実績報告手続きなど補助金関係手続負担は、被災企業にとって事業復興で手一杯である中で大変な負担であることには変わりません。
3.最後に
自然災害により被災した企業が復興を果たすには大変な労力、お金、そして一致団結した社員のチカラが必要になります。
ここでは被災企業にいた経験をリスクファイナンスに焦点を絞って大枠のみお伝えしました。お困りのことがありましたら「クリエイターへのお問い合わせ」などにご連絡いただければ、でき得る限りお力になりたいと思います。
被災された企業の皆様の1日も早い復興をお祈りいたします。
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