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ザツダン「フレックスと裁量労働制」の【書き起こし版】

そもそもの労働時間の規則

営業 今回は巷で話題のフレックスと裁量労働制について話しましょうと。
人事 巷で話題ですかね?
営業 なんか、ちょっと前にフレックス制って流行らなかった?
人事 ちょっと前?
営業 だいぶ前かも。
人事 ああ、そうかも。
営業 とうとううちの会社も導入したんですよ。
人事 へえ。
営業 今まではよくある9時5時みたいな。
人事 9時5時だと昼休憩1時間だとするとトータル7時間になるよね。
営業 えっと、そうだね。
人事 7時間だとちょっとふつうとは言えないね。
営業 そのへんってどうなの?
人事 一般的に勤務時間っていうのは最長が8時間だから、うちは8時間ですっていうところが多いね。そういや昔、日本全体の平均を調べたことがあるんだよね。
営業 ほう。
人事 数年前だったと思うけど、その時は全事業所の平均が7時間45分とかそんなかんじだった。
営業 なんで?あ、そうか。7時間の会社とかがあるからそうなるからか。
人事 そうだね。イメージとしては6割7割が8時間で、7時間半までで2〜3割。で、それより少ないのが少しあるって感じ。
営業 逆にそれってさ、少なくてもいいの?5時間とか。
人事 別にいいよ。少ないのはOK、多いのは労働基準法に抵触するからNGだけど。
営業 そうだよね。1日8時間が基準だもんね。
人事 そうそう。だから別に1日5時間でもいいけど。
営業 おー。
人事 でも、1日5時間で週5日だったら週25時間しか確保できないけど、会社的にそれでもいいならって話。

労働基準法より良い就業条件は構わない

営業 そういう会社ないかなあ。給料同じでさ。
人事 給料同じだと厳しいね。給料5時間分になるけど週5日の合計25時間になりますと。今まで1日8時間だったから給料は8分の5になる。それでもいいかって会社ならあるかもしれないけどね。
営業 あー。でもそれじゃあ意味ないな。
人事 まあ、そういうもんですよ。
営業 払う側からすればそうだよね。「何言ってるんだお前たち」みたいな。
人事 そうね。当たり前だけど、働いてないものについては払わなくていいっていうのが原則だから。
営業 そりゃそうだ。
人事 そうでしょ?だから、今まで8時間だったのが5時間になるんだったら、そりゃ給料は8分の5ですよって。でも、そのへんは難しいんですよ。
営業 ほう。
人事 勤務時間って働く側からすれば短ければ短いほどいいっていうのが基本的な考え方なんだけど。
営業 うん。
人事 でも、ひとによってはそうじゃないよね?
営業 もっと働きたいってこと?
人事 そうそう。前にね、社労士の試験勉強してたときに通ってた学校の講師のひとが言ってたんだけど。
営業 うん。
人事 就業規則とか労働条件っていうのは、よくなる分には全然構わない。最低基準である労働基準法があって、これより良い分には全然構わないですと。
営業 はあ。
人事 労働基準法では8時間までは働かせてOKってなってるから、8時間より条件が良い分には構わない。じゃあ、8時間より良い労働条件って何ですかって聞いたら、ふつうは7時間とか6時間とか答えるんだけど、たまに長ければ長い方がいいって答えるひともいるんだってさ。
営業 ほう。
人事 要するにその分だけお金もらえるからね。
営業 ああ、まあそうか。
人事 まあそういう考え方もあるかもね。でも基本的には労働時間は短ければ短いほどいい。とはいえ、労働時間が短ければ給料減るのがふつうだから、どっちがいいかは実は難しい。

勤務時間が1日5時間の会社にして残業しまくれば…

営業 でもそのひともさ、労働時間は5時間だけど残業すればいいじゃん。そのほうが残業で割増ももらえるしって思わない?働きたいひとにとってはね。
人事 うーんとね。仮にそういうふうにして、つまり勤務時間5時間で残業したらその分払いますよってしたとき。私がその会社の経営者だったら5時間過ぎたときの残業代を0時間から1.25倍にはしないね。
営業 え、その残業時間のかけ率は自由なの?
人事 いや、8時間超えたら1.25倍にしないといけないけど。
営業 あ、なるほどね。そういうことか。
人事 そうそう。5時間を超えて8時間未満であれば1.25倍にする法的な義務はないから。
営業 へー。
人事 だから私が経営者だったらやらない。「なんでそんな勤務時間で1.25倍割増しなきゃあかんねん」って思うから。
営業 じゃあ極端な話、0.1倍でも良いわけ?つまりその超えた分、5時間1分から7時間59分までは。
人事 0.1倍?1割上乗せするってこと?
営業 いや、1割にしちゃう。
人事 それはダメだよ。だって本体がなくなっちゃってるもん。
営業 それはダメなんだ。じゃあ本体は保証するってことだから、1倍は1倍なんだ。
人事 そう、そうです。だから、5時間超えて2時間とか働いても、その2時間分はもちろん1倍で払うよと。でも、2時間分を0.1にしたら、そりゃボイコットが起こるわ。
営業 まあ働かないわな。
人事 そうそう、絶対にやらない。でも、残業代の料率、要するに0.25倍とかをいじるのは、法定よりよければ別に構わない
営業 なるほど。それも「最低基準」なわけね。
人事 そうそう。だから、会社によっては1.25倍じゃなくて1.3倍にするとかってところもある。
営業 へえ、いい会社じゃん。

人事 やるとしたらふつうは長ければ長いほど上げる。というか60時間以上は通常より上げなきゃいけないことになってるし。でも、前に私が聞いた例では、その会社はあえて逆にしてた。もちろん法律に抵触しない限りで。
営業 というと?
人事 具体的には10時間までは1.3倍で、10時間を超えて60時間までは1.25にするとか。そうすると、従業員側からすれば10時間まではいい感じの残業代もらえるけど、その先は低いからそれ以上はやらないで帰ろうと。そういうインセンティブになるだろうって狙いみたい。
営業 なるほどね。それは賢いわ。
人事 ちょっと待って、フレックスの話じゃなかったのか。残業代の話になってきたよ。

フレックス制とは

営業 フレックスっていうのは、私の理解だと、いつ働き始めてもいいし、いつ帰ってもいいよと。ただ、トータルの、たとえば月次の締めだったら、指定された労働時間は合計でやってねっていう話でしょ?
人事 そうですね。
営業 コアタイムってあるじゃん。この時間はいてくれっていう。
人事 はいはい。
営業 それはフレックス制に必須なの?
人事 いや、設けなくていい。
営業 じゃあ完全に自由なところもあるの?
人事 そうだね。まあ、そういうコアタイムを設けないフレックス制をフルフレックスって言ったりするね。たとえば、うちの場合だとコアタイムが10時から16時なんですけど。
営業 けっこう長いね。
人事 そうなんだよ。まあコアタイムが10時16時とかって決められてたら、その時間はいてねっていう時間になるわけだよね。
営業 うん。
人事 あとはフレキシブルタイムっていうのもあるんだけど。
営業 それはフレックス制のことじゃないの?
人事 ややこしいけど違うのよ。コアタイムは「この時間はいてね」っていう時間で、フレキシブルタイムっていうのは「この時間はいてもいいよ」っていう時間なんだよね。
営業 いてもいいよ?
人事 そう。たとえば朝8時から夜10時まではフレキシブルタイムっていうふうにして、その時間内で8時間とか働いてくれと。要するに外側の箱を設けて、その中で自由にやってくれっていうのがフレキシブルタイムね。
営業 うん。
人事 コアタイムっていうのはその名の通りコアで、この時間は原則働いてくれっていう時間。で、コアタイムとかフレキシブルタイムっていうのは、「付けたきゃ付ければ?」っていうもの。
営業 なるほどね。
人事 だから「うちは両方ともつけないですよ」っていう場合はフルフレックスって言って、何の限定もなく社員が何時に来てもいいし何時に帰ってもいいと。
営業 うん。
人事 ただ、例えば8時間の会社の場合で営業日が20日あったら、その月は8時間かける20日で160時間働いてくださいねと。それを超えた分は残業代払うよっていうのがフレックスです。
営業 なるほど。
人事 だから、私がひとに説明するときによく言うのは、フレックスというのは「平均」8時間っていうイメージですよと。
営業 うんうん。

フレックス制のメリット

人事 でも、フレックスが入ってない会社は「1日」8時間だよね。
営業 そうね。
人事 1日8時間、何がなんでもいなきゃいけないっていうのがふつうの会社。でも、フレックスは「いや、やらなきゃいけないことは日によって変わるでしょ」と。業務量は日々変動するじゃん。
営業 うん。
人事 でも、1日8時間絶対いなきゃいけない場合、例えば私なんかはそうなんだけど、毎月の業務量っていうのは波があるんだよね。
営業 そうね。
人事 具体的に言うと、給料計算があるから月の中旬はいろいろ忙しい。月初月末もけっこう色んなことがある。でも、それ以外はぶっちゃけ暇だってときがあるわけですよ。
営業 あるね。あるある。
人事 例えば毎月10日あたりは、ぶっちゃけ8時間もいらない。
営業 もう午前中だけでいいやみたいな?
人事 そうそう。極論したらね。データが来ないと進められないし、みたいな時があるわけですよ。でも、1日8時間だよって決められてる場合は、何がなんでも8時間いなきゃいけない。だから、午前で仕事終わってるのに、午後はぼんやりしてないといけないわけですよ。
営業 はいはい。
人事 でも、忙しいときはどうしてもやらなきゃいけない。たとえば絶対に8時間じゃ終わらない。10時間とか11時間とかかかるって日に、この3時間は残業になるわけでしょ。
営業 なるね。
人事 そうすると、この分は1.25倍して払わなきゃいけない。これって無駄じゃない?っていうのがフレックスの考え方なんですよね。
営業 じゃあ、逆にフレックスには払う側の考えが入ってるのかね?
人事 フレックスに関してはWin-Winだと思う。
営業 払う側も忙しい時に時間を回せるし、貰う側も自分で調整できるもんね。
人事 そうそう。働く側は自分で調整できてワークライフバランスが取りやすくなる。忙しいときはしょうがないけど、忙しくないときは早めに切り上げて家帰っちゃおとか、ゲームやろとかできるわけじゃん。
営業 ゲームはリアルだな。ありそうだわ。
人事 で、払う側からすれば、そんなに忙しくないときに会社にいられてその分払うよりは、さっさと帰ってもらって、その時間を忙しい時期に回す。そうすると残業代払わなくていいじゃん。
営業 ふんふん。
人事 だからフレックスというのは双方にとってメリットがある制度だと思う。

昔の企業の労働強度

営業 なるほどね。逆に言うと、昔の日本企業にそれがなかったのが不思議だね。だって昔もそうだったわけじゃん。急に暇な時間ができたわけじゃなくて、昔からそうだったわけじゃない。
人事 そうだね。
営業 でも会社には絶対いたわけじゃん。
人事 そうね。絶対いたと思う。
営業 朝早く来て夜遅くまで。
人事 昔はどうだったんだろうね?わかんない。
営業 逆に昔は帰ってたのかもね。半ドンとかでさ。
人事 あー。
営業 まあそれは土曜の話だけど。ふつうに午前休とか午後休とかとってたのかも。
人事 たぶんだけど、昔より効率があがってるっていうのもあるんじゃないかな。
営業 ああ、それは聞くね。だって昔は手紙とかFAXとか自分で物理的に持っていったわけだからね。
人事 そうだね。
営業 だから暇な時間も多いよね。移動時間なんて暇じゃん。
人事 そうだね。今はノートパソコンがあれば移動時間も仕事しようと思えば仕事できるし。
営業 昔はケータイないから誰も捕捉できないし。
人事 そうか。今はスマートフォンがあるもんね。メールチェックなんてどこでもできるからね。
営業 だから昔の仕事は本当に想像できないよ。話は逸れるけど。
人事 本当だよね。そういやさ、うちの父なんかの話を聞くとね。
営業 うん。
人事 昔は残業は結構あったわけですよ。50時間とか60時間とかふつうだったと。
営業 ほう。
人事 でも正直言って、そんなに苦じゃなかったって言ってたよ。
営業 パソコンにかじりついて60時間じゃないからでしょ?
人事 そうそう。そうなんですよ。たとえば、うちの父だったら、昔デパートで布団売ってたんだけど。
営業 布団?
人事 そう、布団。デパート勤務だったからね。本当に若手のときは店舗に回されるから。
営業 ああ、はいはい。
人事 布団売ってたときは、残業時間は何十時間もあったけど、実際何やってるかっていったら、業者さんを待ってたりとか。
営業 ふんふん。
人事 でも流石に暇だから荷下ろしでもするかとか。
営業 手伝ったりね。
人事 そうそう。なんだったらそのへんのひととくっちゃべったりとか。そういうのが実際は残業だったりしたわけだよね。荷物届かないとどうしても仕事できないから。
営業 はいはい。
人事 でもさ、今はそれできないじゃん。
営業 できないね。
人事 うん。たとえば荷物来るのを待ってても、じゃあその間パソコン使って売上の資料作れとかいう話になるわけじゃない。
営業 なるね。絶対になる。
人事 絶対なるでしょ?だから、仕事の密度が違ってきてるんだよね。
営業 そうだよね。だからそこだよね。昔は相当働いてたっていうけど、待ち時間も相当あったんじゃないのって。
人事 そうそう。だから単純に時間数で比較はできない。
営業 うーん。
人事 て、違う。フレックスの話じゃなかったのか。

フレックス制を導入しない理由

営業 なるほどね。まあ今の時代はフレックスにして働く側にとっても良い方向にしてるのかもしれないね。
人事 そうだね。フレックスを導入しない理由というのは、私にはあまり思いつかない。
営業 管理したいからかね?
人事 そう。まさしくそうなんですよ。うちもフレックス入れてるけど、さっき言ったとおりコアタイムが長いんですよ。
営業 うん。
人事 個人的にはコアタイムなんていらんと思ってるんですけど。でも、なかなか外せない事情があって。それはほとんど管理者側の都合
営業 なるほど。
人事 要するにマネージャーが嫌がるの。なんでマネージャーが嫌がるかっていったら頭が堅いんスよ。
営業 はあ。
人事 ものすごく悪く言えば「俺様が声をかけたい時にいないのが嫌」なんだよ。
営業 ああ。それはそうだよね。上からしたらね。
人事 そう、上からしたらそうなの。俺様が仕事を振りたいときにそのひとがいないのが嫌だからコアタイムを長めに取りたい。そういうふうに考えるから、なかなかコアタイムを短くできない。
営業 うん。
人事 でも、労働者側にとってはコアタイムはないほうがいいでしょ?
営業 うん。ないほうがいい。
人事 より自由にできるからね。だから、なるべくそこにいてほしい頭の堅いマネージャーと、自由を増やしたい一般の社員との兼ね合いだよね。
営業 あー。じゃあ伝統的な老舗の企業はフレックス入れづらいのかもね。
人事 そうだね。「いや、やることやってくれればそれで良いよ」っていう考えが支配的な会社だったらフルフレックスでいいですよ。
営業 うんうん。
人事 でもそうじゃなくて、部下がそこにいないと気が気でしょうがないと。
営業 えー。
人事 そういう会社の場合はそもそもフレックス諦めたほうがいいかもしれない。
営業 なるほどね。
人事 そういえばちょっと前、数年前かな?フレックスを導入したはいいけど、やっぱりやめたって会社が日本の古い会社でいくつか出たんだよね。
営業 マジか。
人事 それはそういう理由。勤怠管理も難しくなるし。
営業 そうね。働いてるのか働いてないのか分からない。
人事 そうそう。でも、逆にコロナショックでそれはもうどうでもよくなっちゃったじゃん。
営業 あー。
人事 どうでもよくなったっていうと言い方悪いけど。在宅だと勤怠管理も何もないわけだよ。
営業 うーん。
人事 まあ、それでも無理して社員の行動を把握しようとしてる会社はいくらでもあるわけだけども。
営業 うん。
人事 まあ、どちらにせよなおさら勤怠管理が難しくなっちゃったから、今はフレックス制度の自由度を上げようって動きになってるかな。
営業 でも、会社に行ったら働いてるのかって問題もあるわけじゃん。
人事 そうだね。
営業 だったらフレックスでいいじゃんって思うよね。どのみちわかんないんだからさ。

フレックス制が向かない職種

人事 そうね。そこにいること自体が重要なのか、それともやることやってくれることが重要なのかってことかな。だから、逆に言えば、フレックス入れられない業種っていうのもあるよ。
営業 ああ、はいはい。工場とかはそもそも無理だもんね。
人事 そうそう。そこにひとがいることが重要な仕事もあるわけだよ。コンビニの店員とかね。
営業 ああ、そうだね。そこにいないとね。
人事 コンビニの店員が「フレックスにしてくださいよ」って言っても「お前何言ってるの?」で終わりですよ。
営業 まあね。
人事 これは労働基準法に書いてあるんだけど、フレックスっていうのは始業の時間と終業の時間を労働者の決定に委ねるってされてるんだよね。
営業 ほう。
人事 だから、いつ始めてもいいし、いつ終わってもいい。で、かつそれを従業員に任せないといけないわけですよ。
営業 ふんふん。

フレックス制を悪用する管理者

人事 でも、たまにその辺を理解していないマネージャーがいる。
営業 ほう。
人事 例えば「フレックスしたいときは事前に言え」と。いや、「事前に言え」くらいならまだ良いんだよ。
営業 うん。
人事 たまに「事前に申告した上で、俺様が承認したら良いよ」とか言い放つマネージャーがいたりするんだけど。
営業 やば。
人事 それはフレックスでもなんでもない。
営業 むしろフレックス以前よりも酷くなってるじゃん。
人事 でも実際そういうマネージャーがいるんですよ。
営業 マジか。
人事 それは本当に社員から文句出てきたけど。
営業 そりゃそうだ。
人事 そういうふうに間違って理解してるマネージャーがいたりするので注意は必要かな。
営業 うん。
人事 フレックス使いたいなら事前に言ってねくらいなら良いけど、事前に言ってマネージャーが承認しないとダメとか言ったらもうダメだね。
営業 承認とか趣旨に反してるもんね。自由に決められるっていう。
人事 そうなんですよ。だからフレックスをどう運用してるかっていうのは会社によって文化の違いがでるところかな。

フレックス制を悪用する労働者

営業 なるほどね。ふとした疑問だけど、総労働時間を超えたら残業代が出るわけじゃん。たとえば月締め160時間で170時間だったら残業代は10時間になるわけでしょ?
人事 はい。
営業 完全フルフレックス制の場合、じゃあ私夜型だから夜10時から朝7時まで仕事するわってひとも同じ給料なの?
人事 いい質問ですね。
営業 だってあるじゃん。朝寝てて、勝手に自分の仕事を夜勤にしちゃうっていう。
人事 あのね、そういうのが嫌だからコアタイムがあるっていうのもある。
営業 あー、なるほどね。やめろと。
人事 フルフレックスにするとそういう弊害が出てくる可能性があるんだよね。
営業 それはだって、ダメって言えないでしょ?
人事 言えないね。
営業 やってるひとに対して「朝に来い」とか。
人事 言えない。でも、もしそれをやられると、例えば夜10時から朝7時まで働いたとすると、会社としては深夜残業をつけないといけない。
営業 そうだよね。
人事 だから10時から5時の時間については深夜残業にあたるから、その時間分は0.25上乗せしないといけない。
営業 おー、いいじゃん。
人事 ただ、やっぱり会社がそれを黙ってないよね。
営業 まあ指摘や指導は入るか。ちょっといいかなと。
人事 そうだね。いやいやと。そりゃもちろん法律上は構わんよ?
営業 なるほどね。
人事 私、夜型だから夜働きますわって。
営業 勝手に?
人事 勝手にそういうふうにして、誰もいないオフィスに来て仕事してると。いろいろ不健全だよね。
営業 まあこすい感じは受けるね。
人事 そう。それにお前本当に働いてるのか?って話にもなる。
営業 確かに取引先とかもあるもんね。
人事 そうでしょ?そもそも「お前そういう働き方じゃ機能しないだろ」って。営業とかだったら絶対無理だよ。
営業 確かに。
人事 まあシステムエンジニアとかだったら。
営業 まあ。
人事 でも、本当に夜型だとすると、他の社員と接点がなくなるわけじゃん。
営業 うん、ゼロになるね。
人事 本当にそれで機能する仕事だったら、社員である必要ないよ。
営業 あー、そういうことか。業務委託でいいやってなるね。
人事 そう、業務委託でいい。だってチームプレイ必要ないんだから。
営業 うーん。
人事 そういう話にもなるから。だから実際にフルフレックスにしている会社で、それを本気でやるひとはあんまりいないんじゃないかな。
営業 それこそ外資で、アメリカとよく話すから時差で朝なんですっていうパターンとか。

フレックス制を外す選択肢はある

人事 うーん、そうねえ。でも、仮にそういうことをやるひとがいたとしても、そういうひとは外すよね。
営業 なるほどね。ちょっとおかしいと。
人事 いや、フレックスって外せるんですよ。
営業 あ、そうなんだ。
人事 外せるというか適用する労働者の範囲を限定できる
営業 あー、なるほどね。
人事 そりゃそうじゃん。ひとつの会社でも、全員が全員フレックスできるかって言ったら、フレックスできない仕事もあるわけですよ。
営業 はいはい。
人事 例えば受付がいる会社だったら、受付のひとにフレックスやられたら困るでしょ?
営業 そうね。
人事 会社の中にはあなたはここにいることが仕事ですってひともいる。警備員を自前で雇ってるとかね。警備員にフレックスで警備されたら困るじゃない。
営業 うん。
人事 この仕事とかこういう条件のひとはフレックス適用しないってこともできるので。だから、あんまり変なことすると会社はそのひとをフレックスから外すことを検討すると思う。
営業 なるほどね。じゃあ私は夜だけやるっていうのはできないわけだ。
人事 そうね。勤怠がそもそもおかしいってひとは外すし、あとは試用期間中とかね。
営業 あー、はいはい。
人事 最初3ヶ月はフレックスなしっていうのは十分ありえると思う。
営業 そういう法律を逆手にとることはできないわけだ。
人事 そうだね。そういう場合は「じゃあお前はフレックス外すわ」で終わりだよ。
営業 ふつうに9時6時に来てねってなっちゃうわけか。
人事 そうそう。で、なんだったら「お前勤務態度おかしいから、指導期間設けるわ」みたいなことにもなりかねない。
営業 本当にお互いに良くないね。
人事 そういうこともあるから、フルフレックスであっても制度を逆手にとって変なことをするひとは実際にはあまりいないと思う。
営業 常識的な使いかたをすると。
人事 仮にフルフレックスにして勤怠が悪くなったり、チームプレイを軽視するようになったりしたら、じゃあフレックス外して様子見るかってことになっちゃうから。
営業 じゃあ、あんまり自由にはできないと。
人事 なんていうか、良識をもってやるというのが大前提というか。そういうのが背景にある制度だと思うよ。

数分の遅刻なんて馬鹿らしい

営業 そもそも細かい遅刻とか早退とか馬鹿らしいっていうのもあるよね。
人事 あるね。
営業 お互いね。1分遅れたら遅刻ってなんだよとかあるじゃん。
人事 そう。そうなの。私さ、ふたつの法人の人事をみてるんだけど。
営業 うん。
人事 どっちも同じ業種なんだけど会社の文化っていうのは違くて。片方の会社は「いやいいよ、1〜2分の遅刻とか」っていう雰囲気なんだけど。
営業 はいはい。
人事 片方は「1分2分でも許さない」というノリなんだよね。
営業 なるほど。
人事 だから1分とか2分の遅刻でも有休使ったりしてたんだよね。
営業 え?有休使うってことは一日休むってこと?
人事 いや、半休。
営業 半休か。もったいないね。
人事 そう。「なにこの半休。意味わからん」って私は思ってたんだけど。
営業 はー。
人事 たとえば5分遅刻したから半休にすると、4時間半休として使うことになるから、これはたいてい残業になるんですよ。
営業 なるほど。
人事 5分の遅刻をカバーするため4時間半休使うってことは、給料が払われる時間を3時間55分足すってことだからね。
営業 そうだね。
人事 でもさあ、これって有休の買取に等しいじゃないですか。
営業 確かに。
人事 だから私はものすごく嫌だったんだけど。でも、それを慣習としてやってたんだよね。
営業 ほー。
人事 というのは5分遅刻になることが許せなかったから。半休にしてしまえばそれは遅刻ではなくなるからね。
営業 なんかそれ馬鹿みたいだね。
人事 馬鹿みたいでしょ?だから私はフルフレックスでいいと全然思うんだけどね。
営業 コアタイムあるとその問題は結局残るわけでしょ?
人事 残るね。
営業 5分コアタイムに遅れたら半休使ってカバーするとか。
人事 そうだね。
営業 はー。じゃあフレックスって言ってもコアタイム次第だね。
人事 そうだね。でも、気持ちはわかるんだよ。特にフレックスを初めて導入する会社とかはね。
営業 うん。
人事 そういう場合はコアタイム長めに取りたいという気持ちはわかるけれども。慣れてきてさ。これはもう相互の信頼の上に成り立ってる制度だから。どちらかといえば成果主義だしね。やることやってくれれば自由に決めてくれていいよっていう考え方がベースにあるから。
営業 そうね。
人事 仕事の始まりの時間と終わりの時間を従業員に委ねるというのは、これは信頼なくしてはできないですよ。
営業 そうだよね。
人事 でしょ?「こいつはや暇なときはさっさと家に帰っちゃうけど、でもいざとなったらちゃんとやってくれる」と。そういう信頼がないとできないよ。
営業 なるほどね。ある種、成熟してる会社向けだね。
人事 そうだね。だからやっぱりコンビニの店員にはできない。
営業 そうだね。いないと困るしね。
人事 そうね。だからどんな会社でも絶対に導入できるっていうものではない。
営業 はー。なるほどね。

裁量労働制はフレックス制とは全く違う

人事 そういえば最初にちょっとだけ言った裁量労働制。
営業 あ、そうそう。それは私は完全に同じふうに思ってました。
人事 同じじゃねえス。
営業 全然違う?
人事 うーん。実態として、働く側としては、違いはあんまり感じないと思うけど、法律上の考え方は全然違う。
営業 ほう。
人事 そもそも裁量労働制には2種類あるんだよね。専門業務型の裁量労働制と企画業務型の裁量労働制っていうのがあるの。
営業 うん。
人事 で、専門業務型の裁量労働制っていうのは、適用できる職種が決まってる。でもフレックスにはそういうのはない。
営業 なるほど。
人事 会社と従業員との間の取り決めで「じゃあフレックスやろう」ってことになればできるけど、裁量労働制は「裁量労働制やろうよ」ってなっても、たとえば営業には適用できない。
営業 あー、職種で縛られてるから違うわけだ。
人事 そう。で、裁量労働制はどういう考え方かっていうと。
営業 うん。
人事 特に専門業務型によく当てはまるんだけど、「その仕事は時間の長さじゃなくて、出来上がったものの質で決まるよね」と。そういう仕事に対して適用できる。
営業 なるほど。クリエイターとかだね。
人事 まさしく。だから適用できるのは、例えばライター、エディター、デザイナー、テレビプロデューサー。あとは、プログラマーでもかなりクリエイティブなほうのプログラマーとかね。そういうのじゃないとできないんだよ。あ、あと、わかりやすいのはコピーライターね。
営業 ほう。
人事 コピーライターの仕事はさ、たとえば8時間ずっと考えてたら良いコピーができるかっていったらそうじゃないじゃん。
営業 そうだね。
人事 「そういうひとたちも時間で縛るのはおかしくない?」っていうのが、専門業務型の裁量労働制のそもそもの考え方なわけですよ。
営業 なるほど。
人事 だから、たとえば裁量労働制で働いてるデザイナーとかは、会社来て「今日気が乗らないな」っていって5分で帰る。
営業 自由だね。
人事 でも、そのひとはその日は8時間働いたってことになる。
営業 あ、そういう内容なんだね。8時間になるんだ。
人事 いや、8時間じゃなくてもいいよ?7時間半でもなんでもいいんだけど。
営業 会社によって変えていいんだ。
人事 そう。要するに会社の所定勤務時間働いたよってことにする。実態とは関係なく。
営業 うーん。
人事 その人の仕事は時間の長さとか量じゃなくて質によって評価されるものだから。5分でもめちゃくちゃいい仕事をする場合もあるわけじゃん?
営業 ふんふん。
人事 それはそれでいいじゃんって話なわけだよ。だから裁量労働制にはそもそも残業という概念がない。
営業 じゃあ残業代はないんだ。
人事 ない。
営業 ほー。
人事 仮に16時間仕事したとしても8時間としてみなすし、仮に5分しか仕事してなくても8時間というふうにみなしちゃうからね。
営業 じゃあ効率よくできるひとのほうが向いてるね。向いてるというか気持ちは楽だね。

裁量労働制のほうが労働時間がより柔軟

人事 そうだね。まあ、働いている側からすればフレックスも裁量労働制も柔軟に働けるという点では同じなんだけど、裁量労働制のほうがより柔軟だね。
営業 そうだよね。完全なフレックスだね。
人事 まあね。
営業 別に月次の合計労働時間も縛りはないですよと。
人事 そう。そういうことなんですよ。
営業 ほー。
人事 フレックス制度っていうのは、難しい言い方をすると、勤務時間の算定の枠組みの例外。でも、裁量労働制は勤務時間の算定の方法の例外なんですよ。
営業 なるほど。
人事 だからフレックス制度で働いているひとたちというのは、時間で働いているというくびきからは逃れられないわけですよ。
営業 うーん、結局トータルの時間だもんね。
人事 そうそう。要するにトータルで考えていいよっていう例外を設けているだけであって、働いている時間をきっちり算定して積んでいくという考え方は従来と同じなんです。
営業 同じだね。
人事 そこは昔からの考え方と同じ。でも、裁量労働制は「いや、そもそも知らん」と。
営業 任せると。
人事 そう。実際に1時間しか働いてなかろうが16時間働いていようが、もうそれは8時間だとみなすっていうのが裁量労働制なんだよね。だから残業という概念は基本的にはない。
営業 なるほどね。

裁量労働制=『定額』働かせ放題ではない

人事 ただややこしいのは、裁量労働制のひとにも深夜っていう概念はある
営業 あ、あるんだ。
人事 あるよ、もちろん。だって深夜っていうのは。
営業 別に関係ないんだ。
人事 そう、関係ない。深夜に働いたときに賃金を上乗せしないといけないのは、「仕事が長くなってごめんね」っていうのじゃなくて「変な時間に働かせてごめんね」っていう意味だからね。
営業 あー、なるほどね。
人事 それは裁量労働制のひとにも同じでしょ?
営業 そもそも夜勤自体が高いわけだ。時給高いもんね。
人事 そうそう。だから仮に裁量労働制のひとが夜勤した場合は、0.25倍上乗せしないといけない。
営業 なるほど。
人事 それに、さらにややこしいことに、裁量労働制のひとにも休日はあるんですよ。
営業 はあ。
人事 だから休日出勤した時の残業の上乗せ、要するに0.35倍の上乗せっていうのはあるんですよ。だからややこしい。
営業 確かに。じゃああれだね。裁量労働制を入れたからって完全放置はできないわけだ。ちゃんと仕事した時間といつ働いたかを管理しないと本来は給料払えないもんね。
人事 そう。素晴らしい指摘ですね。
営業 はあ、ありがとうございます?
人事 そういうことをですね、労働基準監督署は口をすっぱくして言ってるんですよ。
営業 なるほど。完全に裁量だからといって放置するなと。
人事 そうそう。裁量労働制だからといって勤務時間をモニターしなくていいってことじゃないからねと。
営業 別に法律がありますってことだよね。
人事 そうね。深夜働いてるんだったらその分割り増ししないといけないし、休日働いてるんだったらその分も割り増ししないといけない。
営業 うん。
人事 あと、これは労働基準法じゃなくて安全衛生法になるんだけど、従業員の勤務時間を把握しなさいって定めてあるんだよね。なんでかっていったら、働かせすぎて体調崩したりするでしょと。
営業 そうだね。
人事 それを見るのも会社の責任だからねっていうのが安全衛生法にあるんですよ。だから裁量労働制だからって勤務時間をまるで見なくていいっていうのは違いますよと。
営業 なるほどね。
人事 そういうことを労基署は言ってます。
営業 まあそりゃそうだわな。よく考えたら。
人事 そうでしょ?でもね、裁量労働制っていうのは悪用する会社が多いんですよ。
営業 ああ。だって聞くだけで相当あやしいもん。
人事 そうでしょ?そうなんですよ。
営業 うん。
人事 会社側からすれば「お、残業代払わなくて済むの?ラッキー」って話になるわけだから。
営業 なるねー。
人事 残業払わないでいくらでも働かせていいと理解する会社があるわけだよ。
営業 あー。
人事 要するに本人の裁量に任せればいんでしょと。それでものすごく拡大解釈をする。これは実際に某証券会社がやってたんだけど。
営業 え?実例があるの?
人事 そう。誰もが知る超大手の証券会社の例。
営業 やば。
人事 営業のひとに裁量労働制を適用したんですね。
営業 うーん。
人事 それはまあつまり言いくるめたんだろうね。
営業 ああ、このほうがいいよと。
人事 そう。多分だけどね、営業のひとに「いや、お前は自分の裁量でいろいろ決めてるでしょ?だから裁量労働制を適用するから」って言われて、営業のひとに裁量労働制を適用して。で、営業のひともそうかなって。
営業 うん。
人事 でも、そもそも言葉がおかしいんだけどね。だって営業には元々適用出来ないんだから。でも適用するって言って、言いくるめて。まあそういう某証券会社があった。
営業 へー。それは揉めたの?
人事 いや揉めたとかじゃなくて法律違反ですから。
営業 ダメじゃん。
人事 だって裁量労働制を適用できる職種はこれですよって限定されてて、そこに「営業」っていうのはないからね。
営業 なるほど。
人事 だからグレーとかの曖昧な領域じゃなくて一発ブラックの法律違反です。でも、そういう会社が後を絶たんのですよ。
営業 悪用し始めるわけだ。

裁量労働制は悪用されやすいので縛りが厳しい

人事 そう。悪用する会社が後を絶たないので。実はうちの会社は裁量労働制を入れてるんですが。
営業 うん。
人事 いろいろうるさい。
営業 縛りがいろいろあるの?
人事 というか、定期的に色々言ってくる。
営業 労基署が?
人事 労基署とは限らないけど、まあ公的機関が。
営業 へー。
人事 前にあったのは、その某証券会社がやっちゃった直後だったんだけど。
営業 うん。
人事 国会の討論とかで必要だったらしいんだけど、実態を調べたいとかいうのでめんどくさいアンケートを送りつけてきたことがあるよ。
営業 へー。
人事 裁量労働制を適用するってなったら労基署に言わないといけないのね。だから労基署はどの会社が裁量労働制導入しているか知ってるから、そういう会社には目を光らせてる。
営業 なるほどね。
人事 うちはちゃんとやってるんですけどね。勤怠というか、働いている時間も出してもらってるし。
営業 うん。
人事 だって、裁量労働制で働いてるひとのなかには、1ヶ月の所定労働時間に足りてないひとがいるもの。
営業 あー、そっか。別にいいんだもんね。
人事 そう。別にいいから。1時間とか2時間とか足りない勤怠を出してくるひとがいるけど、それはそれで別にいい。それが裁量労働制のもともとの考え方だから。
営業 ふんふん。
人事 でも、フレックスでそれをやると、「いやいや、あなた1時間働いてないじゃないですか」と。「じゃあこれ給料から引くからね」って話になる。
営業 あー、なるほどね。いろいろ聞くとどっちが良いか難しいな。
人事 そうなんですよ。でも、どちらも社会人1年目のひとには適用できないかなって思う。
営業 うーん。そうね。
人事 裁量労働制もクリエイティブな仕事に限定されてるし、いろいろ口出しするなって法律で書かれてるんだよね。
営業 ふんふん。
人事 フレックスだと仕事を始める時間と終わる時間を社員が決めるっていうのが大前提としてあるけど、裁量労働制も仕事の進め方は社員が決めるっていうのが前提としてある。ていうか、細かくあれやれこれやれって指示するのは裁量じゃないじゃん。
営業 確かに。
人事 だから、社会人1年目のひとに裁量労働制入れられないと私は思うんだけど。
営業 うん。
人事 でも、何かのニュースで新卒に裁量労働制適用しているって会社を聞いたけど、それは難しいんじゃないかなあって私は思ってるけどね。
営業 でも最近は新卒でも年収一千万とかっている会社も増えてきたじゃない。
人事 うーん。
営業 だからそういう傾向は強まるんじゃない?新人でもクリエイティブのひともいるだろうって。
人事 うーん、まあねえ。その分野でちゃんと勉強してきて、実際に仕事の経験はないけど、それに等しいような経験がありますと。そういうひとであればいきなり裁量労働制でもいいかなって気はするけど。
営業 なるほどね。
人事 でも、例えば文学部を卒業したひとがデザイナーになりますって言って、専門教育を受けたわけでもなく、デザイナーとして採用されたからといって、裁量労働制にできるかっていったら、私はできないと思う。
営業 まあそうだよね。わかんないし。
人事 そう、わかんないし。
営業 なるほどね。聞くと難しいなあ。
人事 だから、裁量労働制は全体的な傾向として風向きがあやしいというのもあるし。悪用する会社が多いからね。
営業 うん。

裁量労働制よりフレックス制を導入すれば事足りる

人事 フレックスがあるんだったらフレックスでもいいんじゃない?って考え方もある。
営業 確かに。
人事 似たようなことはできるからさ。
営業 そうだね。
人事 日本の場合はさ、裁量労働制だから必ずしも会社の所定労働時間働かなくていいって言われてても、やっぱり働いちゃうよね。
営業 うーん。
人事 1ヶ月の勤怠をとって、フレックスみたいに1ヶ月のトータルの所定労働時間をカウントして、ちょっと足りないときに「いいやこれで」って出さないでしょ?やっぱり。
営業 なるほどね。
人事 「ちょっと足りないからもうちょっと働くか」って思うんじゃない?デザイナーの人でも。
営業 まあよほど目に見える成果がないとそうなっちゃうかもね。
人事 だったらフレックスでもいいじゃないって考え方もある。
営業 働く側からしたら難しいな。どっちがいいかな。まあ裁量のほうが本当に何にも縛られなくていいよね。
人事 そうだね。コアタイムとかも関係ないし、足りなくても構わない。でも、その分残業代は出ないからね。
営業 そうだよね。深夜にやらない限り出ないわけだからね。
人事 そうそう。で、深夜はやらないほうが良いから。もちろん。
営業 そりゃそうだ。
人事 自由度が高いし、会社にはごちゃごちゃ言われない。でも、その分リスクというか、残業代払われなくなる。
営業 でも、話聞いてると、悪用する会社があるから。実質的に朝9時夜9時勤務なのに、残業0にされてっていう会社がありそうだもんね。
人事 ある。それが本当に多いんですよ。
営業 そう聞くと裁量を謳ってる会社はちょっと警戒しちゃうかもな。それだったら、まだフレックスのほうが信頼できる気がする。
人事 そうだよね。あとは、ほら。そもそも裁量労働制は適用できないから。
営業 あ、専門じゃないと?
人事 そうそう。私は人事だけど、人事には残念ながら裁量労働制は適用出来ない。営業ももちろん適用出来ない。
営業 うん。
人事 裁量労働制は適用できる範囲がかなり限られてるけど、フレックスのほうはもっと柔軟にできるじゃん?まあ一部のその場にいなければ意味がない系の仕事のひとには使えないけど。だからフレックスのほうが会社としてはいろいろと使い勝手がいい。汎用性が高いっていうかね。
営業 なるほどね。
人事 あとは、結局日本人ってまじめだから、ちゃんと働くんだよ。7時間半ですとか8時間ですって言われたら、ふつうその時間働くよね。
営業 まあ、そうね。それをやっぱり目安にするよね。
人事 仮にコピーライターだとしてもさ、やっぱりちゃんと決められた時間働くでしょ?
営業 確かに。

裁量労働制のもう1種

人事 あと、裁量労働制は厳密にいうともうひとつあって。
営業 はいはい。
人事 最初にいったけど、企画業務型裁量労働制っていうのがあるんだよね。
営業 ふんふん。
人事 でもね、これがめちゃくちゃややこしいんですよ。企画型の裁量労働制っていうのは、会社の戦略とかを立てるひとを念頭に置いてるんだけど。
営業 はあ。
人事 かつひとりで、スタンドアロンで働いてるプレイヤー。でも、めちゃくちゃ専門知識があって、会社のストラテジーを立案してもらってるっていうような感じをイメージしてくれれば良いんだけど。
営業 はいはい。
人事 こういうひとたちも自由に動けるじゃん?
営業 まあね。
人事 でも、さっき言った専門業務型裁量労働制にはそういう職種はないんだよね。クリエイティブとはちょっと違うし。
営業 うん。
人事 こういうひとたちにも裁量労働制を適用できるんだけど、適用していい条件がめちゃくちゃ面倒くさくて。
営業 はあ。
人事 まず労使委員会というのを立ち上げて、そこで協議の上でOKってならないと導入できない。で、その労使委員会は定期的に開催した上で、かつ記録を取らないといけない
営業 へー。
人事 あとは企画業務型だと、適用する本人の同意が必要だったりするんだよね。
営業 はいはい。
人事 例えば営業職だったら企画業務型の裁量労働制を適用しようと思えばできる。でも、その前のハードルがめちゃくちゃ高いんですよ。
営業 じゃあやっぱり、制度としていかに慎重になってるかだよね。
人事 そうそうそう。そういうことなんですよ。
営業 なるほどなー。
人事 専門業務型の裁量労働制だったらそのひとがその仕事を担当しているってだけで適用できるけど、企画型だと、会社がへんなことをできないようにいろんなシステムを作った上でようやく導入できる。だから、ぶっちゃけ、メンテナンスのコストがかかりすぎるかなって気がする。
営業 わざわざ労使委員会を立ち上げてってなるよりは、いいやフレックスでってなりそう。
人事 うん。あとは、3ヶ月とか6ヶ月とかごとに1回、労基署に報告書出さなきゃいけなかったりするんだよ。面倒臭いでしょ?
営業 簡単に使われることをかなり警戒してるね。
人事 そうなんですよ。だから企画業務型の裁量労働制を適用している会社は確か0.3%とかだったと思う。
営業 まあそうだよね。
人事 で、専門業務型の裁量労働制を適用している会社も少ないの。確か数%だったと思う。でもフレックスを適用してる会社は圧倒的に多い。

フレックス制の浸透

営業 そうだよね。うちの会社ですらやってるってことは、かなり浸透してるんじゃないかなって思う。
人事 フレックスは入れやすいんだよね。
営業 うん。
人事 今までフレックス入れてなかった会社も「じゃあちょっと入れてみよう。働き方改革とかいろいろやかましいからね」とか、でもマネージャーの反対があると。「じゃあコアタイム長めにしておきましょう」とかいうふうにスタートできるじゃん。
営業 確かに。
人事 働く時間を柔軟にできることによって、残業代も減るからね。
営業 そうだね。
人事 だから会社にとってはメリットがあることだし、従業員側にとってもたまに早く帰れるんだったらそっちのほうがいいじゃん。
営業 うん。
人事 だからまあ、フレックスは入れない理由はあまりないかな。
営業 そうだね。むしろこんな世の中なのに、リモートも進んでるのに入れない会社の時点で、ちょっと何かあるなって思ったほうがいい。
人事 まあねえ。
営業 制度が硬直してるのか、昔ながらの目に見えるところにいないとダメなのかっていう可能性があるってことだよね。
人事 そうだね。
営業 じゃあ会社選ぶ時の基準になるね。フレックスやってるかどうかっていうのは。
人事 そうだね。私はフレックスやってない会社で働く気にはなれないかな。
営業 うん。私ももう、入れてからはそう思ってる。
人事 でしょ?ただね、実態としてフレックスだよねって会社は結構ある。
営業 そうだよね。遅刻しても早退しても、なんらかの調整があるところはあるもんね。
人事 そうそう。うちの会社もフレックス制度を導入したのは、6年くらい前かな?
営業 はあ。
人事 でも、その前からぶっちゃけフレックスだったよ。
営業 なるほどね。別に自由に来てもいいし、帰ってもいいと。
人事 そうそう。その時は始業が10時だったけど、10時30分とかにくるひととかふつうにいたし。でも、就業規則にはどこにもフレックスOKって書いてないんだよ?
営業 あるある。
人事 でも、実態としてはフレックスだった。就業規則とかを実態に合わせていない会社とかは、正直言ってあるからね。
営業 そうね。
人事 だからフレックスを導入していない会社が柔軟性に欠けるかって言ったら、一概にそうとは言えないんだけど。
営業 うーん。
人事 でも、それはそれでちゃんと就業規則メンテナンスしなさいよって話になるわけだから、まあなんとも言えないけど。
営業 そうだね。フレックスはちゃんと見ておいたほうがいいね。仕組みとしてちゃんと調べておいたほうがいい。あとは、コアタイムの有無と時間もね。
人事 そうだね。まあフレックスの有無とか、コアタイムの有無や長さが、会社の柔軟度のひとつの指標になると思う。会社がどれくらい従業員を信頼しているかとかね。
営業 うーん。
人事 制度がどれくらい硬直かしているかとか。まあそういった指標のひとつにはなるけど、それが絶対ではない、かな。
営業 ふんふん。なるほどね。よくわかりました。

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