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アリシンは、circEIF4G2を抑制することで子宮頸がん細胞の生物学的活動を阻害する

Mao Y, et al. Allicin inhibits the biological activities of cervical cancer cells by suppressing circEIF4G2. Food Sci Nutr. 2024 Apr; 12(4): 2523–2536,(2024).

 僕が、論文を読んで、学んだことを、ざっくりとしたまとめにして、書いていきます。よかったらご覧ください。

【知識】
 アリシンは、主にニンニクから抽出できる。しかし、新鮮なニンニクではなく、時間が経ち、熟したとき、アリイナーゼが活発になり、アリインが、アリシンになる。

【前書き】
 アリシンは、抗腫瘍作用をもつと考えられているが、まだ不明な点も残っている。
 アリシンの細胞増殖阻害機能の機序は、明らかになっていない。

  circEIF4G2は、CircRNAsから転写されるタンパク質である。CircRNAsは、子宮頸がんのマーカーであり、がんの治療ターゲットとしても、評価されている。

 CircRNAsをノックダウンした子宮頸がんは、生物学的活動が阻害された。

 circEIF4G2は、すでに、細胞増殖に関わるシグナル伝達経路であるHOXA1/AKT/mTORシグナルを制御することが分かっている。

 この研究では、アリシンが子宮頸がんの生物学的活動を阻害するかどうか、またCircRNAをダウンレギュレート(発現を抑えること)したとき、アリシンはどのような影響を及ぼすか。

 つまり、CircRNA↓子宮頸がんに対して、アリシンによる生物学的活動の阻害が見られなければ、アリシンはCircEIF4G2を介して、生物学的活動を阻害していることがわかる。
  CircRNA↓子宮頸がんに対して、アリシンが生物学的活動を阻害したなら、別の機序で、アリシンは、阻害していると考えられる。

 今回の研究の目的は、子宮頸がん細胞を用いた細胞試験において、アリシンが抗腫瘍性をもつかについて議論していくこと。

【方法】
 この研究では、HelaとSihaという子宮頸がんを用いた。

 また、それぞれの子宮頸がんにCircEIF4G2をダウンレギュレートした細胞(以下cicrEIF4G2↓)を作成した。

 コントロールからなるHelaとSihaの細胞にそれぞれ異なるアリシンの濃度(20μl、40μl、80μl)にて、細胞培養した。(48時間)

 またHelaとSihaの細胞において、コントロール、cicrEIF4G2↓、アリシン、cicrEIF4G2↓+アリシンで、細胞培養した。(アリシン80μl、48時間)

その後以下の方法で、解析、評価した。

①RT-PCRにより、遺伝子発現を解析した
②細胞増殖をcck-8アッセイ、EdUアッセイにより、評価した。
③細胞死を、フローサイトメトリーにより評価した。
④細胞湿潤、細胞遊走をトランスフェルアッセイ創傷治癒アッセイにより、それぞれ評価した。
⑤ウエスタンブロッティング法により、タンパク質の量を評価した。

【結果】
①qRT-PCRにより、遺伝子発現を解析した結果、Hela細胞において、それぞれの濃度で、アリシンを添加したとき、cicrEIF4G2の発現量は減少した。
 Siha細胞において、それぞれの濃度で、アリシンを添加したとき、cicrEIF4G2の発現量は減少した。

②cck-8アッセイ、EdUアッセイにより、細胞増殖を評価した結果、Hela細胞、Siha細胞どちらも、同じように、アリシンの添加が多いほど、細胞増殖は減少した。
 cicrEIF4G2をダウンレギュレートしたHela細胞、およびSiha細胞の細胞増殖を解析した結果、コントロール、cicrEIF4G2↓、アリシン、cicrEIF4G2↓+アリシンにおいて、コントロールよりも、他の3つのグループは細胞増殖阻害が見られた。
 阻害された3つのグループの細胞増殖阻害に大きな差は見られなかった。
 このことから、アリシンは、circElF4G2を制御して、細胞増殖阻害をしていると考えられる。

③フローサイトメトリーにより、細胞死を分析した結果、Hela細胞、Siha細胞どちらも、同じように、アリシンの添加量の比に、応じて細胞死が見られた。
 cicrEIF4G2をダウンレギュレートしたHela細胞、およびSiha細胞の細胞死を解析した結果、コントロール、cicrEIF4G2↓、アリシン、cicrEIF4G2↓+アリシンにおいて、コントロールよりも、他の3つのグループは細胞死が見られた。
 阻害された3つのグループの細胞死に大きな差は見られなかった。
 このことから、アリシンは、circElF4G2を制御して、細胞死を制御していると考えられる。

④トランスフェルアッセイ、創傷治癒アッセイにより、細胞湿潤、細胞遊走を評価した結果、Hela細胞、Siha細胞どちらも、同じように、アリシンの添加が多いほど、細胞湿潤、細胞遊走は阻害された。
 cicrEIF4G2をダウンレギュレートしたHela細胞、およびSiha細胞の細胞湿潤、細胞遊走を評価した結果、コントロール、cicrEIF4G2↓、アリシン、cicrEIF4G2↓+アリシンにおいて、コントロールよりも、他の3つのグループは細胞湿潤、細胞遊走の阻害が見られた。
 阻害された3つのグループの細胞湿潤、細胞遊走に大きな差は見られなかった。
 このことから、アリシンは、circElF4G2を制御して、細胞湿潤、細胞遊走を阻害していると考えられる。

 ①⑤qRT-PCRと、ウエスタンブロッティング法により、子宮頸がん細胞におけるcircEIF4G2とHOXA1、AKT、mTORの遺伝子発現およびそのタンパク質の発現量を解析した。
 コントロール、cicrEIF4G2↓、アリシン、cicrEIF4G2↓+アリシンにおいて、コントロールと比べて、circEIF4G2、HOXA1、AKT、mTORの遺伝子発現、タンパク質の発現量は減少した。その3つの結果に、大きな差は見られなかった。このことから、アリシンは、cicrEIF4G2を介して、下流にあるHOXA1/AKT/mTORシグナルを制御することで、子宮頸がんの生物学的活動を阻害していると考えられる。

【結論】
 アリシンは、cicrEIF4G2を介して、下流にあるHOXA1/AKT/mTORシグナを制御することで、子宮頸がんの生物学的活動を阻害していると考えられる。



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