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ムズキュンが朗読劇に!『逃げるは恥だが役に立つ』(逃げ恥)

 2019年10月。駆け足で劇場へ向かったのは、まだ残暑が続く蒸し暑い日でした。
 座席に着き、暑さで赤くなった頬に伝う汗をハンカチでぬぐいつつ、あの大ヒットドラマを朗読劇で観られる喜びで、開演を待ちわびました。
 涼しい劇場内で汗はひきましたが、頬だけは終演後も赤いまま。
 暑さではなく、朗読劇を観て、私は頬が赤くなっていました。
 今思い出しても”ムズキュン”する作品。恋とはこんなに“ムズキュン”してしまうのか…。
 演劇をこよなく愛するジーンアンドフレッドが贈る、おうちで楽しめる舞台作品のレビュー企画第4回。
 今回は朗読劇。日テレプラスで6/13(土)から4回にわたり、同じ作品を出演者違いで放送するこちらを紹介したいと思います。

朗読劇シリーズ《恋を読む》vol.2『逃げるは恥だが役に立つ』

 これは2018年にスタートしたラブストーリーの朗読劇《恋を読む》シリーズの第2弾で、劇団ロロを主宰する三浦直之さんが脚本・演出を手掛けます。今回は2人ずつの男女、計4人の出演者により上演されました。
 院卒だが就活は失敗、派遣社員になるも派遣切りにあい再就職を探す“みくり”。仕事が決まらない娘を心配した父親に独身サラリーマンの"平匡(ひらまさ)"を紹介され、家事代行として働き始めます。
 良好な雇用関係を築くも、みくりの家の都合で辞めなくてはならないことに。この関係を続けるために2人は「契約結婚」を導き出します。
 この事を周囲に隠し、「本物の夫婦」のフリをする2人。しかし、平匡の同僚・風見涼太には疑われ、みくりの伯母・土屋百合にはぎこちない夫婦仲を心配されっぱなし。そんな中、みくりと平匡の心境にも変化が現れ…。
 立場が異なる4人のそれぞれの恋模様に、ムズムズキュンキュンしてしまう約2時間のラブコメディです。

 私が観劇した回の平匡役は声優の梶 裕貴さん、みくり役は女優の生駒里奈さんでした。
 梶さんが演じることで、真面目な平匡に天然さが加わり、ついクスッと笑ってしまう人物に。梶さんご本人の「遊び心」を感じました。お相手の生駒さんも、その芝居に「遊び心」で返します。その結果、お二人が演じる平匡とみくりには、ボケとツッコミような関係性が生まれ、客席は笑顔で包まれたように感じました。
 一方で「平匡さんの考えていることを分かりたいのに、分からない」時の、みくりの気持ち。生駒さんの切なさ溢れた声色で読まれる想いに、私もシュンとなってしまいました。
 そしてお互いの距離が近づくとき。みくりと平匡で1つの台本を持ちながら読むシーンは、2人の親密度がグッと近づくことを表し、“ムズキュン”せずにはいられません。客席で頬を染めてしまったその演出は、ボーイミーツガールを主軸に演劇を作ってきた三浦直之さんらしさとも言えます。

 物語では相手の価値観を理解するために、対話をしていきます。時にそれは登場人物たちを苦しめます。相手と向き合いたくない、自分が辛くなるなら話さなければいい、この気持ちに蓋をすればいい――。
 それでも、大切な人のために言葉を投げかけ、大切な人の言葉を受け止め、その工程を経て、お互いのピースがカチッと合わさった瞬間、声にならない嬉しさ・喜びに客席が共感し“ムズキュン”するのかもしれません。
 15人の多彩な顔ぶれの俳優と声優が、4チームに分かれて読み上げる、頬が赤くなるような恋。週末にムズキュンしながら観てくださいね。

<配信情報>

※各放送日配役:津崎平匡×森山みくり×風見涼太×土屋百合
6/13(土)21:30~23:40(放送終了)
▶︎荒木宏文×妃海 風×石川界人×友近
6/20(土)21:30~23:50 
▶︎梶 裕貴×生駒里奈×有澤樟太郎×濱田めぐみ
7/4(土)21:00~23:20 
▶︎細谷佳正×咲妃みゆ×木村達成×壮 一帆
7/11(土)21:00~23:20 
▶︎吉沢 悠×内田真礼×斉藤壮馬×壮 一帆

<作品情報>
原作:海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社「Kiss」所載)
脚本・演出:三浦直之(ロロ)
出演:荒木宏文/梶 裕貴/細谷佳正/吉沢 悠
   妃海 風/生駒里奈/咲妃みゆ/内田真礼
   石川界人/有澤樟太郎/木村達成/斉藤壮馬
   友近/濱田めぐみ/壮 一帆
主催・製作:東宝


執筆:濱中さつき(Gene & Fred) イラスト:山口奈緒子(Gene & Fred)

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