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幽閉⑰ 幽閉場所での再会…

このクズ野郎の息の根を

今、ここで俺の手で止めてやろうか

引き金に掛けた指を

何度も引きそうになりながら

深呼吸して俺は気持ちを落ち着けた

「娘は…くみは何処どこにいる?」

俺は銃口をヤツのこめかみに当てながら

問いただした

ヤツは痛みをこらえきれずに

顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた…

俺がったたま

ヤツの左の大腿部に命中していた

「わざとはずしてやったんだぞ」

へなちょこ野郎が…

これしきの傷で泣きやがって…

ヤツは泣きながら俺に二階をしめした

「… 二階か… 嘘だったら今度こそ殺すからな」

俺はヤツに顔と銃口を向けたまま

横向きになってゆっくりと

階段を上った

二階に上がった俺は意外な気がした

綺麗きれいな部屋なのだ

まるで新婚所帯しんこんしょたいのような部屋だった…

監禁かんきん部屋の雰囲気ふんいきではなかった

入り口の反対側にベッドがある

ベッドの上には何者かがかくれている様に

ふくらんだ布団ふとんがあった

布団ふとん小刻こきざみにふるえていた

やはり誰かがいるようだ

俺は驚かさないように

そっと布団ふとんめくり上げた

「きゃあ!」

そこには一人の女が頭をかかえてふるえていた

俺はそっと女の肩に手を置いた

女は身体をビクッと震わせた

俺は女に優しく声をかけた

「もう大丈夫だよ…」

女は震えながら顔をゆっくりと上げた

「あ… あなたは… パパ…?」

幽閉されていた女はやはりくみだった

俺は愛しい娘の顔が涙でぼやけて見えた

「そうだ…父さんだよ、お前を助けに来た」

くみの美しい顔はくしゃくしゃになった

俺はもっとひどい状態だったろう

「パパ!」

くみは俺の胸に飛び込んできた

「痛っ…!」

俺は銃弾を受けた左上腕部を押さえた

「パパ…? 怪我してるの? 私を助けるために…」

くみの顔が喜びから悲しそうな表情に変わる

「たいしたことは無いんだ、心配いらない…」

俺はそう言って娘を抱き寄せ、力いっぱい抱きしめた

くみも俺にすがり付くように抱く力を込めた

「ありがとう… 本当にありがとう、パパ… 来てくれて…」

くみは泣き声を上げていた

「当り前だろう… 俺はお前の父親なんだぞ…」

俺とは感動のあまり声がつまった

二人は泣きながら抱き合った

俺とくみはほほほほを強くこすりつけ合って

互いの涙で顔がぐしゃぐしゃになった

「ヒゲがくすぐったい… パパ」

くみ… ああ、くみ… 俺の可愛い娘…

くみは俺にすがりついてふるえていた

落ち着いて見てみると娘は全裸だった

布団をかぶっていたので分からなかったのだ

子供の頃は一緒に風呂に入った

だが今は…

美しくまぶしい女の裸体だった

俺は自分のジャケットを脱いで娘に着せた

「ありがとう… パパ…」

くみは素直に礼を言って微笑ほほえんだ

ああ… 何年ぶりだろう…

くみが俺に微笑ほほえんでくれた

なんて可愛い笑顔なんだ…

子供の頃の笑顔そのままだった

いつまでっても可愛い我が娘だ…

俺は泣き笑いだったに違いない

涙と鼻水が止まらなかった

俺はくみの肩に手をかけて抱き寄せた

さあ、行こうか…くみ…

そう俺が言いかけた時…

変な歌が聞こえる…

「…ンボーッ! 僕の名前は…」

俺が歌を聞き取ろうとした瞬間…

「バキバキバキッ! グワラグワラガッシャーンッ!」

すさまじい音と共に俺と娘をせたまま

二階の床がくずれ落ちた

何が起こったのか訳が分からないまま

俺と娘のくみは抱き合ったまま一階へと落下した…

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