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妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「未知なる者再び… (弐)" 接触から戦闘へ "」

拙者は一人
村の裏山を頂き近くまで登った

見えて来た…

確かに村の少年勝平かっぺいから聞いた通り
山頂に生える樹木をなぎ倒し
地面に深い溝を穿うがった先に
二枚の皿の口縁こうえん同士を合わせた様な
円盤状をした銀色の物体が
斜めになって突き刺さるように
地面にめり込んでいた

空から飛来しての激突の衝撃で
ああなったのだろう…

だが…
拙者が浜辺で遭遇した
鶏卵けいらん状をした銀色の乗り物とは
形が全然違っておる
しかし勝平の話では
黒い色で人の形状をしたやからがおったと

やはり…
アレもそ奴らの乗り物であろうか…?

銀色をした円盤状の物体周辺を見回してみた
む…?
二体の人…か?

いや、あれは人に似てはいるがなる者…
拙者の以前出会った銀色の者とは違い
全身が頭を含めて黒ずくめの様じゃ
腕は左右一本ずつの二本だが人より猿に似て長い
頭も人よりも二回りは大きく
やはり大きな二対の目は
虫の様な複眼をしておる…
二本の脚は腕と同じく長いが
人のそれよりも細い

全体の形態は人より猿に近いが…
やはりあやかしか…?

むうっ?
二体ともこっちを見た?

持った短筒たんづつ
こっちへ向けおった!
向こうがそのつもりなら致し方ない

やるぞ!
斬妖丸ざんようまる』に『時雨丸しぐれまる
戦闘開始じゃっ!

拙者が走り出た途端とたん
それまで隠れていた樹に
拳大こぶしだいの穴が二つ空いた

ふう…
あやうかった…
やはり短筒か…?
しかし恐ろしいほど正確じゃ
拙者の飛び出すのが一瞬遅ければ…

拙者は別の茂みに飛び込んだ
そして木の陰から敵を見る…

「ビシッ!」「バシッ!」
「うおっ!」

まただっ!

った髪を一房ひとふさ持って行かれた
またもや正確な射撃…
拙者の姿は向こうからは見えぬはず…
しかも拙者は完全に気配を断っておる
なのに何故なぜじゃ…

ヤツ等には
人間の目には見えぬモノが
見えているというのか…?

拙者は『斬妖丸』を抜き放つ…
どうだ、『斬妖丸』…
ヤツ等には何が見えるのか分かるか…?

「ポッ」
拙者の見つめる前で『斬妖丸』が
小さな火の玉を吐いた

「ビシュッ!」
「ビシッ!」

火の玉は拙者から一尺ほどの距離で
ヤツ等の撃ち出しし何かに
一瞬にして吹き消された…
火… 熱か?
ヤツ等には熱が見えるのか…?

「よし、『斬妖丸』! 『火車かしゃ』を出すぞ!」
でよ、『火車』っ!」

拙者が『斬妖丸』の刃先でクルリと円を描くと
木製の車輪が一輪
拙者の一丈ほど前方に現れいで

「『火車』っ! 炎上回転っ!」

拙者の前にある車輪が
全体から激しい炎をき上げながら
その場で凄まじい勢いにて回転し
地面をえぐり始めた
「ギャリギャリギャリィッー!」

「ビシッ! ビシュッ!」
撃ち出された二発の何かが飛来し
『火車』に命中した

「ジュッ! ジュジュッ!」
一瞬にして
『火車』は飛来したモノを蒸発させる

ふっ…
『火車』の炎も回転も『時雨丸しぐれまる』以外に
何人なんぴとたりとも止める事、かなわずっ!

「『火車』っ! 転がれ!
滅茶苦茶に走り回れっ! ただし山は燃やすなっ!」

『火車』は拙者の命令通り
山頂を野生のいのししの様に滅茶苦茶に走り回った
だが、命じた通りに木々や草を燃やす事なく…

「バシュッ!」
「ビシュッ!」

「ドゴーンッ!」

いつの間にか銀色の円盤からも
砲撃(?)が始まっていた
『火車』を完全に仕留しとめるつもりらしい

「『火車』が危ない! 拙者も行くぞ!」
「『時雨丸しぐれまる』っ! お前の出番じゃ!」

拙者は『斬妖丸ざんようまる』をさやに収め
『時雨丸』を抜き放った

「『時雨丸』! 放水始め! 拙者に水を浴びせよっ!」

『時雨丸』の白刃はくじんから水流がほとばしった
上空に放たれた大量の水が拙者に降り注ぐ!
ずぶ濡れになり
文字通り濡れネズミとなった拙者は
銀色の円盤めがけて駆け出した!

「『時雨丸』! 霧隠きりがくれ』を使え!」

『時雨丸』から細かい霧状となりし水が噴霧ふんむされた
空中にただよいし大量の霧は
拙者の姿をおおい隠していく

「これで拙者の姿も体温もヤツ等から見えまいっ!」

拙者は敵から不可視の突撃を仕掛けながら
さらに『火車』に命じた

「『火車』よ! 駆け回りながら火炎弾発射じゃ!
撃ていっ! 火炎かえんしだれやなぎっ!」

高速移動を続ける『火車』から
数十発の火炎弾が
まるで炎のしだれ柳のように放たれた

「ボシュッ!ボシュッ!ボシュッ!」

拙者は炎と水が入り乱れる山上を
銀色の円盤めがけて駆けた!


※【(参)に続く…】

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