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ニケ… 翼ある少女 : 第20話「飄(ひょう)… 風神の凄まじい怒り」

朝の通学時、くみは駅から学校への道を一人で歩いて登校していた。

 先日のBERSバーズによる襲撃で、くみの巻きえを受けて拉致らちされかけた親友の愛理あいりは翌日から学校を休んでいた。あの事件から今日で一週間になる。一度、愛理あいりの家を見舞いに訪れたのだが、彼女の母親からけんもほろろにことわられてしまった。今は入院をしているとだけ言われたが、くみは入院先の病院も教えてもらえなかった。

 一人で登下校するのはさみしかったが、二度と愛理あいりや他の人を自分の巻きえには出来ないと、ひとり心にちかうくみであった。

 くみは、最初にBERSバーズ達に出会った神社を通り過ぎ、戦闘を繰り広げたゴミ処理場に差し掛かった。ここに来ると嫌でもBERSバーズとの戦闘を思い出してしまう。そしてこの場所はくみにとって、もう一つ忘れられない出来事の起こった場所でもあった。

ひょうとの出会いである。

「ここで、ひょう君と初めてったんだ。私と愛理あいりを助けてくれたひょう君… あれから一週間ったけど、彼は今どうしているんだろう… いたいな…」

 ひょうの事を考えると、くみの頭は彼の事でいっぱいになってしまう。愛理あいりの事もBERSバーズとの戦闘の事も考えられなくなった。

 一度、祖父の安倍賢生あべの けんせいひょうえないかと聞いてみたのだが、賢生けんせいは静かに首を横に振るばかりだった。

 さみしい気持ちを胸に抱いて学校へと向かおうとしたその時、ゴミの運搬用に使われるトラックの一台がくみに向かって突っ込んで来た。うつむいて歩いていたくみは、ハッと顔を上げて素早く身をかわした。危うく身をかわすくみ。彼女の反応速度は常人をはるかに上回る。

 何度もくみに向かい襲いかかって来るトラック。明らかに悪意を持っているとしか思えない行動だった。気が付くと、くみはゴミ処理場の敷地内に追い込まれていた。しかも、ゴミ処理場の入り口のゲートが閉じられてしまった。明らかに意図的に、くみは何者かによってこのゴミ処理場内に閉じ込められたのだ。

くみは歯ぎしりをしてつぶやいた。

「いったい、私を閉じ込めて何のつもり…? 先週の続きをやろうって言うの?」

 トラックの運転席と助手席側のドアが同時に開き、男が二人飛び降りてきた。ゴミ処理場の施設のかげからも男達が数名現れた。別の建物のかげからも数名と、続々とくみに向かって集まってくる。数えてみるとちょうど20名の屈強な男達だった。皆、悪意を込めたニヤニヤ笑いを顔に浮かべていた。中には鉄パイプやトゲ付きのバットを持った者までいる。たった一人の中学生の少女相手に喧嘩けんかの出入りでも始めようと言うのか。

 ここで働いているまともな人達の姿は一向に現れない。つまり、この時間におけるこの場所は、くみのためにわざわざ貸し切り状態になっている様だった。ありがたい事だと、くみは苦笑しながら思った。

 普通の少女なら、うずくまってブルブルとふるえながら失禁しっきんしていてもおかしくない場面だ。しかし、くみは少しもひるまないばかりか下を向くことさえ無く、青い瞳の美しい顔でニッコリと不敵に微笑ほほえみながら男達を見回した。

「オジサン達、誰だか知らないけど… 私は朝からあんまり機嫌きげんが良くないの。痛い目見るかもしれないけど、覚悟は出来てる? 腕の一本や二本でんだらありがたいと思ってね。」

 まるでグラビアアイドルかモデルの様に美しい顔立ちの、ハーフの美少女が口にする言葉とは思えなかった。さながらアクション映画のワンシーンの様だ。

 くみは静かに身構みがまえた。銀色の翼は広げないでいた。ゴロツキ相手の喧嘩けんかにニケになる必要はない、くみはそう考えたのだ。

 何処どこかで誰かの吹く口笛がひびき渡った。戦いのゴングのようだ。

 数人の男達が一度にくみに襲いかかった。何度も言うが、くみの速度はニケにならずとも人間につかまえられるようなスピードではない。ちょうのようにひらりひらりと舞いながら男達の手をすり抜けた。

「遅いわね、あなた達。ハエが止まりそうよ… えっ?」

 軽口をたたこうとしたくみは息をんだ。襲いかかる数人の男達を軽くかわしたくみの眼前に、一人の男がヌッと顔を突き出して現れたのだ。驚きながら別の場所へ飛びのくくみ。しかし、男は遅れることなくピタッと付いて来た。

「こいつ… 何てスピード…」

 くみの肩が男につかまれてしまった。「ぐっ!」スピードだけではなく握力の強さも並外なみはずれていた。足が止まってしまったくみに男達が殺到さっとうした。何人もが一度に飛びかかって来た。

「もうっ! 何処どこさわってんのよっ! スケベおやじどもっ!」

 身の危険よりも見知らぬ男達に胸やお尻をつかまれたことで、くみの純な乙女心おとめごころが爆発した。アテナが改良を加えてくれた服を着たままで翼を広げるためのホックをはずすことなく、銀色の翼を一瞬で大きく解放したのだ。当然の様にセーラー服の背中のホックははじけ飛び、服もやぶれてしまった。

 しかし、くみの服どころではない。彼女にむらがっていた男達数人が、広げられた翼の力と羽ばたきによる風圧で数m後方に吹き飛ばされた。男達は地面にたたきつけられてからも、さらにころがった。

「あーん、服がやぶれちゃったじゃないっ! どうしてくれるのよっ! もう許さないわよっ!」

 くみの栗色の美しい髪は銀色のカチューシャでめられていた。「シャキン!」カチューシャは、くみの意志で目をおおう仮面へと一瞬で形を変えた。その瞬間、くみはニケへと変身した。

 ニケを取り囲んだ男達も考えをあらためたのか、全員殺気さっき立ち、それぞれの容貌ようぼうに変化が現れた。身体中の色が変わり、顔貌がんぼうや体型も変わっていく。

 男達の身体から「カシャッ!」とか「ジャキーンッ!」といった金属的な音がひびいた。見ると手や肩、背中や足にまで身体の各部分に様々な形態の武器が出現していた。仕組みは分からないが、もともと男達が持っていた鉄パイプやトゲ付きのバットでは無く、それぞれの身体の一部が武器へと変化したようだ。どうやらニケ相手に本気を出すために正体をあらわした様だった。

 この20人の男達はアメリカの『クトニウス機関』で開発され、最近では戦線にも投入され始めた『HybridハイブリッドBERSバーズ』達だったのである。『HybridハイブリッドBERSバーズ』は身体の一部をサイボーグ化し、機械的な武器へと変化するよう調整された機械と生体との混合型ハイブリッドBERSバーズで、しかもパワーは従来のBERSバーズを大幅に上回っていた。

「やっぱりあんた達、BERSバーズだったのね… でも、今までのヤツとはちょっと違うみたい。本気モードのようだから、こっちも容赦ようしゃしないわよ…」

 ニケはファイティングポーズを取った。マスクの目の部分からのぞいた青く美しい瞳が光をはなって輝き始める。

 身体からき上がる青白いオーラと、白く美しい素肌からいくつも放つ小さな稲妻いなずまのスパーク… ニケは本気の戦闘モードに入った。

「かかってらっしゃい、日輪おひさまに代わってお仕置きしてあげる…」

ニケがあやしく微笑ほほえみながらHybridハイブリッドBERSバーズ達に告げた。

 「カチャッ!」「ガシャガシャッ!」めいめいの武器をかまえるHybridハイブリッドBERSバーズ達。その時、どこかから男の叫ぶ声がひびき渡った。

「お前達っ! ニケを殺すんじゃないぞ! 生きたまま捕えるんだ! 少々手荒てあらになるのは構わんっ!」

 攻撃許可が出たことで、HybridハイブリッドBERSバーズ達はニヤリと笑いながらニケにせまってくる。

 短い金属製の針をばら短針たんしん銃を右手に仕込んだ者、スタンガンの様な数十万ボルトの電流を両手の間に発生させている者、ある者は腕が変化した火炎放射器から炎を吹き出していた。どの武器を取っても身体にれれば、いくらニケでもただではみそうになかった。

 ニケは銀色の翼を大きく広げて、ゆっくりと翼を小刻みに振動させた。すると、朝日を受けて銀色に光り輝く12枚の羽根が翼から抜けた。地面に落ちると思われた羽根は、そのまま落ちずに空中を舞っている。そして、ゆっくりとニケのまわりを舞いながら回転し始めた。

「何だ、そんな羽根!」

短針たんしん銃を構えた男が金属製の短針たんしんをニケに向けて発射した。

「バババッ!」


 発射された数本の短針たんしんに、舞っていたニケの羽根が即座に反応した。もちろん一瞬に起こった事だが、銀色の羽根は針を瞬時に叩き落したのだ。そして、羽根はまたニケのまわりを回転する軌道に戻りフワフワと舞う事を再開した。

 完全自立型防御衛星… 銀色の翼からはなたれた羽根はニケのまわりを衛星のように回転しながら、彼女に加えられる攻撃に対して個々に自動的に反応し防御する。

 しかも、この羽根はただ防御するだけでは無かった。12枚のニケのまわりを防御する銀色の羽根のうち、半数の6枚の羽根が個々に独立した動きで次々にHybridハイブリッドBERSバーズ達に襲いかかった。まるで、魔法を見ているようだった。

 まず、最初に攻撃してきた男の右肩に一枚の羽根が突き刺さり、短針銃の仕込まれた右腕を使えないようにした。右腕の運動をつかさどる神経のツボにはりの様に刺さったのだろう。そして、刺さった羽根はまるで生きているかのように自分自身を男の腕から抜き去り、ニケを回る衛星軌道へと戻った。これではニケは一人で戦っているのではなく、翼から離れた羽根の分だけ味方が増えると言っても間違いではあるまい。

 別の羽根は違う男を襲って相手の攻撃力を奪い、再びニケをまもる軌道上に戻る。銀の羽根に襲われたHybridハイブリッドBERSバーズは戦闘力をがれてしまった。20人いた男達のうち、半数の10人が早くも戦闘不能におちいっていた。残り10人と思われたが一人足りない事にニケは気付いた。9人しかいなかった…おかしい。

 不審に感じたニケがまわりを見回したその時、「ズボッ!」という音とともに足元から一本の腕が伸びてニケの左足首をとらえた。

「うわっ! な、何…?」

 姿を消した一体のHybridハイブリッドBERSバーズ土竜もぐらのように土中にもぐってニケの足元まで移動し、チャンスをうかがっていたのだ。

「キャーッ!」

 土中にひそんでいた男がニケの左足首をつかんだまま立ち上がった。ニケは男の怪力で左足首をつかまれた状態で、逆さまに持ち上げられてしまった。ニケはあわててセーラー服のスカートを押さえた。そうしないと20人の男達の目の前でめくれあがってしまう。恥じらい多き中学3年生の少女としては我慢出来なかった。

 しかし、HybridハイブリッドBERSバーズ達がこのチャンスをのがすはずが無かった。ニケの羽根で戦闘不能にされてしまった者達以外で、右腕に牽引けんいん用ワイヤーウインチをそなえた男がニケに向けてロケットフックを発射した。フックはニケの右足首に達してワイヤーがからみついた。ニケの右足首がワイヤーにとらわれたまま男のウインチに手繰たぐり寄せられていく。

 ニケはあわてた。二体のHybridハイブリッドBERSバーズによって両足首を引っ張られて、逆さづりの股裂またさき状態にされているのだ。男達の目の前で、清らかな乙女おとめにとってこれ以上に残酷な仕打ちは無かったであろう。

 12枚の銀色の羽根達はニケが体勢をくずした事と、ニケ自身の集中力が羞恥心しゅうちしんによってたれた事で地面に落下してしまっていた。

 ニケはスカートを押さえる手を離すわけにはいかない。男達の眼に恥ずかしい部分をさらしてしまう事は死ぬよりも嫌だった。HybridハイブリッドBERSバーズ達はイヤらしい笑いをらしながら、下種げすな期待で広げられていくニケの股間を見つめていた。

ニケは目をつぶり、絶体絶命だと思った…その時、

鎌鼬かまいたちっ!」

上空からみ渡る大きな声が響き渡った。

 ニケの両足に加えられていた力が消え去った。ニケはり上げられていた高さから、さかさまに背中から地面へと落下した。

「痛いっ…」

 と言って背中をさすりながら体を起こしたニケの両足首には、まだ男の右腕とワイヤーがからみついた感覚が残ったままだった。しかしニケが自分の両足首を見ると、左足首を握る右腕は真っ赤な切断面をさらした手首までしか無く、右足首にからまっていたワイヤーも途中で切断されていた。

「ぐわああっ! 腕が…腕があっ!」

 土中にもぐってニケの左足首をとらえていた男は、切断された自分の右手首を左手で押さえながら地面をのたうち回っていた。

 ワイヤーウインチを右手に仕込んだ男はニケの右足首を引いていた張力をいきなり失い、地面に尻もちをついていた。

 一体何が起こったのだろうか? ニケを含めた、その場にいた誰もが理解出来ないでいた。そこへ上空から強い一陣の風と共に、一人の少年が座り込んだままのニケのそばに舞い降りた。

ひょうである。

「大丈夫か、くみ…?」

 優しく声をかけてニケの姿を見下ろすひょうかがみこんでニケの両足首を見て、まずニケの左足首を握ったままで切断された右手首をはずした。そして、右足首にからみついたワイヤーを見る。かなり強力に締め付けられていた様で、くみの白く美しいすらりとした脚のふくらはぎから足首にかけて、ワイヤーが巻き付いた部分の皮膚が裂け、赤い血の他に白い肉までのぞいていた。すぐには取りはずせなさそうだった。

 ニケは自分の目の前にいるひょうを、信じられない物でも見るような目で見つめた。自分の願望が生んだまぼろしでは無いのか?

ひょう君…? 本当にあなたなの…? 私を助けに来てくれたのね…?」

 ニケは夢ならめないで欲しいと祈りながら涙を流して、ひょうほほに手を伸ばしてそっと指先でれた。

可哀かわいそうに… 痛かっただろうな…」

 そうつぶやいたひょうが、さらに何かを口の中で小さくささやいたようだった。すると、右足首にやわらかい風が当たったようにニケが感じた次の瞬間には、はがねで出来たワイヤーロープはズタズタになって、食い込んでいたニケの足からはずれて落ちた。

 ワイヤーが取り除かれたニケの足は、けた皮膚の周辺が紫色になってひどくれていた。ひょうがそっとさわってみると、「痛いっ…!」とニケが小さな悲鳴を上げた。その周辺はれと共に熱をびていた。

「ちっ… 毒か…」

 そうつぶやいたひょうは立ち上がり、尻もちを着いたままでいたワイヤーウインチを右手に内蔵した男に向かって言った。

「お前… そのワイヤーに毒を塗っていたのか?」

 問い詰めるひょうの声は怒りでふるえていた。聞かれた男は助けを求める様に仲間達を見回すが、誰も目を合わせず声すら発せないでいた。仕方なくひょうの方を見て何度もうなず仕草しぐさをした。

「そうか…」

 そう言ったひょうが「鎌鼬かまいたち…」と小さくつぶやくと、次の瞬間にはワイヤーウインチの男の右ひざが切断されていた。

「ぐわああっ! お、俺の右足があっ!」

 先の右手首を切断された男と同様に、右ひざを押さえたまま地面をころげまわった。

 鎌鼬かまいたちとは日本の昔話に登場する妖怪の一種であるとされるが、ひょうの用いる鎌鼬かまいたちは、風を自在にあやつれるひょうが空気の層にズレを生じさせることにより一時的に真空状態を引き起こし、その生じた真空部分をやいばの様に相手にぶつける事で切りわざである。先ほどニケの右足にからみついたワイヤーをズタズタに切断したのも、このわざを使用したのであった。

 ひょうは他の18名のHybridハイブリッドBERSバーズ達を、怒りに燃える強い眼差まなざしでにらみながら見回してニケのそばへと戻った。

 そっとニケの仮面をはずしてやる。するとニケの顔はさおになって脂汗あぶらあせを流し、身体はガクガクとふるえていた。

「たいへんだ… ひどい熱だ、病院へ行こう。」

 そう言ってくみを、優しくだが力強く抱き上げた。

ひょう君… 病院じゃなくて… 私の家に…連れて行って… ママの元に…」

 そう苦しげに言ったくみは気をうしなった。ひょうはくみの顔に向かって小さくうなずき、空へと舞い上がった。

 それまで金縛かなしばりにあったようにひょうとニケを見つめたまま動けなかったHybridハイブリッドBERSバーズ達のうち、右手に機関銃を装備した男がいた。その男は飛び去ろうとしていたひょう達に向かって機関銃を斉射せいしゃした。

「ダダダダダダダッ!」

 そのうちの数発がひょうの背中に当たり、くみの身体にも何発もかすった。ひょうは空中で静止してゆっくりとHybridハイブリッドBERSバーズ達に身体を向けて、怒りに食いしばった口でつぶやいた。

「貴様ら… もう… 許さん…」

そしてひょうは絶叫した。

鎌鼬かまいたち、真空乱れ刃みだれやいばっ!」

 ひょうHybridハイブリッドBERSバーズ達の間にあった大量の空気が真空のやいばと化して次々と20人の敵めがけて襲いかかった。逃げるどころか避けることも出来ない土砂降どしゃぶりの雨の様な攻撃だった。HybridハイブリッドBERSバーズ達の立っていた周辺に血煙ちけむりが上がった。

 血煙ちけむりが晴れた後に立っている者は一人もいなかった。残ったのは飛び散った血と、文字通りズタズタになったHybridハイブリッドBERSバーズの肉と骨、そして身体に装備されていた武器の破片だけだった。


 男達の叫び声は一言も聞こえなかった。それは数秒の間に、吹きすさぶ風が上げる音だけの中で起こった大量殺戮さつりくだった。怒り狂った荒ぶる風神ふうじんが、罪深き人間達に下した怒りの鉄槌てっついだった。

 ひょうはくみを抱く両腕に力を込めて方向を変え、榊原さかきばら家へ向かって飛んだ。くみの身体は高熱を発していた。

「急がないと… 早くアテナさんの元へ、くみを…」

 力強く両腕に大切な人を抱きながら、自分も機関銃のたまを数発らった身でひょうは飛ぶ速度を上げた。

       ********************        

 血にまみれた大量殺戮さつりく跡地あとちに一人たたずむ男がいた。男はBERSバーズ特殊潜入部隊のたちばな三尉だった。さっきからHybridハイブリッドBERSバーズ達に合図の口笛を吹いたり、命令を下していた男の正体はたちばな三尉だったのだ。

 たちばな三尉は周囲を見回して、歴戦のこの男らしくも無く身震みぶるいをした。彼の足元ではHybridハイブリッドBERSバーズ達の血とあぶらとズタズタになった肉と骨の破片がちらばり、くつの裏で「にちゃにちゃ…」と音を立てた。

すさまじいな… いったい、何だこれは… まるで屠殺場とさつばじゃないか… 俺達も今までに参加した作戦で何度も殺しをやったし、戦場も見てきたが…こんなにひどいのは初めて見た。いったい、あの小僧は何なんだ…? とにかく北條さんに報告しなくては…」

 そうつぶやいたたちばな三尉は、ポケットから携帯電話を取り出して北条 智ほうじょう さとるをコールした。


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『次回予告』
通学途中の敵HybridハイブリッドBERSバーズによる襲撃で傷つき倒れた榊原さかきばらくみ。
毒におかされたくみを救えるのは母アテナのみ…
たしてアテナはくみを救えるのか…?
そして榊原さかきばら家に突然現れた式神しきがみは、いったい誰の使者なのか?

次回ニケ 第21話「アテナの奇跡と現れた式神しきがみ
にご期待下さい。

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